秋田県鹿角市 大圓寺門杉

FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 20-35mm F4 R WR

東北旅の活動拠点だったのがこの秋田県鹿角市、大湯温泉郷。
どれどれ近くにめぼしい巨樹は…おお、徒歩圏内に発見しました。それがこの大圓寺門杉。

しかし現地の方に話を聞いてみると「大杉?うーん、あの倒れたやつか?」という答えが返ってくるではありませんか。
え、うそ。倒れたの?と大きなショックを受けましたが、記念に残った切り株だけでも見ておこうと。
そこでヨメ、次女を連れて参拝がてらやって来たところ「おいおい、あのでっかいの…間違いなくアレじゃないのか?」と、まさかの生存確認!

どこかの別の大杉と勘違いされていたのでしょうか。
心の準備が全くできてないし、こんなことなら一人で来るべきだったと戸惑いながら少しだけ立ち寄らせてもらうことにしました。

曹洞宗普門山大圓寺(だいえんじ)。
1536年に毛馬内(けまない)に建立された大圓寺が幾度かの移転の末1643年、現在の地に移設。
解説板ではお寺の略歴の他、巨樹についても少しだけ触れられています。

東北のお寺さんは関西圏のものと比べると造りが質実剛健と申しますか、華美な装飾が少なめで力強い建造物が多い印象があります。
山門の手前には広めの駐車スペースあり。道中の道もきれいに整備されていて車でのアクセスも全く問題ありません。

参道の脇が墓地になっており、目的の大圓寺門杉は墓地の端にひっそりと佇んでいました。
この手のストレートな巨杉は写真では迫力が伝わりにくいのが歯がゆいですが遠目にも「おおっ!」と声が漏れるほどの迫力があります。
実際叫びましたからね、私。というか、まさか健在だとは思わなかったものでビックリですよ。

ちょっと寄ってみましたが…やっぱり伝わらないですね 笑
幹周約9mの巨杉。これぞ巨樹、ザ・巨樹というだけの存在感があるのですが。うーん。

大圓寺が毛馬内から移ってくる以前からあると伝えられており、昔から「寺の門杉」として大切に扱われていたそうです。
門の対となるもう一本の大杉は残念ながら江戸時代中期に洪水のため流失してしまったとのこと。
樹高42m、幹周9m。これは単体のスギの巨樹としてもなかなかのサイズ。
もしもう一本の大杉も健在ならさぞ荘厳な立ち姿が眺められたのでしょう。

こちらにも解説板がありました。樹齢は伝承2,000年(推定500~600年)ということです。
無粋なことを申し上げると、やはり500~600年という数字が実際の樹齢に近いのではないかと思います。

墓地の奥が杉並木になっており、こちらが参道になっています。
かつて存在したといわれる対の大杉は現存する大杉のやや奥に生えていたではないか。妄想がはかどります。

樹高30mクラスはあろうかというスギが立ち並ぶ杉並木もなかなかの迫力。
車でアクセスしてすぐ山門をくぐるのではなく、是非とも門杉を眺めて杉並木を抜けてから山門へと向かっていただきたい。
いかにも東北、と感じるのはただ私が余所者だからなのか。
東北らしい静かな杉並木の参道を歩くと背筋がピンと伸びるような感覚があり、これを味わうことなく参拝してしまうのは勿体なく感じました。

厳めしい樹皮。
じっと眺めているとあまりの巨大さにスケール感が狂うようなあの感じ。
やはりストレートな一本杉には「これぞ巨樹だ!」と膝を打ちたくなる魅力がある。

雪深い地の巨杉らしく、荒々しい枝ぶりが見事でした。
同じ巨大な一本杉でも関西圏のものとは明らかに何かが違う気がするのです。
北陸で見るウラスギの荒々しさに似たものがあるような。

枯れ枝も目立ちますが樹勢はそこまで衰えていないのではないでしょうか。
秋田県指定天然記念物ながら、地元での知名度も高いとは言えない様子。
もう少しプッシュしてあげてもいいのでは?
大湯温泉から徒歩圏内ですからね。湯上がりの散歩には最適ではないかと。
(すぐ近くの「大湯こけし記念館」も気になって仕方ない。夕暮れ時で立ち寄る時間がなかったのです。)

まあ今回は切り株を眺めに…ということで家族も一緒であまり時間が取れず撮影にも集中できなかったので、次回は一人でのんびり眺めてみたいですね。
しかし倒れたやつ、とは一体何だったのか。江戸時代に倒れた対の大杉のことだったのか、それとも近場の別の巨樹が倒れてしまったのか。
謎は深まるばかりなのでまた立ち寄らないと。こけし記念館にも。

2023/8/2訪問
「大圓寺門杉」
秋田県指定天然記念物
樹齢 約500~600年(伝承2,000年)
樹高 42m
幹回り 9m

秋田県鹿角市十和田大湯字 大湯147

4件のコメント

  1. スギのサイズ感を表現するのに苦労する・・・巨樹を撮り始めた頃によくそう思って四苦八苦していたことを思い出しました。
    いや、もちろん今もうまくいかずにずっとアタフタしているんですが(笑)。
    それでも少しは慣れた筈。
    ただ樹高のある一本杉はシンプルなだけに簡単そうでかえって難しいのかなぁと思います。
    あと写真を見る目も肥えたので、これがいかに立派なスギかは容易に判断がつきます。
    周囲のスギ並木も見応えありそうですが、これだけ明らかに異質な存在で目を惹きますよ。

    そういえば東北の寺社は参拝したことがないので、to-fuさんがおっしゃる関西との違いを体感してみたい思いに駆られました。
    単純で勝手な想像ですが、見た目や感じる印象は県民性と被るのかなぁと。

    ムスメさんがしっかり協力してくれているのが微笑ましくていいですね!

  2. > RYO-JIさん
    化け物じみたウラスギなんかはどう撮ってもそれなりに見えてくれるんですけどねえ。
    単純にデカいだけの一本杉を撮影するのは未だに苦手です。本来の魅力の1%すら拾いきれません。
    まあ、巨樹は結局のところ黙って実物を見てくれ!というのが一番なので、他力本願でいいのかなと 笑
    (私も巨樹に興味を持つ前は狛さんに巨樹撮影にハマっているという話を聞いても「一体何が面白いんだろう」と思ってましたから…)

    ムスメはコンデジを持ってしっかり巨樹撮影を楽しんでいましたよ。
    長女はここに来る前にヨメにちょっと怒られたので不貞腐れて寝ていたため不在です 笑

  3. 倒れているはずの巨樹が立っていた! ……いやあ、現地でそんな風に聞いてしまうと背筋が寒くなりますが、これは真逆、滅多にない嬉しいサプライズでしたね。
    ズドーンと気持ちよくデカい、樹皮がささくれ立つようなタイプ。山五十川の玉杉や石山の大杉に似ている感じで、北国の巨杉の面持ちを確かに感じます。
    関東の大杉はもうちょっと影がないというか、平野特有の風にさらされてパサついているのかもしれませんね。

    こんな陸地のど真ん中にあって洪水に見舞われるとは……現在のような異常気象の年があったのですかね。
    勘違いの「倒れた」が再び韻を踏んだように思い返されてきます。長く立ち続けてほしいものです。
    今年は秋田「も」というか秋田「が」というか、ものすごく暑かったですけども、十和田湖も近いし、温泉もあるし。
    ぜひ夏休みに訪ねたいような巨樹ですね。

  4. > 狛さん
    行ってガッカリパターンは珍しくありませんが、このパターンは新しいですよね。パニックになりましたよ。
    山五十川の玉杉も石山の大杉もたしかに同じタイプの巨杉ですね。改めて狛さんの記事を読み返しましたが
    以前読んだときよりもリアルに巨樹の姿がイメージ出来ました。サイズ感も大圓寺門杉と似ていそうです。

    私も真っ先に洪水?ここが?と思いました。水害の被害に見舞われるような立地には見えなかったのですが…
    今年は秋田の山奥ですら夜もクーラーが必要になる暑さでした。(例年は長袖のシャツを羽織らないと震えるくらいには涼しい。)
    ここまで暑くなると虫を払って森の中を歩き回るより、温泉に浸かって道の駅でアイスクリームでも食べてる方が
    ずっと有意義な時間の使い方に思えますよ。来年こそは冷夏になるといいですねえ。

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