京都府船井郡京丹波町 導観稲荷神社のスギ (源水のスギ)

SONY α7RIII / TAMRON 17-28mm F/2.8 Di III RXD

昨日入手した新レンズを試すべく早起きして近場の巨樹へ。(まだLightroomにレンズのプロファイルが上がっていないこともありますが、レンズの歪曲や光量落ちが分かりやすいよう今回は敢えて補正無しで掲載しています。)ここには何度か訪れているのですが記事にするのは初めてだと思います。京都縦貫自動車道 丹波ICを降りてすぐ、国道9号線からほんの少しだけ裏道を進んだ先に位置します。導観稲荷神社、御神木の大スギを訪問しました。

国道9号線と言ったら非常に交通量の多い、京都府下を貫く主要道路の一本。そこから僅か100mほどしか離れていないにもかかわらず、この静けさですよ。静けさなんて言われても…という感じかもしれませんが、写真からでも雰囲気は何となく伝わるのではないでしょうか。さてさて大杉は…と探すまでもありませんね。神社の中心にそれはもう明らかにこの方で間違いないだろうという異物が存在しているのですから。

いやいや…これは相当なものですよ。2本のスギの合体樹ではありますが、流石にこれだけ密着していると有無も言わさぬ迫力があります。右側のストンと伸びたもので1本、左側の三股に分かれたものでもう1本、計2本が癒着した合体樹だと思われます。背後に朽ちて白骨化した幹がさらに1本見られましたので、もしその幹が育成成功していたらより凄い巨樹になっていたのかもしれません。

私も色々な巨樹を巡ってきましたのでカシやカゴノキ、最近だとクリの巨樹のような、いわゆる玄人受けしそうな巨樹の魅力も分かるようになってきました。しかし、ですよ?誤解を恐れず申し上げるなら、やはり巨樹の王様といったらスギなのではないでしょうか。キング・オブ・巨樹。それがスギ。スギの巨樹には巨樹が持つ魅力が全て詰まっていると言ってしまっても過言ではないと思うのです。カヤも良いよなあ。などと言っていても、その次に立派なスギを見てしまうと「やっぱスギだわ… 笑」なんて全て消し飛ばしてしまう。それくらいの破壊力を秘めた樹種です。ああ、恐ろしい。

導観稲荷神社というくらいなので、どうせ高僧の導観サンお手植えなんだろ?と勝手に決め込んでいたんですが、どうも導観サンなる存在が何者なのか分かっていないみたいですね。伝承には導観なる力士が実在したと書かれていますが、そちらは由来ではなくむしろ神社にあやかって四股名を頂戴した側のようですし。現在ではその力士・導観の強さにあやかって必勝祈願の神様として崇められています。

案内板にも書かれていましたが、はるばる遠方から水を汲みに来る方がいるくらい美味しい湧き水が湧いています。うん、これは美味しい。もちろん撮影後はコーヒーを沸かしてぽけーっとしましたとも。ちなみに本来湧き水は大杉の根本にあるお風呂のフタのような物があるところに湧いているのですが、そちらを閉じて案内板の脇まで水を引っ張ってきています。その他、集落の近隣7世帯の方々の家庭用水としても引かれていて、この湧き水はその7世帯の方が持ち回りで清掃して管理しているのだとか。この大杉は奈良県で見られるような井戸杉の類だったのかもしれませんね。湧水が枯れないことの祈願なのか、はたまた旅人の道標としてスギの合体樹を植えていたのかもしれません。

樹形はスギらしいスギ、とでも言いますかスタンダードな立ち姿だと思います。枝も若々しく生気に溢れていて、今後一層大きくなることは間違いないでしょう。100年後、200年後には京都を代表する大杉になっているかもしれません。

樹高40m。スギの巨樹として充分な高さがありますので、見上げた姿はやはり圧巻です。別に他の巨樹と比べてどうこう言っても仕方ないのですが、同じ株立ちの合体スギということで岐阜県の某五本杉を思い出してしまいました。こっちの方が何倍も凄い杉だよなあ、と。ただの地元贔屓かもしれませんけど。

まだ若い杉ですが樹皮には既に、厳しい環境に生きる貫禄が刻み込まれていました。触れてみると非常に硬い。

拝殿への階段から。あれだけ立派な姿ですから、神社のどこにいても視界に入ってきます。シャッターを押す手が止まらない…これだけで、ああ良い巨樹だったんだと実感できる。後で見返すと似たような写真ばかり量産しているのがアレですけど。

こちらは昨年6月に訪問した際の写真。今と変わらぬ姿。スギが、ですよ?私はしっかり一年分老けているはずです 笑

(最後に超広角ならではの一枚を。周辺環境含めて写し込めるというのは良いですね。)
このスギは結構好きなんですよ。近くを通りかかるとつい寄ってしまいます。湧き水も汲めますしね。殺伐とした9号線沿線において数少ない癒やしの空間ということで、近くを通られた際はぜひ立ち寄ってみて下さい。

2019/7/26訪問
「導観稲荷神社のスギ(源水のスギ)」
町指定天然記念物
樹齢 約400年
樹高 40m
幹周り 7.2m

京都府船井郡京丹波町須知岩清水20

4件のコメント

  1. 新レンズ入手した翌朝に早速巨樹で試写とは、さすがto-fuさん、仕事がウルトラ早い(笑)。
    限られた撮影エリアでの全体像や周辺環境までをも写し込むには必須とまで言えそうな武器ですね。
    当たり前ですが標準ズームレンズとは違った写真が残せるので、これはかなり魅力を感じます。
    ただto-fuさんのようにサブ機までを手に入れることを念頭に置いておかないと・・・そう思うと二の足を踏んでしまいますねぇ。
    もちろんお財布事情的に(笑)。

    そしてこのスギですが、まさに超広角ズームレンズを使うのにうってつけの周辺環境にありますね。
    スギの存在感がもの凄くよく伝わってきますもの。
    あと気のせいかもしれませんが、とてもしっとりとした雰囲気がするなぁと思ったら、湧き水があるんですね。
    良き水に恵まれている樹はもちろん樹勢も良く、上手く言えませんが何か特別な気をまとっているように感じます。
    怖いような気ではなく、魅力を感じるような良い方の気が。
    まだ若いスギだということですが、充分に貫禄ある姿ですね。

    それはそうと事故、怖いですね。
    ひとまずお体が御無事でなによりです。

  2. まずはフォビオンに謝ってください……というのは嘘で笑、いや実際、お怪我は本当に大丈夫ですか?
    フォビオンにはゴミに出しがたい魅力モドキも多少あるにせよ、ほんと高齢ドライバーは邪悪な殺人マシンだと思います。
    僕もバンパー壊された時、理不尽を感じました。気をつけたいと思います。

    主要道路からすぐのところにこの苔むした静謐、湧き水、巨樹を擁する神社……と、さすがは京都です。
    乾燥した強風が吹き荒れるウチの方ではありえない風土を感じますね。
    そうそう、杉の巨樹をじっくり眺めると、やはり杉あっての巨樹だなあと思いますね。
    この樹のようにまっすぐな御神木として存在している姿は、神様を「柱」と数えることもある日本の精神性を感じさせます。
    それと同時に、巨樹を探訪するようになってから知った裏杉という野蛮な存在が、杉の世界観を何倍も深めてくれました。
    そういう数々の杉があるから、また他の樹種を見るのも嬉しくなる。
    いいもんですねえ。

    うーん、超広角、便利そうですね。
    今後ワンランク上のレンズを僕も買おうかと思いますが、そう限らず、超広角も、文字通り描写を広げてくれて有意義ですね!

  3. > RYO-JIさん
    仕事に関してはウルトラ遅いんですが、趣味方面となると何故か迅速丁寧なんですよね…おかしいなあ。
    超広角ズームを使ってみて思うのは、一歩下がれば済むところを横着して「より広角側へ」となりすぎてしまうので
    慣れるまでは難しそうに感じました。安易に広角側に頼りすぎてしまうとパースを誇張した写真ばかり乱造しそうです。

    このスギは周辺の環境含めてお気に入りの一本です。
    我々野点コーヒー組からすると撮影後の一服が楽しめるポイントに対してはつい評価が甘くなってしまいますが 笑
    でも本当、とても400年のスギには見えない貫禄があります。樹齢500~600年くらいと聞いても違和感無さそう。

    事故は本当に怖いですね。どれだけ気を付けていても理不尽は降りかかりますから…
    いやでもホント、生きててよかったです。まだまだやりたいことがたくさんありますからね!

  4. > 狛さん
    ええと…まずはフォビオンに対して謝罪しておかなければなりませんね。「反省してまーす。」
    僕も相手が爺さんだと分かってすぐにあの住職事件(事件…事故か)を思い出しちゃいました 笑
    G1X MarkIIIを傷つけた罪は万死に値しますが、まあ罪を憎んで人を憎まずの精神でいるしかありませんね…理不尽だ。

    これだけ杉山の多い日本ですし、杉の巨樹はやはり日本を代表する巨樹であるように感じますね。
    石徹白や杉の大杉、そして縄文杉。まさに要石のように日本を支える「柱」なんじゃないか。そんな風にも感じます。
    どんな樹種にももちろん魅力はあるんですが、杉やクスみたいな圧倒的サイズの巨樹はやはり説得力が違いますよねえ。
    「どうだ、俺が巨樹だ!」みたいな。あの凄まじい姿でそう迫られると、いやいや仰る通りでございますとしか返せなくなってしまいます。

    超広角があれば…と思うシチュエーションが結構あったので、大金はたいても後悔しないだろうという確信がありました。
    別の目線からアプローチできるという意味でも撮影の奥深さをさらに広げてくれる一本だと思います!

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