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大阪府門真市 薫蓋樟(薫蓋クス)


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
FUJIFILM X-Pro2 / XF 23mm F1.4 R


昨年一年間で近隣の巨樹は随分と訪問したつもりですが、その中で敢えて訪問を後回しにしていた巨樹があります。大阪府門真市のクスノキ、薫蓋樟(くんがいしょう)。その筋では全国的に名の知られる有名な巨樹で、京都に住む自分としては近隣最大最後の大物ということで訪問するタイミングを窺っていたのです。

自宅から片道約40kmということで本来は運動がてら自転車で向かおうと決めていたのですが、自分にとって非常に高価な機材を背負って往来の激しい国道を片道40kmも漕いでいくのかと考えると、落車しての機材オシャカの可能性も否定できず、諦めて車で向かうことにしました。カメラ2台に三脚も…と考えると結構な重量になりますし、今思えば車で正解だったような気もします。ちなみに薫蓋樟がそびえ立つ三島神社には無料駐車場が設置されています。駐車スペースが8~10台程度とそこまで余裕のある駐車場ではないことと、近隣はとにかく道幅が狭いので大型車で訪問の場合は近くのコインパーキングに停めて歩いた方が無難かもしれません。


国指定天然記念物、薫蓋クス。
くんがいしょう、くんがいくす。どちらの呼称でも構わないみたいですが、やはりここは「薫蓋樟(くんがいしょう)」を推したいと思います。響きが格好いいと思いませんか?クンガイショウ!!江戸時代に千草有文さんが詠んだ「薫蓋樟 村雨の雨やどりせし唐土の 松に劣らぬ樟ぞこの樟」という歌が名の由来のようですが、薫りで蓋をするクスノキだなんて実に綺麗な言葉だと思います。


現地到着したのは日の出直後の7時過ぎ。本当は日の出前からじっくり対峙するつもりだったんですが、夜明け前のスーパームーンが綺麗すぎたので淀川の河川敷に長居してしまいました。ひとまず参拝を済ませ、まだ人気がないうちに記念写真を撮影します。


敢えて軽く流していきましたが、実は三島神社の境内に足を踏み入れてから興奮を抑えきれません。何だこの巨大な樹冠は!そして、え?あの隙間から覗く巨大な物体が幹なの?一体どういうことよ?と。ここまでで既に数十枚の写真を撮っていると思います。巨大!とにかくその一言で言い表す以外に術がないくらい圧倒的な大きさで、決して広くはない(というか狭い)境内の中で今回手持ちの24mmという画角では全体像を捕らえきれるはずもなく、ただただ心奪われるばかりなのでありました。


圧倒的な大きさですがそれは威圧的なものではなく、まるで陽だまりにでもいるかのようなぽかぽかとした暖かさを感じました。ついついその逞しい幹にしがみついてしまいたくなります。ああ、ほのかな温もりを感じる。この規模の、更には国天指定された高名なクスノキにこうして直接触ることが出来るだなんて。きっと樹勢云々関係なく、昔からこうして身近にあった巨樹だけに何時までも人と触れ合える距離で生きていてもらいたい。そういった想いから囲い等を設けずにいるのではないでしょうか。本当に有難いことです。個人的には直接触れることが出来るというだけで巨樹の評価が二つも三つも上がってしまうんですよね。

環境省の巨樹・巨木データベースのサイトにプラントハンター 西畠さんという方のインタビュー記事が掲載されています。この方が「巨樹巡りが行って終わりのスタンプラリーみたいになってしまうと勿体ない。見て触れて、登ったり抱きしめたりして感じてほしい。」というようなことを仰ってるんですが、とても共感できます。うん、そうなんだよなあ。僕はスタンプラリー形式もその人の自由だし、それはそれで楽しいんじゃない?と思ってしまうタイプですが、それでも樹をオブジェクトではなく一つのイキモノとして向き合うと、もっともっと奥が深くて面白いんだぜ?と声を大にして言いたい。


筋骨隆々とした大枝。
こんなものが真横に伸びてよく折れてしまわないものだと感心します。


実はこうして撮影している間も続々と参拝客が訪れています。
その度にどうぞどうぞと端に引っ込んで休憩するわけですが、日の出直後からたくさんの人が訪れるこのクスノキに改めて敬意を表さずにいられません。近所のおじいさん、おばあさん。通勤途中のサラリーマンや若いOL、カジュアルな大学生風の若者まで。老若男女問わず本当にたくさんの方が訪れていました。ああ、何かこういう光景っていいですよねえ。日本も捨てたもんじゃねえな、なんて知ったようなことを感じてしまいます。


背面、本殿側に回ってみました。こちら側にも回り込めるようになっています。
この姿からイメージしたのは、土俵際の力士の背中。本殿に倒れ込まないようグッと力を入れて踏ん張るその姿は、本当に横綱の大きな背中のようでした。何だか注連縄がまわしのように見えてくるではありませんか。うん、こちらも筋骨隆々という言葉がピッタリ来ますね。決してジャンク・フードを食べ過ぎてダルダルになったおっさんの背中ではありません。この背中が眼前に広がるのです…想像できますか?その迫力を。いやホント、このクラスの巨樹をこれだけの至近距離で観察できることなんて早々ありませんからね。


先程の黄色い立札が立っていた側を正面とすると、こちらはちょうどその裏側にあたります。


朝日が昇ってきました。さて、今日もまた一日が始まるのだな。ここから見る樹冠が本当に神々しく、しばらく撮影するのも忘れてその光景に見入っていました。早起きは三文の得だなんて言いますが、三文って現代の貨幣価値だと数十円くらいのものらしいですね。でもこの早朝の薫蓋樟にはもう三文どころか百文…いや、一万文くらいの価値がありましたよ、本当に。


どうです?この広がり。素晴らしいでしょう。朝日が射してコントラストが強まった薫蓋樟も美しい。根元に見える方は僕のようにクスノキに抱きついたまま長いことじっとしていました。参拝も慣れた様子で、近所の方でしょうか。毎日のように来られているのかもしれませんね。ああ、近所にこんな神社があったらなあと羨ましく思います。


そうこうしている間にも引っ切り無しに参拝客が。やはり集中して撮影しようと思ったら早朝の訪問がおすすめかもしれません。日中は駐車スペースに空きがあるかも不安です。狭い境内に2時間近くは滞在していたと思いますが、あと1時間は居られたなあ…

門真のこのエリアって地図で見てもらえば一目瞭然なんですけど、殺伐としているというか、決して心安らぐ風景が広がっているエリアではないんですよ。(住んでる方、ごめんなさい。)大通りから裏道までどこを通っても車が中心で、おちおち散歩も出来ないなっていう。ああ、まず僕大前提としてクルマという存在が大嫌いなんですよ。ハンドル握ると性格が豹変してキチガイになる人が多すぎるし、本当は自分で運転するのも大嫌いです。だけど、この三島神社は本当に周辺の喧騒を感じさせない、素晴らしい神社でした。何であんなに静かだったんだろうって今でも不思議に思うくらい。


細い路地を少しだけ散歩して裏の広場まで回り込んでみました。遠くからも樹冠を見てみたかったんですよね。うん、遠くから見てもやはり良い。何でもっと早く来なかったんだろう!という後悔の念が凄いです。勿体ぶらずに何度だって会いに行けばいいんだから。次回は雨の日がいいですね。超広角レンズを持って行きたいし、敢えて50mmくらいの単焦点も持って行きたい。何度も通って味わいたくなる良い巨樹でした。しつこいですけど響きも良いですよね、クンガイショウ。

2019/12/28 再訪しました。

「薫蓋樟」
国指定天然記念物・新日本名木100選
樹齢 約1,000年
樹高 24.4m
幹周り 12.5m

大阪府門真市三ツ島1374 三島神社

コメント:4

19-01-27 (Sun) 11:19

本でもすごく目を惹くし、絶妙な薫蓋樟というかっこいい名前がすぐに頭にインプットされるので、巨樹の世界に踏み入れたその日から気になっているような樹です。
この狭いスペースを全て幹で埋め尽くしてしまうのじゃないかという風景。インパクトありすぎですよね。
塊としての存在感、樹ではない何かに思えてくる姿形……こうして実際に訪ねられたto-fuさんの目を借りて見ていると、1枚2枚しか載っていない資料本だけで知った気になっているのは本当に勿体無い味わい深さを感じますね。

スギの巨樹は巨人とか塔みたいな感じがしますが、そう、クスの巨樹は力士や大蛸のようだと僕も九州でずっと思っていました。
柔軟なんだけど、実は筋肉の塊のような。これがケヤキだと岩山のように感じるんですが、その差がとても面白い。
例の番組でも、クスは特に触れ合いの樹と皆が思える存在だと思います。
探訪記から、また、薫蓋樟にすっかり身を預けているto-fuさんの姿から、感動の深さがよく伝わってきました。
行こうと思えば気軽に訪ねられる街中にこんな存在がいつも待っていてくれるなんて、とても素晴らしいことですね。
日本らしい光景だとも思うし、これこそ長く残していくべきだと思いました。

僕もいつか絶対薫蓋樟に触れに行こうと思うと同時、同系統の感動が味わえると確信する福岡の宇美八幡にもぜひ! to-fuさんに味わってもらいたいです!笑

to-fu 19-01-27 (Sun) 20:34

> 狛さん
もし姿を忘れたとしても名前だけは忘れられない、それくらいのインパクトがありますよね。薫蓋樟。
いざ会ってみるとその姿にも決して名前負けしないだけの迫力があって大満足でした。

ああ、分かります。大ダコ系のクスもいますよね。幹や枝のうねりがタコの足みたいなタイプ。
僕もケヤキやタブは岩石のようで、クスは筋肉のように見えます。(そういえばタコの体って全身筋肉の塊だとか。)
正直なところエリアだけで見ると決して積極的に近付きたくはない地域ではあるんですが、
これだけの巨樹が待っていると思うと今後も定期的に通ってしまうだろうと思いますね。
以前RYO-JIさんが紹介されていた駅舎をぶち抜くクスだったり、まだまだこの辺りはクス濃度が濃いので楽しみです。

九州のクスは本当に凄いですよね。巨樹巡りをする者として、きっと九州のクスは避けて通れないはず。
でもなあ…見てみたいクスがいっぱいありすぎて、クスを回るだけでも1週間では足りなさそうです!

RYO-JI 19-01-27 (Sun) 23:03

あー、しがみついてる(笑)。
いや、そのお気持ちは充分過ぎるほどわかります。
このまま同化してしまいたいと思える存在でしたね、この薫蓋樟は。

近所にこんな神社があれば、毎日のように通いますね。
そんな生活って豊かだと思うんですよねぇ。
だからto-fuさんが2時間程滞在してしまったのも大いに頷けますよ。
そうそう、ゴチャあるいはワチャっとした門真(勝手なイメージです)にこんな憩いのスポットがあるとは・・・、
自分も本当にそう思いますもん。

to-fu 19-01-29 (Tue) 21:39

> RYO-JIさん
いやホント、あと30年若かったらよじ登ってるところでしたね 笑
これだけ壮大な姿をしているのに神々しさよりも親しみを感じるあたり、クスノキの巨樹ならではだと思いました。

この記事をまとめてからすぐにRYO-JIさんの訪問ログを読み返したんですが、感じたことが似ていて笑ってしまいました。
初見の瞬間はテンション上がりますよねえ。これ見たら流石に冷静ではいられませんよ。
毎日薫蓋樟に挨拶してから出勤する。うん、豊かですよねえ。
まさに人間と寄り添って生きる人里の巨樹。石徹白とはまた違ったベクトルで、日本を代表する存在だと思います。

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