大阪府豊能郡能勢町 天王のアカガシ

SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

「八坂神社のスダジイ」を眺めて向かったのがこちらの「天王のアカガシ」。
今回既に3度目の訪問で、私としては野間の大ケヤキから八坂神社のスダジイ、そしてこの天王のアカガシを眺めて帰るのが定番の流れになっています。

なお今回2023年4月の訪問ですがあまりにも天気が良すぎたため強烈な日差しで写真撮影どころではなく、2020年10月に訪れた際の写真を掲載させていただきました。写真は約2年半前のものですが現在も目立った枯損などのダメージは見られません。ご了承下さい。

大阪能勢から国道173号線を兵庫県篠山方面へ。
天王トンネルの能勢側入り口手前の左側に駐車スペースがあるため、そちらに車を停めてフェンスの脇道へと歩みを進めます。
すぐに稲荷神社の鳥居が目に入りますが目的のアカガシはそちらではありません。浄水施設?のフェンスに沿って山道を100mほど登った先です。

ところで個人的には先述した能勢の巨樹3本をセット扱いで回ることが多いのですが、天王トンネルを抜けると「安田の大杉」はじめ多くの丹波篠山エリアの巨樹が立ち並んでいます。日本一のモミの木「追手神社の千年モミ」など文句なしの巨樹が密集するエリアなので、そちらと絡めて回るのも大いにアリではないかと思います。

さあ目的のカシが見えてきました。
黒々としたアカガシの巨樹が剣山のように立つスギの植林の中で異質な存在感を放っています。

近畿圏ではそう多く見られないカシの巨樹。この妖樹とでも形容したくなる「陰」の佇まいがたまらない。
まるで「陽」をそのまま体現したかのような野間の大ケヤキと併せて眺めることで、一層その重厚さにパンチが効いてくると思うのです。

今回の訪問で痛感しましたが撮影目的の訪問なら曇天または雨上がりが望ましいです。
晴天の日中に撮影した写真はほとんど全ボツだったので断言します 笑
ちなみに早朝の訪問なら天候問わず撮影可能だと思いますが、能勢もツキノワグマ生息エリアなのであまりおすすめできません。
大阪にクマのイメージはあまり無いかもしれませんが数年前実際に能勢でクマが捕獲されてニュースにもなっています。
(たしか真っ暗な倉庫に長いこと放置された後、保護団体の支援があって今もどこかのお寺で飼われているはず。)

大阪府指定天然記念物「天王のアカガシ」。
カシ自体が元々大きく育つ樹種でないこともあって近畿圏ではあまり見られない希少な巨木です。
側に置かれた小さな祠はかつて大梵天王を祭祀する神社があった場所だということです。
大梵天王はいわゆる梵天(ぼんてん)、淫欲から解脱したといわれる仏教界最高位の存在ですね。
ええ、決してインコの品種のことではありません。(梵天セキセイインコとか色々いる)

先日掲載した八坂神社のスダジイと同じくサイズ感で圧倒するタイプではないとはいえ、カシの巨樹にはやはり身震いしてしまうような迫力がある。
この背筋がぶるっとする威圧感はカシが放つものなのか、それとも野生動物への警戒がもたらすものなのか。
リラックスしてぽけーっと眺められる巨樹もいい。しかし緊張感を持ちドキドキしながら眺める巨樹もまたいいものです。

遠目には健康そうに見えるカシですがやはり内部は空洞化が進んでいるのでしょう。
根元にはセメントで蓋がされ、恐らく幹の空洞ともそのまま繋がっているものと思われます。
しかしそんな傷みまで含めてゴツゴツした幹の陰影がまたいいのですよ。今にも幹の洞から呻き声が聞こえてきそうな…

裏側から。手前の枝はわりと最近へし折れてしまったのか根元に枯損した残骸が横たわっていました。
2005年時点の写真を見るとまだこの枝が健在だった模様。(既に茸が付着しており、枯損は時間の問題だったようにも見える。)
この苔の色味が強調された重厚な雨上がりの表情こそカシの真骨頂ではないでしょうか。

スギに負けじと天を目指す幹。
それなりに葉の付きも良く、こう見えて樹勢はなかなか安定しているようです。

隣に立つ小さめのアカガシも含めて天然記念物指定されています。

最後に2023年4月時点の姿を。
季節の違いもあって葉の付きが良く見える以外にほとんど変わりはないかと。
to-fu的能勢の巨樹3トップの一角として、これからも末永く元気でいてほしいものです。

2023/4/27訪問
「天王のアカガシ」
大阪府指定天然記念物
樹齢 不明
樹高 22m
幹回り 5.2m

大阪府豊能郡能勢町天王

6件のコメント

  1. やはりゾクゾクしますねぇ、アカガシは。
    湿気をたっぷり含んだ姿がとても禍々しいモノに見えて仕方ありません。
    でもそれがアカガシの魅力とも言える訳で、どうせなら雨上がりや霧に覆われた状態で見たいものです。
    とか言ってますが、そんな状態でゆっくり見ていられる自信ありませんけど(笑)。

    杉林の中で佇む姿は本当に異質な存在ですね。
    先日狛さんが掲載しておられた〝沼田林道のトチノキ〟を連想してしまいました。
    が、同じ異質でも受ける印象は全然違いますね。
    まさに陰と陽。

    ツキノワグマ情報ありがとうございます。
    知らなければ気にせず訪問できますが、何かあってからでは遅いですから用心するに越したことはありませんから。

  2. > RYO-JIさん
    あの青田の大カシでカシの巨樹の魅力が分かったような気がしてこちらを回った記憶があります。
    サイズ的な問題でスルーしてしまいがちな樹種ですが、あの「その場に居ても立っても居られない感」は
    カシ特有の良さだと思いますね。実際長時間は見てられないんですけど 笑

    こんな趣味をしている以上、自然の中で怪我をする分には自業自得だと思いますし覚悟もしてますが、
    結果として多くの無関係な方に迷惑をかけることになるので極力リスクは避けたいものです。
    野生動物だって好き好んで人間なんか襲いたくないと思うので、彼らの住処にお邪魔している感覚は忘れたくありませんね。

  3. カシの巨樹。さあ、怖いヤツか、そうでないヤツか……ああ、やっぱりちょいとコワイ。汗
    スダジイよりもなお筋張って頑丈そうで、陰樹のオーラは有り余ってしたたり落ちんばかりですね。

    取り囲む植林スギに負けじと背高く成長している様子は、逞しくもあり、孤独な戦いの歴史を見るようでもあり。
    このアカガシは同志がいるところがユニークですが、迫力の中には、いくぶんこちらを威嚇してくるような部分もありそうですね。
    そうやって周囲のスギどもを寄せ付けないようにしてるんじゃないか、みたいな。
    これほど大きいカシというだけでも珍しいし、本当におそろし……物凄さがありますから、数値に惑わされずもっと世間に注目してもらいたいものですね。
    見る人全員にビビってもらいたい。

  4. > 狛さん
    ハイ、やはりそっち系のカシなのでした。
    仰るように材としても非常に硬質な樹種ですから、太さはそこそこでも筋肉質で凄みが感じられますね。
    うっかり薄暗い夕方なんかに来ようものなら「うわ、人面樹!」と逃げ出してしまいそうな迫力がありました。

    世に注目される巨樹というとやれパワースポットだご利益だと巨大なクスノキやスギばかりが挙げられますが、
    決してパワーなんか与えてくれない、むしろマジック・ポイントを吸い取って来そうな迫力のあるカシやシイにも
    魅力があるんだぜ?というアピールを続けていきたいですね。実際いろんなタイプの巨樹がいるから我々も飽きないわけで。

  5. 昔はカシやスダジイ、アコウなど陰の顔を持つ木が苦手でしたが、気が付けば奇樹にも興味が出て今では好きに変わってしまいました。未だに行けない近寄れない木も何本かいるのですが
    植林の中で一際存在感があり見てみたいです。また野間のケヤキに行く際は寄ってみようと思います。

  6. > 小山さん
    私も昔はいまいち良さが分かりませんでした。サイズ的にも他の樹種の後回しにしてしまったり。
    実際見てみると個性があって面白いですよね。久しぶりに和歌山に行ってアコウを撮影してみたいです。
    このカシのためだけに…と考えると能勢は遠いですが、近くに野間の大ケヤキがあるのはポイント高いと思います。

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