鳥取県鳥取市 倉田八幡宮の大イチョウ

FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 20-35mm F4 R WR

早朝に鳥取市の外れにある「落河内のカツラ」を堪能した後に向かったのがこちらの「倉田八幡宮の大イチョウ」。
アクセスしやすい市街地近くにある幹周10mクラスの国天の大イチョウ、ということでこの地域の巨樹の中では否応なしに目を引きます。
巨樹愛好家なら真っ先にチェックするであろうこのイチョウの巨樹。当然私も立ち寄ることにしました。

朝早く、まだしんとした静けさ漂う境内。早速社殿の真横に目的の大イチョウと思われるものが見える。
まずは心落ち着けて参拝を。苔の手入れが非常に丁寧に行き届いており、極力石畳の上を歩かねばという気分にさせられます。

先程国天の大イチョウと申し上げましたが、正しくは倉田八幡宮の社叢全体が国の天然記念物に指定されています。
海の近いエリアらしく元々はタブノキがほとんどを占めていたらしい。
解説文を読むかぎり原生林の学術的価値をもって天然記念物指定されているようで、イチョウに関してはむしろ蚊帳の外のような感がある。
しかし現在においては倉田八幡宮の木=大イチョウ、くらいのシンボル的存在になっていることは間違いないように思います。

株立ちのカツラのような立ち姿。
正直に言ってしまうと幹周10mクラスのイチョウ!と期待するほどの迫力は感じられませんでした。

樹齢1,000年の真偽はともかくとして戦乱の時代、戦火に巻き込まれたと伝えられています。
ひょっとするとその戦火で既に主幹は失われており当時ひこばえだった若木が成長したものが現在の姿なのかもしれません。

先人のログを拝読すると2,000年頃まではまだ柵もなく幹に直接触れることができたようですが、根回りを守るように柵が貼られていて近寄ることはできません。

地表に露出したたくさんの根が見事。
撮影が楽しく、似たようなカットを何枚も量産してしまいました。

賢明な皆様のことですから既に「何かおかしくないか?」と気付かれているかもしれません。
ええ、夏場(7月)のイチョウにしてはあまりに葉の付きが悪い。夏のイチョウ=樹形が分からないくらいにこんもり茂った樹冠、です。
10年前はおろか、ほんの数年前に訪れた方の写真を見てもずっと健康的な立ち姿をしています。

帰宅後このイチョウについて改めて調べてみたところ、ちょうど1年前の2022年6月27日に落雷の被害に遭っていたことが判明。
当時の産経新聞の記事で「雷直撃も不死身の大イチョウ 街を守った樹齢千年のご神木」として紹介されていました。

丸一日、幹や根から白煙を上げながらくすぶり続けたとのこと…
なんという驚異的な生命力。落雷の被害に遭ってなお悠然と立ち尽くす大イチョウに畏怖の念すら抱きます。
生き延びてくれてよかった。

本音を言うと現地では大量のやぶ蚊にたかられながらの撮影だったこともあり、あまり好印象ではなかった巨樹。
しかし落雷被害を知ってしまうとその姿が神々しく見えてくるから不思議です。

幹が朽ちてもひこばえが次世代の幹となり、一個体の生命の中で新陳代謝を繰り返すイチョウという樹種。
そのモンスター級の生命力に期待したいところです。

いつの日か以前のような樹勢を取り戻し、夏場のあの撮影者泣かせの幹を丸々埋め尽くすような樹冠を見せてほしい。
おいおい…茂りすぎててどこから撮ってもモリゾーかキッコロ(古い)にしか見えないぞ。なんて日を再び。

幹周10mの国指定天然記念物を期待して訪れるとがっかりされるかもしれません。
が、落雷の事実を知ってから眺めるとガラッと見方が変わる巨樹。
傷みに耐えてなお立ち誇るその偉大な生命力をたたえようではありませんか。

倉田八幡宮自体がとても心地よい空間で参拝するにもおすすめの神社でした。宮司さんも親切。
ただし夏場はやぶ蚊の猛攻があまりにも激しすぎるので虫除け必須でお願いします。
私は御朱印をいただいている間、ずっとペチンペチンと何十匹もの蚊を叩き落していました。
思い出しただけでかゆい。

2023/7/3訪問
「倉田八幡宮の大イチョウ」
国指定天然記念物(社叢全体)
樹齢 伝承1,000年
樹高 31m
幹周 9.7m

鳥取県鳥取市馬場299

4件のコメント

  1. 実は昨晩も青森の巨樹……といえばイチョウをリサーチがてら眺めていましたが、アレらとは全く異なる姿形に、ホントにイチョウなのか? とまず疑いました。
    「イチョウとして登録されているが、近年調査で実はカツラ」とか(いくらなんでもそれはない)。
    初見が側面のようでちょっと損をしているようなのは、もしかしたら神社の向き変更が影響しているのか。
    それでも、縦横比がイチョウのそれではなく、やっぱりカツラか、七本スギみたいな立ち姿。笑

    「火災の中イチョウが水を吹く」という伝説は、大空襲の時にもよく聞かれたようですよね。
    水気が多くて他がダメでも燃え残るということだと思いますが、焼け焦げでも八つ裂きでも生き続けるイチョウの異常なまでの生命力を例えた言葉のようでもありますね。

  2. > 狛さん
    いや、これ形だけ見たら完全に株立ちのカツラですよねえ 笑
    青森のイチョウといえばやはり日本一のアレが思い浮かびますが、個人的に気になっているのが十和田市の外れにある「法量のイチョウ」です。
    なにやら日本一気難しいイチョウと呼ばれているようで、黄葉の時期が全く読めない上に黄葉すらしない年もあるのだとか。
    サミットの開催地が青森市だとすると距離があるのが難ですが…日本一のブナ「森の神」もわりと近いので、もしお近くを通られましたら。

    大昔はきっとイチョウの大木が避雷針の役目も兼ねていたのでしょうねえ。
    各地に水吹き伝説が残されていますが非常食のギンナン、避雷針と実益を兼ねた御神木であっただろうことが想像できます。
    異常なまでの生命力を誇る彼らですから、ここからまた復活して誰もが唸る本当の幹周10mクラスへと成長してくれることを願います。

  3. 初見はむしろカツラにしか見えませんね(笑)。
    イチョウの巨樹としてインプットしている姿と全然違うので、かなり戸惑いました。
    が、落雷の被害による変化だったとは・・・。
    丸一日くすぶり続けてもなお尽きぬ命、凄いなんて言葉が安っぽく感じるくらいの強さ・パワーを感じます。
    人間だと落雷や火災にやられるとひとたまりもありませんからね。
    そんな災厄にも負けないイチョウ、きっとまたすこぶる元気な姿を取り戻してくれるでしょう!

  4. > RYO-JIさん
    今までこのタイプのイチョウを見なかったか思い返してみましたが全く思い浮かびませんでした。
    ある意味では唯一無二の巨樹と言えるのかもしれません。

    雷が落ちて、さらに燃え上がるわけですからね…逆に何で生きていられるの?と聞いてみたくなりますよ。
    現地で眺めていたかぎりでは焼け焦げた痕など見当たらなかったのが不思議です。ひょっとして既に剪定された?
    またここからひこばえを伸ばして新しい幹を生みながら、巨大カツラのような大イチョウになってくれたら面白いですね。

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