奈良県宇陀市 高井の千本杉

FUJIFILM X-Pro2 / XF 16-55mm F2.8 R LM WR / Film Simulation PROVIA
FUJIFILM X-T20 / XF 10-24mm F4 R OIS / Film Simulation PROVIA

八ツ房杉の興奮冷めやらぬまま向かったのがこの「高井の千本杉」。あちらももう、うわー!だとかすげえ!しか言葉が出てこなくなるような代物ではありましたが、この千本杉に至ってはもう何も言葉が出てこないくらいのとんでもない怪物でございました。このエリアの巨樹密度はどうなってるんだ。

何だか凄いところに来てしまったなあ…と思い始めた頃に現れるのがこの案内板。良かった、間違ってなかったぞと安心すると共に、これら巨樹の情報を分かりやすくまとめて下さっている先人たちには本当に頭が上がりません。カーナビもWebも無い時代なら紙の地図片手にウロウロ迷い続けていたことでしょう。

幹周25mという規格外の巨樹ではありますが上記のとおり合体樹であるため、レギュレーション違反で現行の巨樹ランキングからは除外されています。でもねえ、実物見ちゃうと本当にそんなもの取るに足らないことですよ。合体樹もここまで来ると樹木という枠から外れて完全に異形の物体と化しており、これを1本の巨樹として評価しようというのは無謀というものです。八ツ房杉と一緒でもう「考えるな、感じろ!」の世界なんですよね。芸術作品に点数付けちゃう?みたいな。

樹木保護のため根回りには近付けないようパイロンが設置されていますので、千本杉手前にある祠の置かれた壁にへばりつくような形で撮影していきます。幸い誰も通りかかることはありませんでしたが、その姿は完全にヤバイ奴と化していたはず。近隣の小学校に「不審者・杉のおっさん」として回状が回るくらい。(あの水色のパイロンは景観的にちょっと…あまりにも環境から浮きすぎていて、柵代わりにするにももう少し何とかならないものでしょうか。)

大抵の巨樹の場合、柵が置かれていたりして近付けないと口惜しくて仕方ありませんが、この巨樹の場合は不思議とそこまで悔しくもない。どうしてなんだろう?と考えてみると多分あまりに巨大すぎて、一歩引いたくらいの方がむしろその迫力をリアルに感じられるから…なんじゃないかなあという気がしました。

同じ根元で癒着したタイプのスギでも八ツ房杉は放射状にドバーっと溢れ出るように幹が成長していましたが、こちらは根元から素直に天を目指すようにして成長を続けています。というかむしろスギの有り様としてはこの千本杉の方が正しいように見え、もしかするとあの八ツ房杉は京都の南部に1本だけそびえ立つ北山杉「和束町の祇園杉」のように違った品種なのでは?なんて想像してしまいました。

それにしても、当時の人々は何を考えてこの井戸の周りに16本ものスギを植えることに至ったのでしょう。数百年後このような姿になることを想像し「これは将来見た奴が絶対驚くぞ…」なんて遊び半分で植えられたものなのか。それとも「俺も掘ったんだから俺にも植えさせろや」なんて村の男手たちが集まってきて大量の苗木が植えられたのか。(もしかすると20本…30本とぶっ刺された中で生き残ったのが16本だけだったのかも、なんて。)見た目のインパクトだけにとどまらず想像の余地が残されている、本当にロマンある巨樹だと思います。何か凄く奈良っぽい。

陳腐な表現ですが、まさに合体樹の王様。少なくとも自分はこれほどまで見事な杉を見るのは初めてのことです。(八ツ房杉も本当に素晴らしいスギだったけれど、どちらか1本だけ再訪できるとしたら自分は絶対この高井の千本杉を選んでしまうと思う。)

これ以上近づくことが出来ないため、どうしても似たような写真ばかりになってしまいますが…

ほんの少しだけでもあの迫力をお伝えできれば良いのだけれど。(自信は無いな。)

ちょっと周囲が茂りすぎていて撮影しにくかったので、再訪は涼しくなってからがいいかな。なんて考えてます。日帰りで通えるお気に入りの巨樹がまた一つ増えました。幸せなことです。

2024/4/4 再訪しました。最新の写真はこちらでご確認ください。

高井の千本杉
奈良県指定天然記念物
樹齢 約600年
樹高 30m
幹回り 25m

奈良県宇陀市榛原高井679

6件のコメント

  1. 初めまして。
    これは凄いですね!
    こちらへは偶然訪問しましたが良い情報が得られました。奈良行きの計画を立てます!

  2. > タケさん
    はじめまして。
    この巨樹の迫力が少しでも伝わったとしたら冥利に尽きます。
    絶対後悔はしない1本だと思いますので、ぜひ訪問してみて下さい!

  3. そして、おお、奈良が誇る(?)合体樹の王者じゃないですか!
    自分が10月に訪ねた時の写真を見返してみましたが、千杉白龍大神は相変わらずワンマンなのに鬱蒼とされておられるようで笑、安心しました。
    常に薄暗いわ、千本杉はフレームに全然収まらないわ、他の樹が邪魔してくるわで、写真撮り泣かせだった記憶が。
    この根元の強引すぎる癒着ぶりを見てしまうと、大抵の合体樹が単に「そばにまとめて植えました」というようにしか見えなくなってしまう……。
    それくらい、何らかの意思があって一本になったようにも感じてしまうんですね。
    とは思いつつ、現地ではあまりのアレな眺めに笑うしか無くなってしまう。
    明らかにやりすぎ。なのに、そういうモノとして成り立ってしまっている凄さ、スケールの巨大なおかしさ。
    巨樹というものの過剰性を象徴する一本(一本なのか?)だと思います。
    僕としても、訪ねられて本当にいい経験でした。

  4. > 狛さん
    この方はまさに合体樹のking of kings、絶対王者ですね。
    ホントこれだけ滅茶苦茶に合体させられているのに方向性が定まっているように見えるのは奇跡としか言いようがありません。それぞれが好き勝手主張しているのではなく、あくまでも一個体として成り立っているんですよね。このスギを植えた方は現在の姿を見たら何を思うのでしょう。出来るものなら見せてあげたいくらいです。

    しかし本当に撮影者泣かせでした。ISO1600でも手持ちが厳しいような薄暗さに、どんな角度からファインダーを覗き込んでも割って入ってくる樹々たち。これくらい難易度が高いと、やってやろうじゃねえかと逆に燃えますね。(燃えた結果大炎上して敗北したので、またリベンジしてきます…)

  5. やはりこちらも訪れていましたか!
    スゴイでしょ、奈良の巨樹も。
    まるで自分の手柄のように言いますけれど(笑)。
    私的には、八ツ房杉と共に奈良のツートップを張るおススメ巨樹ですのでto-fuさんにも見てもらえて嬉しいです。
    しかし、ご案内する巨樹が無くなってしまいましたので、その時までに山に入って未発見のスゴイの探してきます(笑)。

  6. > RYO-JIさん
    凄いどころか全国レベル、ワールドクラスの巨樹じゃないですか!
    とんでもないですよ。これは。一人でずっと「うわあ…奈良やべえなあ…」とかブツブツ言ってましたもん 笑
    ここから南方に向かうと僕にとって完全に未踏の地なので、その際はご案内よろしくお願い致します。

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