千葉県匝瑳市 天神の森のスダジイ

SONY α7II / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

シャーク・バーガーを食し英気を養った我々が向かったのが「天神の森のスダジイ」。同じ匝瑳市の「安久山の大シイの木」はそれはもう素晴らしいスダジイの巨樹でしたが、こちらもまた見応えのある素晴らしいシイなのでした。

と、いきなりスダジイの紹介から入ってしまいそうですが、やはりここの紹介は外せないでしょう。飯高寺(飯高壇林)。天正8年に創建された立正大学の前身で、日本最古の大学だとされています。天神の森はこの飯高壇林のすぐ近くなので、併せてこちらにも訪問することをおすすめします。正直ここは巨樹のついでに案内していただいたような形になるのですが、真夏の日中にもかかわらずひんやりとした風が吹いていて非常に気持ちの良い空間でした。

スギの巨木が立ち並び、中にはこれ巨樹クラスだよな…というものも見受けられます。巨大なスギに巨大な建造物。何だか巨人の里にでも迷い込んだのではないかと錯覚してしまいそう。さて、天神の森はこの飯高壇林を抜けた少し先。火照った体をクールダウンしたら早速向かうことにします。

そしてこのスダジイに至るわけです。恐らくこのスダジイが天神の森で最大のものですが、スダジイ巨樹群と呼んでも大袈裟ではないくらい立派なスダジイが何本も生息しています。鬱蒼とした森に潜む、異形とも言えるスダジイの巨樹たち。真夏の昼間、それも巨樹仲間の狛さんの案内があってこそ充分に堪能できましたが、どんよりした天候で更にソロ探訪なんて来た日には恐ろしくてさっさと逃げ出していたかもしれません。撮影中大量のやぶ蚊が1ヶ月ぶりの獲物だ!とばかりに集結してくるもので、僕は別の理由で逃げ出しそうでしたが 笑 いえ、冗談抜きに痒すぎて撮影に集中できなかったこともあって、真夏以外の時期にもう一度再訪してしっかり向き合いたいと思っています。

板状に発達した根。地質が固めなのでしょうか。ご覧のとおり森全体でスダジイと青竹が勢力争いをしているので、竹の根を掻き分ける、押しのけて突き進むためにはこの形状が有利なのかもしれません。どことなくサキシマスオウノキ的な趣があって、サイズこそ安久山の大シイの木には及ばないものの、それとはまた違った魅力があります。

見る角度によって異なる姿を見せてくれるスダジイは、やはり奥が深い。この巨樹もグルグルグルグルと一体何周したことか。自分が今目にしているのは写真でも絵画でもない、三次元の立体なんだよなと強く実感させられます。

青竹との勢力争いは根を使った地上戦だけに留まりません。枝葉を広げての空中戦も展開されていました。ご存知のとおり竹の生命力、推進力といったらそれはもう凄まじいもので、気に入らない隣人の庭に竹の根を這わせるという古来からの嫌がらせがあるとか無いとか言われているほど。しかしスダジイたちはそんな竹とも対等に渡り合うどころか、どちらかと言えば押し返しているくらいの印象を受けました。

日光を獲得せんがため、枝をグネグネとくねらせて制空権を握ります。少しでも隙間があればそちらへ向かい、抑える前に竹に取られてしまったらまた別の方へ。これはなかなかえげつない光景です。お陰様で我々の立つ地上は日中でも薄暗く、やぶ蚊の楽園と化しているわけですね。

以上に発達した板根。学術的に貴重なものだそうですが、希少価値抜きにしても良いものを見させてもらったなあと大変満足できるものでした。

本当、ろくに空が見えないんですよ…この天神の森さんは。天神の森なんて言うと何やらご利益がありそうにも聞こえますが、ここは敢えて「原始の森」だとか「帰らずの森」だとか、そっちの呼び名を推したいくらいです。こちらは我々が入ってきた方から見て奥側ですが、先ほどの手前側は青竹軍優勢、こちら側はスダジイの軍勢が圧倒しているように見えます。

いや本当に紹介し始めるとキリがないので止めておきますけれど、あの板根のスダジイ以外にも個性的なスダジイが揃ってるんですよ。どれもこれもまさに野生のイキモノといった面構えで、御神木として丁重に扱われる巨樹たちとはまた違った迫力があります。

さて、天神の森を抜けました。日差しが眩しい。
今まであそこにいたんだよな…と考えると少しゾッとするような、ああ、夕方でなくて良かったなんて不思議な安心感があります。決してもう行きたくないとかそういう事ではなくて、このちょっと「陰」寄りの雰囲気こそスダジイ本来の魅力であるようにも思うんですよね。如何にもスダジイらしい素晴らしい巨樹でした。

2018/8/11訪問
「天神の森のスダジイ」
樹齢 不明
樹高 約20m
幹周り 5.3m

4件のコメント

  1. 青竹軍vsスタジイ軍・・・興味深い合戦ですね!
    純粋に生き延びるがための自然の闘いなのでしょう。
    だからこそ、その場にいると感じるものがありそうです。
    生活環境に順応していく姿は稀に異常なものを生み出すということを
    巨樹巡りではたまに見かけますが、この板根もその一種ですね。
    熾烈な闘いであろうことが想像できます。
    そんな戦場、「帰らずの森」という名称がピッタリきますね。
    そしてやっぱりスタジイはちょっと不気味だなぁと改めて思ってしまいました(汗)。
    見たい気持ちはあるけれど、一人では行けないと思います、ここは・・・。

  2. 僕も訪問後に写真を見ていてじわじわとここの凄さが実感できてきたんですが、これだけ鬱蒼としたレベルで竹林とやりあうことができるというのは、樹種的にもなかなかないんじゃないかなと。
    スダジイという樹種の凄さ、強烈さが最近になって色々と実感されてきています。
    安久山のシイに比べればここは無名に近く、しかしせっかくto-fuさんが来てくれるのだからボリュームが欲しい。
    地元をアッピールしたいという田舎者の見栄で追加したようなポイントだったので、僕的に衝撃は倍増でした。
    躍動感ある姿を撮影するのはかなり面白かったのですが、こうして改めて風景を見渡すと、本当、なんとなく行くべきところではない感じがしますね。
    この枝のウネウネ……天蓋のような支配感……僕がおののいて写っている一枚なんかも、水木しげるセンセイの絵で描いて欲しいような妖異を感じる。
    勝手に「帰らずの森」の看板を立ててしまいたい。それこそ言い得て妙、ふさわしい森です。笑

    もう2週間もすると今年も終わりになってしまうわけですが、to-fuさん、RYO-JIさんの「今年のベスト巨樹」はどれだったでしょうか?
    と、聞いてみたい。笑
    自分でも振り返って、できれば記事にしてみようと思いました。

  3. > RYO-JIさん
    人里のすぐ側なんですが、階段を登って山の中に脚を踏み入れると手付かずの自然林のようで雰囲気ありましたよ。
    まともな神経をした人間は絶対にやって来ないような真夏だったのも良かったかもしれません 笑
    本当にスダジイはこのちょっと不気味な感じが真骨頂だと思いますね。
    もちろんスダジイ族の中にもオープンでフランクな奴らもいますし彼らは彼らで面白いんですが、こういう来るなら誰かと一緒に来たいなって思えるおどろおどろしさあってこそ、彼らの良さも引き立っているような気がします。

  4. > 狛さん
    僕の場合今までに高レベルなシイの巨樹を回っていなかったこともあって、平山さんのところとこの天神の森はとにかく強烈に印象に残りました。ボリューム稼ぎどころか近畿圏に生えていたら覇権を狙えるくらいのシイでしたよ。(ここを訪問するとシャークに寄れるのもまた良い。)

    今年のベスト巨樹…いざ考え始めると結構難しいですね。
    10本くらいノミネートするところまではわりと簡単に行けるんですけど。
    うん、楽しそうですね。僕も考えをまとめて記事にしてみたいと思います。

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