鳥取県鳥取市 落河内のカツラ

FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 20-35mm F4 R WR

初の鳥取県の巨樹。いつか行くなら必ずこの巨樹は!と心に決めていたカツラの巨樹です。
今回の鳥取旅は早朝の一番いい時間帯にこのカツラを眺めるための深夜出発だったと言っても過言ではない。
実際ほとんど徹夜の状態に耐えてまで行くほどの価値ある巨樹だったの?

さあ、どうでしょう。それでは書き進めてまいりましょう。

既にGoogleMapにも登録のある巨樹なので迷うことはないはずです。山道も比較的走りやすい舗装路でした。
目的地に到着し、カツラの目の前にあるスペースに駐車。ええ、既に見えているのです。
興奮を抑えて撮影機材を準備したら虫除けスプレーを全身に振りまいて、もう辛抱たまらんと駆け出してしまいました。デカい!
一本にして森!高まりすぎた期待を全く裏切らないその迫力に圧倒されます。

カツラの根元を流れる小川の側に解説板あり。
鳥取県指定天然記念物「落河内(おちがこうち)のカツラ」。鳥取の名木100選にも選定されています。

とにかく枝張りと樹高がすさまじい。
樹齢は推定1,000年ということですが、これだけの恵まれた環境にあり「樹勢よく萌芽力が旺盛で成長も早い」そうなので実はもっと若いのかもしれません。
(樹齢1,000年のカツラにしては朽ちた感じがしない。朽ちて再生を繰り返すのがカツラの老木という印象が強い。)

カツラの巨樹というと幹周の数値だけは立派だけど単体の巨樹として見ると幹がスカスカで一個体としての塊感が薄いものも少なくありません。
しかしこのカツラはしっかり塊感がある。目の前に立つと「おおおっ…」と唸ってしまうほどの迫力。

幹周12.9mは単幹のカツラとしては日本第8位のサイズ。
しかしこれ、恐らく測定されたのは天然記念物指定された昭和48年だと思われるので、現在はもっと大きいのではないでしょうか。

神々しい…
ただただ天を仰ぎ、ぽかーんと口を開いてアホ面晒してしまいました。

それにしてもこの心地よさは何だ?と気になっていたのですが、何故だか周囲一帯に黄葉時のカツラの放つあの濃厚な焦げたメープル臭が漂っているのです。
これがもうヤバい!(語彙が貧弱になる)早朝の湿度を帯びた濃密な森の香りにこれまた濃厚なメープル臭。この相乗効果は本当にヤバいですよ?
残念ながら現在のWebには香りを載せる術がありませんのであの心地よさを伝えることが出来ませんが、是非とも実際に嗅いでいただきたい。
まさに天にも昇る心地と言いましょうか。すうっと大きく息を吸い込むとそのまま昇天してしまいそうな気持ちよさでした。
麻薬物質でも放出していたとしか思えない。

腕のように横へ伸びる大枝は小川をまたいで解説板近くまで達していました。
折れてしまうのではないかと心配になりますが、写真中央の細めのカツラの木に引っかかるように伸びているため支柱に支えられる形になっています。
しかし湿度が高い場所だからなのか着生植物で毛むくじゃらになっていて、ここだけ密林のような姿だ。

一見ひょろ長く見える大枝も近くで見るとインパクトがすごい。山奥に生えるトチノキのような迫力。
等間隔に伸びるシダ科の着生植物がまるでカツラを飾り付けるアクセサリーのように感じられました。
着生植物に栄養をたかられているような悲壮感は一切ありません。

根元から見上げると何というプレッシャーか。「神」として崇めたくなる気持ちも分かる。
このカツラと対峙していると自分という存在が如何にちっぽけなものかと思い知らされる気がします。

私には巨樹からパワーをもらうという感覚があまり無いし、パワースポットという感覚もよく分かりません。
どちらかと言えば己の矮小さを痛感し、何だよ自分のストレスも悩みもちっぽけなものじゃないかとスッキリして帰路につくことが多いです。
そしてカメラなんてちっぽけな文明の利器を携えてこの偉大な存在に立ち向かうのが面白い。勝ち目はないけど、やれるだけやってみる!みたいな。

しかしこれは…見惚れてしまいますね。
早朝の柔らかな光が射す姿が一番美しい。

「本命の巨樹は早朝にかぎる」
これは私が巨樹めぐりを続けるうちに悟った真理です。

木漏れ日を浴び、メープルの香りにつつまれる。
訪問から10日たった今でもじっと目を瞑るとあの感覚が甦るのです。
そう、思い出せなくなったらまた訪れたらいい。

眺める時間が心地いいカツラの巨樹を挙げるなら。
私は兵庫県の「別宮の大カツラ」とこの「落河内のカツラ」のツートップになりそうです。
来年は是非ともまだ蚊のいない新緑の時期にこのカツラを眺めてみたい。
とはいえ今回も、蚊のことなんて忘れてしまうくらい集中してカツラと向き合ってしまいましたが。

目の前を流れる小川。カツラの巨樹には美しい清流が不可欠です。
カツラ周辺の山中もふかふかの腐葉土で、いかにも栄養豊富な土壌が広がっていました。
健康に伸び伸びと生きる巨樹と出会えるとそれだけで嬉しい。

道路側から。
解説板の裏手を横切るように小川が流れており、木製の橋を渡ってカツラに近付くことができます。
写真の左手(道路の反対側)に駐車スペースあり。道幅も広めで転回するにも支障ありません。

この日は兵庫県のカツラの巨樹も2本回ったのですが、あの焦げたメープル臭を放っているのはこのカツラだけでした。
黄葉時以外にあの香りを放つ条件って一体何なんだろう。

大自然のごちそうのような香りが楽しめて大満足、もちろん巨樹としても大満足のカツラでした。

2023/7/3訪問
「落河内のカツラ」
鳥取県指定天然記念物
樹齢 推定1,000年
樹高 40m
幹回り 12.9m

鳥取県鳥取市河原町北村字倉房588

7件のコメント

  1. うぉー、流石の貫禄。
    驚くほどのデカさですね!
    そして瑞々しくて生命力が漲っている様子をヒシヒシと感じます。
    そばを流れる小川がそのパワーの源なのは間違いないでしょうけど、このカツラ周辺の雰囲気もいいですね。
    元から環境が良いのか、カツラが成長しているから環境が良くなったのか・・・。
    いずれにしてもそこに身を置きたいと思える何かが伝わってきますよ。
    着生植物の多さは≪石神神社のクスノキ≫を彷彿とさせ、あそこもすぐ横に川が流れていてなるほどなぁと思ったり。

    解説版の最後、『我が国の中でも、まれな巨樹である。』というくだりが控え目ながらも鳥取県の誇りが垣間見えますね!

  2. > RYO-JIさん
    もうシンプルに一言です。「ものすごいカツラでした!」
    兵庫のハチ高原あたりから鳥取県にかけての山道を走っていると、これなら良いカツラが育つよなあと納得してしまいます。
    明らかに山の緑が濃いと言いますか、間違いなく水の良さと土壌の肥沃さがこちらとはワンランク違うだろうなと。
    石上神社のクスノキも良かったですねえ。あの辺りの集落の感じも気に入っています。ロードバイクで突っ走りたい。

    「県下では最大級」みたいな言い回しならよく目にしますが、「我が国」というのがいいですよね 笑
    変にストーリーを盛ったりしない。もっとシンプルに、どうだ凄いカツラだろ!と言いたいのが伝わってきます。

  3. 本当に見事なカツラですね!
    北但馬から鳥取にかけては時々行っていたので、早速所在地を確かめましたよ。
    ちなみに私が持っている10年前の道路地図では、ここまで道路が通じていません(笑)

    このエリアの緑の美しさには私も一票投じたいです。
    私の場合は5月から6月にかけて、舞鶴自動車道~北近畿豊岡自動車道経由で入ることが多いのですが、
    中国道から舞鶴道に入ると、篠山辺りから明らかに緑の瑞々しさが変わってくるのを感じていました。
    交通量の違いもあるのでしょうが、美しい緑のおかげでストレスなしで運転できるのが嬉しいです。

  4. > れもんさん
    仰るように丹波、篠山あたりからスギの植林の割合が減り始めて山の緑がどんどん立体的になっていきますよね。
    渓谷や高原も多くて、ドライブするにもハイキングするにもとても気持ちのいいエリアだと思います。
    あの辺りで採れた野菜もまた美味しいんですよねえ。

    本当に素晴らしいカツラだったので、れもんさんもぜひ立ち寄ってみてください。
    鳥取の市街地からは少し逸れる形になりますが一見の価値あり!です。
    今なら道路が開通しているので到達難度も低いと思います 笑

  5. どうも、ボチボチ休んだり、ボチボチやるふりをしたりしている夏です。

    かつてTwitterか何か、どこの誰か知らぬ方が撮った写真で、「すごいカツラだ!」と思わず反応してしまったのがこのカツラだったように思い出しました。
    この水平に伸びた野心と野生味十二分な大枝がすごいインパクト。
    SNSのちっさいウィンドウでは、この大枝がすでに別の幹として更新しているように見えてしまったものですが、これは別の細いカツラだったのですね。
    まあでも、遺伝子的には同一かもしれないし、連理して同じ結果になるのも時間の問題のようですね、これは。

    同時に、「どこだ? あー、鳥取かあ……」とちょっとばかり絶望した記憶も蘇りました。
    遠い遠い地……いずれ気合いを入れて目指したい地です。

  6. > 狛さん
    巨樹記事をこっそり拝読していますが、今はのんびりまったりやりたいかなと思いコメントは控えておりました 笑
    いや、ホント分かりますよ。私もネット自体ほとんど見なかった時期がありますので…
    狛さんに巨樹の世界の魅力を教えてもらうまで、写真ももうどうでもいいや状態でろくに撮らない毎日でした。

    このカツラはインパクトありますよね。私も何かの本で見て絶対立ち寄らねば!とチェックしていました。
    巷の写真でよく見る迫力あるぶっとい腕のような大枝は、まさにその別の細いカツラに支えられている形でした。
    この脇役のカツラがなければとっくにへし折れていると思われるので、名脇役の称号を与えるべきでしょう。

    そう、遠く感じるかもしれませんね。
    しかしあの木の根橋まで行ってしまえば我々の感覚では目と鼻の先といってもいい位置なのですよ。(感覚がおかしい)
    別宮の大カツラからのカツララッシュはかなり見応えありますので、是非狛さんとRYO-JIさんにも見ていただきたいです。

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