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愛媛県四国中央市 大川の大樟(大川のクスノキ)


SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

昨年末四国中央市の客先にお世話になった際、夜明け前に早起きして訪問した巨樹です。紹介するのが随分と遅くなってしまいましたが…さて、どこが四国の中央やねん!ということで名高い四国中央市ですが、四国中央市の川之江が高速道路のジャンクションになっており、さもすると四国中央市を起点に愛媛県松山市、香川県高松市、徳島県徳島市、高知県高知市という四国の4大拠点に一発アクセスできるということから恐れ多くも四国の中央なんて名乗ってしまったものだと思われます。ええ、地図を見ていただければ一目瞭然ですが立地的には全く四国の中央ではありません。


以前同じ四国中央市の「下柏の大柏」を紹介させていただきましたが、海のすぐ近くだったあちらとは随分と違う雰囲気の道程を突き進むことになります。いえ、国道11号線を逸れてから別に大した距離ではないのです。しかし主要幹線道路からほんの少し離れただけで別世界に突入してしまうという、四国山間部の恐ろしさの片鱗は充分に感じられる道のりでした。


切り立った急斜面にはミカン畑と、そこにへばり付くようにポツポツと立ち並ぶ民家。このような立地ですから当然ではありますが車道はひたすら離合困難なノーガードレールゾーンが続きます。景色が開けたところでズドンと立ち尽くす巨大なクスノキが視界に飛び込んできました。うわっ、すっげえ!と叫ぶものの、やはり周辺には駐車スペースなんか見当たりません。まだ夜明け直後ということもあってほぼ交通量ゼロなので、申し訳ありませんがギリギリ軽トラならすれ違えるかな?くらいの空きスペースを確保して路肩に駐車させていただきました。全く無音の山間部ですから、仮に対向から大型車がやってきてもクラクションが聞こえた瞬間にダッシュで戻れば1分もあれば戻れるだろう、と。幸いなことに30分程度滞在していたと思いますが、車は撮影中一度もやって来ませんでした。

どうでもいい話ですが、こういうところに行く機会が増えると軽トラが欲しくなります。やっぱり山奥で見かける地元の方は大抵軽トラですもんねえ。余計な駐車スペースを取らずパワフルで小回りが利き、かつ車体にキズが入ろうが故障しようが田舎の整備工場であってもどうとでもなるほどの部品流通量を誇るパーフェクト・ボディ。まあきっと自宅から現地に行くまでがしんどいわけですが。電動のポケバイでも車に積み込んで輪行して、現地近くの駐車場からはポケバイで移動…くらいが現実的なところでしょうか。


銅山川を渡った先に見えるクスの巨樹。この辺りに来ると放置してきた車が気がかりで仕方ありません。地元の方に迷惑かけたら申し訳ないなあ、と。結果的に一台の車も…いえ、人っ子一人見かけませんでしたけれども。


銅山川の名前のとおり、かつては銅の採掘が盛んだった別子銅山を源流としています。いやー…画像から伝わるわけがないんですけど、実はこの日メチャクチャ寒かったんですよ 笑 大寒波が来ていたときで、体感で10m近い強風と雪がぱらついてまして。帰りなんかこの奥に見える山はすっかり吹雪で見えなくなってましたからね。カメラを持つ手も巨樹どころかこの川を撮影してる時点で感覚が無くなりつつある有り様。今となっては良い思い出ですが、本当に辛かったですねえ。


手前の薬師堂で参拝を済ませ巨樹の元へ。参拝しながら気が気ではなかったんですけど、なにこの根回り!クスノキは液体だった?


さてこのタイミングで案内板を。
幹周10.6mという時点で相当なものですが、そんなことよりも根回り35mですよ。え?枝張り(樹冠)と書き間違えてない?というくらいの立派なサイズ。あまりにもクスが肥大化したので昭和37年には薬師堂を少し北へと移動させたそうです。お堂を圧迫するからと切除されてしまう御神木クラスも多い中で実に恵まれています。巨樹を愛する者としては嬉しい一文。川の対岸からしっかりと全景を眺められるように周囲を整備していることからも、決して「誰も見向きもしない田舎の大木」ではなく、地元の方々の誇りとして愛される巨樹であろうことが窺えます。

本当は吉野から移植されたという「熊谷桜」も見ておきたかったのですが季節的なこともあって…いえ、そんなのは方便です。すみません。あまりにも寒すぎてどうでもよくなってしまいました。早くホテルに戻ってコーヒーを淹れる方が優先だ!って。


本当に凄い。クスの周囲は特に柵や石垣などが設置されているわけではないのですが、足の踏み場に困るくらいに根が広がっています。


固体でもないし液体でもない。まるで巨大な粘体生物のような。当然実際にはカチコチの個体なんですけど、まるで巨大なスライムが迫って来るかのような緊張感があります。


私が訪れた時間帯や天候も作用しているのかもしれませんがシイの巨樹のようなちょっとおどろおどろしい雰囲気が漂っていました。妖樹とでも言いましょうか。すぐ背面が山林ということもあって非常に薄暗く、写真を撮るにもとても難儀しました。これ、たしかほとんどISO1600~3200で撮影してると思います。風が強すぎて枝葉がバッサバッサと揺れることもあって低感度ではシャッタースピードが稼げず、まるで話にならなかったんですね。一昔前のカメラなら立体感が破綻してること間違いなしなわけで、デジタルの進化に心から感謝したことを覚えています。最近のフルサイズ機はISO1600程度ならA3印刷くらい余裕で耐えてくれますからね。


根本だけでなくその立ち姿からもどことなくシイのような風情が感じられます。私がここで思い出したのが福井県小浜市の「神宮寺のスダジイ」。クスノキと言えば「陽」の木の代表格という印象ですが、この巨樹に関しては「陰」のオーラを纏っており、個人的には元気をもらえるだとかそういう対象としては見ることができませんでした。決して悪い木だと言ってるわけではありませんよ?畏怖の念であるとか、そういう気持ちの方が強かったです。私は。


先程の面から眺めると本当に幹周10mもある?と感じられたかもしれません。実際にはまるできしめんのように扁平な形をしていまして、見る角度を変えると流石!と唸るだけの迫力があります。この野性味あふれるコケとノキシノブが着生した姿がまた良いではありませんか。樹高約10mの辺りで二股に分かれているのも確認できます。


一度は豪雪による枝の折損が原因で樹勢も危ぶまれたということですが、現在ではそれなりに回復しているように見受けられます。対岸から樹冠を眺めた限りでも相当なものでした。瀬戸内地方といえば温暖な気候という印象が強いかもしれません。しかし四国の山々はまさに剣のように険しく、瀬戸内式気候なんてものは山間部に対して一切通用しません。これからも毎年のように厳しい冬が訪れると思いますが、何とか耐え忍んでいただきたいものです。


30分ほど滞在したものの滞在時間の半分くらいはポケットに手を突っ込んで温める時間に費やしていたので、巨樹とじっくり向き合えたとは言い難いんですよね。絶対に再訪して周辺の集落の風景含めてゆっくり撮影してやろうと心に決めています。ああ、四国に行きたい。

2018/12/28訪問
「大川の大樟(大川のクスノキ)」
愛媛県指定天然記念物
樹齢 伝承1,000年
樹高 34m
幹周り 10.6m

コメント:4

19-10-12 (Sat) 20:22

これはまた……面白いのにたどり着きましたね!笑
巨樹化しやすい樹種は固定されてしまうものの、巨樹個々の魅力というものは無限にあるんだなと実感させられます。
この、ペトッとくっついたような根の広がり方、個性的すぎて思わず笑ってしまいますね。
苦労して寒い中撮ったto-fuさんの、これを見せたいんだという視点も伝わってきます。

しかし、ほんと寒そうですね。もう、写真の色味からして……。
栃木だったかで、クスの自生北限にあるという巨樹を見たことがありましたが、このクスもずいぶんすごいところに生えているものです。
限界はとうに突破してるんじゃないでしょうか。
それでも精一杯枝葉を広げて、足下に庵のようにお堂を従えて、実に風格ある姿です。

そうそう、軽トラは荷台に積まないと軽いですからね。割合のパワーが出ます。まあただ、乗り心地は……笑
建設業時代には軽トラがお友達でしたが、マニュアルで100キロも走ると、もうかなりぐったりでした。
その辺がまた難しいところですが……荷台でテント張って車中泊してみたりして。笑

to-fu 19-10-13 (Sun) 16:34

> 狛さん
あまり自由に動ける時間がなかったので近場の巨樹をと探してみたんですが、結果的に変態的なクスとの出会いに繋がりました。
クスの巨樹としても立派ですが、言ってしまえば個性的な根回りこそがこの巨樹の全てだと思います。
たしかこの数日間は異常な寒さだった気がします。まだノーマルタイヤだったので、これ積もって四国から出られなくなったらどうしようって焦りました。

それにしても栃木にクスの巨樹ですか!あの埼玉の「上谷の大クス」が北限かと思えば、更にずっと北ではありませんか!
栃木の巨樹も色々下調べを進めてるんですけど、県内のアベレージはそこそこですが中には結構な大物もいて見逃せませんね…

軽トラは現地では最高の足ですけどやはり現地までの道のりがネックですよね。
運転に性的興奮を覚えるタイプではないので、市街地でマニュアル車をガチャガチャやるのも何だか面倒くさいなあと…
(以前社用車がマニュアルのミニキャブだったんですけど、ミッション弄りながら京都市内を走るのが超絶ストレスでした。)
今までにも駐車スペースが分からず諦めた巨樹が何本かあるので、爺さんになったらオフ車でも買ってそいつらだけまとめて回るのも楽しいかもしれません。

RYO-JI 19-10-14 (Mon) 21:07

クスのイメージを覆すタイプの巨樹ですね!
天候や寒さだけではない陰のイメージがよく伝わってきます。
案内板には明記されてはいませんが、おドロドロしい逸話の一つや二つあっても驚きませんよ。
薬師堂を移動させたのも何かのタタリを恐れて?とか想像が止まりません(笑)。

確かに幹周がそれほどあるようには見えませんが、むしろ根回りが凄すぎてそう見えてしまうのかもしれません。
樹冠並みのって・・・。
個性的なものが四国にはまだまだありそうで、ジッとしてられなくなります(笑)。

車問題に関しては、私も色々思うことがあります。
長距離移動が快適で、小回りが利くサイズ感、しかしながら車中泊もできる、キズつけても気にならない・・・
なかなか無いですね、そういう車は(笑)。

to-fu 19-10-16 (Wed) 16:25

> RYO-JIさん
本当にあの徳島のクスたちと同じ四国のクスだとは信じられませんよね。
冬だから寒々しいということに留まらず、仰るようにまるで別の地方のクスのように見えます。

この根回りに関しては本当にぜひとも実物を見ていただきたいです。
実際その場に立つともうクスが液体にしかみえなくなるという 笑
あのドロドロと迫ってくる感じはちょっと他では味わえないような気がします。

車問題は結局どこかが犠牲になりますよね。
今のところ自分の趣味専用として1台保有するのは(家族会議で確実に却下されるため)現実的ではありませんが、
将来的に子供たちが出て行ったら軽バンでも買って後部座席を取っ払って畳敷きにしようかな、なんて思ってます 笑

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