岐阜県郡上市 石徹白のスギ(石徹白の大杉) 再訪

SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

夏に初めて訪れて以来、頭の片隅にはずっとこの「石徹白のスギ」がありました。今日は時間があるな…石徹白に行きたい。明日は予定が空きそうだぞ…石徹白に行こうか。誇張なしにそんなことばかり考えていたような気がします。しかし、とにかく遠い。片道ゆうに5時間はかかりますから。いざ行こうと思うと当然それなりの覚悟が必要なわけです。それでも今回今年最後の巨樹巡り、それをどこで締めようかと考えると、それはもうこの石徹白の他に考えられなかったんですよね。まあ結果的に我慢できず、その後和歌山にも行ってしまいましたが。

相変わらずの前乗り車中泊。ここにはちょっと書けないようなトラブルにも見舞われながら、他人様の助力もあって何とかこの大杉に辿り着くことが出来ました。もしかするとあの方は石徹白のスギが遣わした巨樹の神様の使いだったのかもしれません。(んなわけない。)

それにしてもこの案内板。私のような軟弱シティ・ボーイからすると、とにかく「すげえところに来ちまったなあ感」で胸がいっぱいになります。しかし白山へ至る方々にとってはここはまだスタート地点に過ぎないんですよね…いやはや想像を絶する世界でございます。聖地白山。そのお膝元の石徹白に来るだけでも、誰しもがただならぬ厳正な空気を感じるのではないでしょうか。特定の何かを信仰しない自分のような人間にも当然それは感じられました。

夜明けと共に行動を開始し、悪夢がそのまま続いているかのような階段を登りきります。前回はここに外来植物の種子を持ち込ませないために靴底を拭かせる「玄関マット」のようなものが設置されていましたが、どうやら台風で吹き飛ばされてしまったみたいです。それにしてもここに来るのは二度目ですが、ああ…この緊張感は本当に懐かしい。高鳴る鼓動を抑え、逸る気持ちをここで一旦落ち着けます。待てよ、落ち着け。もう目の前なんだ。ここから先は呼吸を整えてからでないと。相手は一本のスギの木だろ?と思われるかもしれませんが、本当にそんな気持ちになるんですよね。

そしてご対面。手前側に立ってしまうとスケール感が分かりにくいかと思いますので、大杉の真横に並んでみました。ふふふ、1枚目の写真から想像した姿よりずっと大きかったのではありませんか?樹齢1,800年は伊達じゃない。(個人的には2,000年以上…もっと行ってると思う。)デカいんですよ、本当に。

夏に見られたたくさんの着生植物は葉を落とし、着飾った衣を脱いだようにも見えて少し寂しそうに感じました。いえ、養分を吸い取る奴らは本来この大杉の敵とも言える存在なわけですが、何となく話し相手を失ってしまったかのようで寂しそうに見えるのです。「やあ、よく来たねえ。」そんな風に語りかけてくるようにも感じました。

それでも夏と比べると、むしろスギとしての生命感が際立っているように感じます。あれ?こんなに葉っぱ多かった?今回まず初見で感じたことがそれです。幹はとうに白骨化し、遠目に見れば朽ちてしまっているようにも見える。しかしやっぱり生きている巨樹なんだよなと実感させられます。

うん、この根本には蔦が張り付いていたよな。真夏のあの姿を思い出して懐かしい気持ちになります。樹皮なんて簡単にポロポロ崩れてしまいそうにも見えますが、よくあの台風を凌いだものです。そこはまあ2,000年近く生きてきたこのお方。災害を受け流す術にかけては実はその辺の巨樹より長けているのかもしれません。

夏は蔦に視線を取られてしまって気付きませんでしたが、根本の内部は少し空洞化してるのかもしれません。そりゃあそうですよね。人間だって植物だって、長く生きていればそれなりにガタが来て当たり前です。

裏側に回ってみました。こちらの方が日当たりが良いのか、より強い生命感を感じます。周囲をのんびり歩きながら大杉を眺める。もちろん夜明け直後の早朝ですから、数km圏内に人間などいようはずもありません。誰もいないのをいいことに言葉を口に出して、文字通りの対話を楽しむことが出来ました。猿の群れに囲まれて威嚇されるという人生初の体験をしてちょっと死を覚悟したりもしましたが、これだから早朝の訪問はやめられません。

自然って凄いですよね。こんな僅かな枝葉から、この巨躯を支えるだけの日光を取り入れているのですから。やはり人間同様、巨樹も長く生きるとたくさんのものを食べることが難しくなるのかもしれません。前回も感じたことですが僅かな栄養を静かにゆっくりと咀嚼するかのように生き続ける大杉は既にスギという存在を超越してしまっているようであり、まるで仙人や神様が巨樹という形をとってこの場に存在しているのではないか…そんな風に思えて来るのです。

さようなら。また来ます。深々とおじぎをして、次の巨樹へと向かうことにします。
出来れば真冬の間に雪化粧された大杉に会いに来たいものですが、やっぱり冬期通行止なんでしょうかね。一応来られないか調べてみようとは思っていますが。というかこの石徹白エリア。年中どこかの道が崩落して通行止になっている印象です。ろくな下調べもせずに2回連続で相対することが出来た自分は実は幸せ者なのかもしれません。次回以降は下調べくらいしっかりしてから来ないとな。

2018/8/9 初回訪問

2018/11/30訪問
「石徹白(いとしろ)のスギ」

国指定特別天然記念物・新日本名木100選
樹齢 約1,800年
樹高 約25m
幹周り 約13m

5件のコメント

  1. あっ、また、すみません(汗)。

    この石徹白のスギ、いま一番見に行きたい巨樹かもしれません。
    日本を代表するような巨樹だと認識していますが、それでも実際目にすると想像を簡単に超えてきそうです。

    ただやはり遠いですよねぇ。
    片道5時間はハードルが高いです。
    今年は無理でしたが、来年こそは行ってみたいなぁ。

  2. > RYO-JIさん
    石徹白のスギは…本当に良いですよ。石徹白の秘境感も相まって、あれはちょっと卑怯だと思います。
    そう考えたら密林を10時間も歩かなきゃいけない縄文杉って実際見たら泣くほど感動するんでしょうねえ。

    ただそう、遠いんです。これ以上遠いと逆に泊まり前提に考えるから気が楽なんですが、この片道4~5時間くらいの場所が一番クセモノに思えます。頑張れば日帰りできそうだし…でも無理だよなあ、なんて考えているうちに面倒臭くなってまた次回に…と、僕は流れてしまいがちです。

    真冬の訪問について調べてみましたが…
    http://www.ns-net.npo-jp.net/2013itosiro/itosironatureski131227.htm

    ↑こちらの「石徹白ネイチャースキー」の写真を見る限り、絶対ムリですねこれ 笑
    最早スタッドレスとかヨンクとかチェーンとかいう次元ではなくて笑っちゃいました。

  3. 掲載を楽しみに待っていました。笑
    秋も過ぎ去り、着生植物たちが落ち着いて、大杉のフォルムがはっきりわかるようになってますね。
    なるほど、こうなってたのか……としげしげ観察しました。
    やっぱりこれ、もともとは想像を絶するくらい超巨大な杉だったんだろうなあと思います。
    樹高も60メートルくらいあったんじゃないでしょうか。
    to-fuさんとの2ショット、ポーズがなんとなく似てますが……すげえデカいな、やっぱり。笑
    それが折れ、枝を復旧するけど、また折れ……と途方もなく繰り返してきた。
    その歴史が尋常ならざるものだったためにその姿まで異形化し、目から気配から、我々は多くのものを受け取ってしまうのでしょうね。
    再訪して相対した時の感じを想像すると、ああ……やはり行ってしまいたくなりますね。

    冬はこんなですか! キャタピラでも無理なんじゃないですか!?
    こんな冬を1800回耐えてきたって……やっぱりこの方はすげえわ……。

  4. > 狛さん
    これが本来の姿のようですね。本当に幹が折れてなかったらと思うと残念で仕方ありません。
    もしも樹高が倍くらいあったなら…ああ、想像しただけで頭がクラクラしてきますよ 笑
    それにしても満足して帰ってきたはずなのに、既に行きたくて堪らないんですよねえ。
    福井方面、岐阜方面どちらも郡上市近辺の巨樹は結構回ってしまったので、次回はむしろ石徹白で一日過ごすくらいにスローな気持ちで臨んでみたいかもしれません。

    冬ヤバいっすよねこれ 笑
    例の大杉への階段なんか完全に埋まってますし。そりゃそうだよなあ。
    岐阜県側から回り込めば宿泊施設もある白山中居神社までなら行けるかもしれませんが、それ以降は車を置いてバックカントリースキーでもない限り進めそうもありませんね。ええ、僕なんか即路肩から川に落ちてお陀仏ですよ。

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