三重県尾鷲市 尾鷲神社の大楠

SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

ちょうど3年前、2020年2月に訪問した巨樹です。
熊野那智大社から北上して海岸沿いの巨樹をめぐる。この数年で何度も繰り返してきた和歌山・三重エリアの旅。こちらに訪問したのはまだその初期の頃だった記憶があります。再訪して写真を撮り直してから改めて記事を書き上げよう。そう思っていたのですが口先ばかりの私ですから、いつかまた、今度こそはと言ってばかりでキリがないため、冬の寒さで出不精になっているこの機に記事をまとめてしまうことにしました。

ええ、もう一目瞭然。これしかない!ですね。
神社に近付くと目的のそれと思われるものが視界に飛び込んできましたので、早速境内に車を停めて目の前のクスノキへと向かいます。

ずんぐりむっくりしたタイプのクスではないので写真では細く見えるかもしれませんが、樹齢1,000年以上とも言われる幹周10mと9mの夫婦楠。これはなかなかの光景です。

三重県指定天然記念物「尾鷲神社大楠」。元々尾鷲神社の本殿はこの夫婦楠の脇に建っていたようです。現在も小さな社が置かれているのはその名残か。1636年の調査時点で既に幹周6mに達していたそうなので、樹齢1,000年というのも決して眉唾ではないのかもしれません。

左手のやや大きめのクスが10.2m、右手のものが9.5m。同じくらいのサイズ感のクスが仲睦まじい様子で、やはり同じように道路側へと歪曲しながら成長を続けています。

夫婦楠に縁結びの祈願を。なんとそれだけでなく、安産祈願の対象にもなっていました。

やや小さめのクスの根元にぽっこりと小さなコブが見られるため、この姿を妊婦さんとかけているのだと思われます。ありがたやありがたや。

幹に空洞化している箇所や枝の枯損なども見られず。どちらも文句なしに立派なクスノキです。

樹冠も美しい。素晴らしい立ち姿。

何故この立派なクスの記事を今まで執筆してこなかったのか。
ええ、ちょうど逆光がキツい時間帯だったので写真に満足出来ていないのも理由の一つですが、どちらかと言えばこのヤーヤ祭りが原因でして。

尾鷲の奇祭「ヤーヤまつり」について興味のある方はぜひ調べてみて下さい。今回その詳細は略しますが、私の訪問したタイミングがちょうどそのお祭り開始のタイミングと重なってしまったんですね…ああ、やけにパトカーの多い街だな、なんて思っていたわけですが、ようやく謎が解けました。

せっかくなのでお祭りを眺めて撮影など楽しんだわけですが、今回私はあくまで静かにクスと向き合いたい一心でここまでやって来ていたもので、どうにも戸惑ってしまいましてねえ。いやいや俺は一体何をしに来たんだ?なんて。

いつの間にか境内にはたくさんの人、人、人。続々と人が集まってくるではありませんか。
まずい!これ以上混雑したら車を出せなくなる!と、撮影もそこそこに切り上げることに。アホな私がよりによって境内なんかに駐車してしまったばかりに地元の方々には本当にご迷惑をおかけしてしまいました…すみません。(境内から出てからもお祭り時間帯は周囲一帯が車両進入禁止エリアに変貌しており、警察に事情を話して通らせてもらったりと色々苦労したのです。)

ということで、結局クスと向き合えたのは到着直後のわずか10分くらいでしょうか。これで記事にするのもなあと思い悩んでいたのですが、これはこれで当時の貴重な思い出として残しておくべきかなと。他の誰から見聞きした情報でもない、これこそが私の「尾鷲神社の大楠」なのですから。

とはいえ…やっぱり改めて再訪して、のんびり静かにクスと向き合いながら写真を再撮影したいですね。今年こそは。

2020/2/5訪問
「尾鷲神社の大楠」
三重県指定天然記念物
樹齢 推定1,000年以上
樹高 南株25m、北株22m
幹回り 南株10.2m、北株9.5m

三重県尾鷲市北浦町12-5 

8件のコメント

  1. これは、これは!
    よりによって、一番人が出るタイミングで訪問されたのですね(笑)
    でも、取り上げていただいてありがとうございます。
    1枚目の写真など、懐かしくて涙が出てきてしまいました(?)
    というのも、もう何十年も前のまだ若かりし頃、尾鷲の町に3年ほど住んでいたものですから・・・。
    その頃はあまり巨樹古木に興味が無くて、
    尾鷲神社のクスノキも、確か白黒で根元の写真を1枚撮っただけ・・・。

    こうして見ると、祭りの垂れ幕もそれ程気にはなりませんよ。
    背景がスカッと抜けた青空なので、原色の文字との相性も悪くないですし、
    見方によっては地域を象徴する行事を入れ込んでいて、選挙のポスターなんかより余程良いのではないかと・・・。

    再撮影も楽しみにしています。

  2. 巨樹休眠前には『いつ行こうか?』とずっと思っていた場所です。
    この幹周10mクラスのクスが並んでいる姿が印象的で、目にしたいと熱望していたことを思い出しました。

    写真を拝見する限り、数字より本当に細く感じますよねぇ。
    しかしそれは10mクラスのクスが並んでいる姿が想像できなくて(そりゃ見た事ないので)、脳が勝手に細く感じるようになってしまっているのかもしれません。
    二本のサイズを考えれば、もっと広い範囲を柵で囲ってしまった方が良いんでしょうけど、それでも元気そうなのが素晴らしい。
    神社にある、というか道路沿いに存在するのでこれくらいの距離の方が親近感が湧いてくるとも言えますね。

    ヤーヤー祭り、なるほど奇祭ですね(笑)。
    そんなまたとない?タイミングで訪問されたto-fuさんは、巨樹的にはアンラッキーでしたが、経験としてはラッキーだったような気もします。
    次回はゆっくり対峙できるといいですね!

  3. > れもんさん
    この記事を書きながら、れもんさんはこの辺りにお住まいだったのかな?と勝手に想像していました。
    ええ、以前コメントで尾鷲に住まれていたと仰っていたことをもちろん記憶しておりましたとも。
    そうなんですよね。私も若いころは巨木どころか神社にもほとんど興味がありませんでしたから、
    今思えばもったいないことをした!というポイントがいくつもあります。

    お祭りに関しては考えようによっては到着があと10分遅れていたら交通規制で神社に到達できなかったかも…とも
    言えますから、不運なようで実は幸運だったのかもしれません。事前に知っていれば車を乗り入れずにしっかりお祭りを
    見ておきたかったんですけどねえ。今年こそは尾鷲を再訪してきます。

  4. > RYO-JIさん
    尾鷲エリアは行きやすいようで微妙に行きにくい、何とも絶妙な位置なんですよね。
    直線距離では近いんですが、立ち塞がるカベのような山脈が…

    なんとなくですが、根上がりになっているちょうど太い部分を幹周として測定しているのでは?という気もします。
    しかし細かいことを抜きにしてもこれだけ大きなクスが並んでいる様はそう見られるものではありませんので、
    見応えとしては十分に感じられましたよ。仰るようにそろそろ囲いが窮屈に見えるのだけが心配ですね。

    お祭りの一部、それも恐らくとても静かな部分?しか見ることが出来ませんでしたが、ヤーヤ祭りの存在を知ることが
    出来ただけでもラッキーでした。巨樹を知るだけでなく現地の雰囲気や歴史まで肌で感じられるのは、Webや科学が
    どれだけ進化しようとリアルな体験だけの特権だと思います。

  5. この辺りの巨樹を調べると、まず目につく大クスですよね。
    しかもツイン。これほど近く、どちらも大きいパターンは珍しいのではないでしょうか。
    あと300年もすれば、融合して一本の巨大なクスになってしまう可能性もなくはない……かも?
    いや、そこまで接近してはなさそうですが、枝張りの大きさからして枝の連理くらいはしそうですね。

    そして奇祭が始まる笑……これは驚きますね。
    なんとなく、自分の幼少時のウチの地方の祭も、似たような雰囲気があったように思い出されました(一緒にするな!と怒られそうです。こんな立派じゃないし)。
    21世紀を前に火が絶え、復活させたらなんか別物になってましたが。ヤーヤ祭も、今年は中止みたいですね……。
    ここ十数年の現代社会の激変を考えると、ますます存続は難しいでしょうが、現場の熱気(というか殺気?)は強く記憶に残り、熱望される向きも当然あるだろうなと。

    何にせよ、土地と巨樹の背景をとても濃く体験されたのは間違いないですね。羨ましい。
    もしかしてこれも「巨樹に呼ばれた」というやつだったのかも。笑

  6. > 狛さん
    お、早速調べられてますね 笑
    もしこの辺りのルートにするなら同じ尾鷲の樹種豊富な「曽根飛鳥神社」、巨大ナギの「熊野速玉大社」、神木のイヌマキあたりは
    是非ルートに加えねば…などなど私も考えていました。どうせならRYO-JIさん未訪問の尾鷲神社も加えたいところですね。

    このクスの大枝が連理になったら一層ありがたみが増しそうです。これで縁が結ばれなかったらおかしいだろ、みたいな。
    奇祭にケンカ祭り。興味深い祭事は日本各地にありますが、実際この目で見る機会はあまりないので貴重な体験だったかもしれません。
    神事の前後は必ず全員海にダイブして身を清めるそうですが…いやいや、温暖な尾鷲とはいえ真冬の2月だぜ? 笑

    京都でもお祭りや花火大会、昔から伝わるたくさんのイベントがコロナをきっかけに「やめるなら今だ!」と言わんばかりに
    中止ラッシュになっています。たしかに面倒くさいんですけど、こういうのを次の世代に伝えるのも我々の役目だと思うんですけどねえ。
    愛国心はよく分かりません(どんだけ税金取るねん!)が郷土愛だけは人一倍強いto-fuさんとしては残念でなりませんよ。

  7. どちらも素晴らしいクスノキですけど本当にこの2本がもっと癒着して一本の木のようになると
    物凄い事になりますのでこのまま是非とも順調に育って欲しい所ですねえ

    しかし良いサイズの木がある場はしばしばお祭り、催し物がある事があるのでそういう日に当たると
    ゆっくり見えないですよね ネットで調べても出ないイベントとかもありますから

  8. > 123さん
    根元が癒着しているだけに将来は幹も癒着するのでは?と期待したくなるクスですね。
    徳島も巨大クス天国ですが、三重県の海沿いもなかなかのクスの大物が並ぶエリアなので、機会があれば
    ぜひ123さんにも見ていただきたいです。(他所に行ってまでクスを?と思われるかもしれませんが 笑)

    大きな神社などはイベントの規模も大きいので要注意ですね…
    車両進入禁止になる前に現地に到着できたのは、今思えば本当に幸運だったと思います。

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