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石川県白山市 太田の子トチノキ


SONY α7RIII / SONY FE 24mm F1.4 GM SEL24F14GM

昨年11月後半に訪れたものの完全に落葉していたため敢えて記事にしなかった、日本最大のトチノキの巨樹「太田の大トチノキ」。やはりどうせ紹介するならベストな状態で紹介したいし、そんなことよりも私だって見に行くならベストな状態を見てみたいに決まっています。福井県勝山市より国道157号を北上。悪名高い「酷道157号」ですが、その酷道の酷道たる部分は大野市以南の岐阜県側なのでご安心を。途中で東に折れ、未舗装の林道を突き進んだ先にそのトチノキが待っています。

一応普通の乗用車でトチノキの目の前までアクセス可能ですが路面は凹凸だらけ(この写真のような平面に均された箇所なんて本当にごく一部しかありません)。私も凸凹で一度車体の底を擦りましたが、車を絶対に傷つけたくない、それ以前に運転に自信がないという方は距離にして2~3km程度の一本道なので、林道の入口に駐車して徒歩で来られることをオススメします。


さて、駐車スペースから既に「大トチノキ」の姿がチラチラと見えてしまっているわけですが、ここはやはり興奮を鎮めるためにもその先にある「子トチノキ」から見ておくべきではあるまいか。敢えて大トチノキ方面には目をくれないようにし、案内図横の自称遊歩道を眺めます。


………。
いや、決意が鈍りますよね?
「遊歩道とは何か?」これは哲学的な問題です。これは遊歩道と呼べる代物なのだろうか。そもそも遊歩道の定義とは何なんだろう。
きっと女性の連れがいたらこう言うことでしょう。「私はここで待ってる。一人で行ってきて。」と。
まあ私は女性でも何でもない、ただのしがないオッサンなのでもちろん突入するわけですが。


まあ僅か100mの遊歩道?ですから、覚悟さえ決めてしまえばすぐ到着です。おお、あれは凄い。来て良かった。ハッキリ言ってしまいますが、個人的には登場シーンの感動だけで語るなら「大トチノキ」の比ではありませんでしたね。こちらの方がずっとインパクトがありました。


そこら中にトゲトゲの野ばらが生え、大量のアブが飛び交う昆虫地獄でしたが今回は興奮が勝りました。何としてでもあのトチと一緒に写真が撮りたい!いや、これ、きっと現地を知る人にしか伝わらないだろうと思うんですが、足場は本当に私の足元だけにしか無いんですよ。右側は急斜面、後ろ側は数メートルの崖の下に小さな沢、という立地です。力いっぱい引っ張っても抜けない雑草を辿りつつ、左手から無理やり渡ってきました。


えーと、足元です。分かりますかね?まあ落ちたらただでは済まないだろうということだけは伝わるのではないかと。改めて写真を見返していると己のアホさ加減にゾッとするより他ないんですが、このトチと対峙した時の興奮といったらそれはもう凄まじかったんですよ。無茶をしてでもツーショットが撮りたかった!それくらい良い巨樹だということが少しでも伝われば嬉しいです。

でも決して真似しないでくださいね?


間近で見るトチの巨樹は圧巻。これですよ、この樹皮。トチノキの凄みは何よりその樹皮にある、と言っても過言ではないのではないでしょうか。


あれ?先程の写真左手から大きな根を跨いで先へ進むと、簡単に裏手に回れてしまいました。しかもこっちは足場が良い。先程決して真似しないでください、と書いたのはこのためです。無謀なチャレンジをしなくても、裏手に回れば好きなだけトチに触れて、ツーショット写真だろうと集合写真だろうと撮れますから。(ただしこの撮影者、つまり三脚側は非常に深い藪が覆い茂っていたため、これ以上は下がって撮影できませんでした。)


根本には洞穴が。遠目には分かりませんが内部は空洞化が進んでいるのかもしれません。トチの大物は大抵のものが空洞化していますから、これはもう宿命のようなものです。


遊歩道側からはあまり葉が確認できなかったので少し頼りない印象を受けましたが、こちら側に偏ってたくさんの葉を付けていました。


まるで岩のような質感の樹皮。「橡(トチ)」の名のとおり象の足のようにも見える。


まさに野生。絡みついた蔦など物ともしない風格を感じます。どうしても国天の「大トチノキ」ばかりが注目され、その名のとおりおざなりな扱いを受けることになった「子トチノキ」。決して弱らせまいと人間に過干渉された大トチノキと、ありのままの姿で生き続ける子トチノキ。どちらがより素晴らしい巨樹だと断定することは難しい。きっと子トチノキの方が好きだな…という方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。(このトチが無指定だなんて信じられない。どう見ても県天クラスですよねえ…)私としても甲乙つけがたいものでした。


雪深い山奥で生きるこのトチノキは時折やって来る物好きな人間に対して、一体何を想っているのか。


まさかここまでの藪になっているとは想像もしなかった軽装の私は、大量のアブに集られた結果何箇所も吸血される羽目になりました。そんなことどうでもよくなるくらいに素晴らしい巨樹でしたが。先人のログを拝見すると、大トチノキだけ見て立ち去ったという方も多かったんです。まあ大物を見ちゃうと満足してしまうだろうし、気持ちも分からなくはありませんけれど。ただ私としては惜しい!、勿体ない!、バカヤロウ!(言い過ぎ)と言いたい。

実はこの巨樹、日本最大のトチノキのすぐ近くにありながら、発見されたのはつい近年のことらしいんですね。もし今後弱るようなことがあれば樹木医の治療を受けることにもなるでしょう。良くも悪くも。現時点では人の手が加わった様子もなく、野生という言葉を体現するかのようなその迫力は筆舌に尽くしがたいものがありました。大トチノキと併せて、ぜひこちらも御覧下さい。

2019/6/23訪問
「太田の子トチノキ」
樹齢 不明
樹高 19m
幹周り 8.15m

コメント:4

RYO-JI 19-07-23 (Tue) 0:28

藪にアブですか・・・軟弱な田舎者の私は一人だと絶対に行くのを躊躇してしまいそうです。
しかし、この素晴らしい姿を拝見できるのなら行く価値は充分にある、というか行かないと絶対に損ですね。
とは言えやっぱり藪もアブも嫌なので、葉をつけた頃か落葉前を狙って行こうと思いました(笑)。
そして肝心のトチノキですが、見に来るものを拒むような野性味を感じますね。
近年まで知られていなかったというのも当然と思えるような孤高の存在感というか。
出現シーンを想像するだけで心拍数が上がってしまいますよ(笑)。
あと、これは例の広角ズームレンズが手元にきたら再訪したくなるような気も・・・。

to-fu 19-07-23 (Tue) 16:31

> RYO-JIさん
もしここが近所だったら突入せずに帰っていたかもしれませんね。
流石に石川ともなるとなかなか行ける場所ではないので、後悔の無いよう突撃しましたが。
アブは刺されたときは痛くも痒くもないのが厄介です。翌日からめちゃくちゃ痒いんですよ 笑

太田のトチノキコンビは是非お二人にも見ていただきたい巨樹です。
日本最大とかそんな装飾要らないよってくらい素晴らしいトチでした。
あの辺りって特別行きにくいエリアでもないんですけど、一年の半分くらい雪でアクセス不可なのでなかなかタイミングが合わないんですよね。訪問される際は広角ズームを持って案内しますよ!(自分も行きたいだけ 笑)

19-07-28 (Sun) 15:28

これは……僕が突撃してアワアワしながら、そのままのテンションで変な写真を撮って帰るのにバッチリなシチュエーションじゃないですか。
まさにトチの巨樹の醍醐味を示してくれていると思い、ワクワクが止まりませんね。笑

子トチという名前がふさわしくない、十分どっしりした巨樹ですし、もちろん大きい方のトチと合わせて、是非見に行きたいですね。
というか、ほんと、近々計画を立てて見に行こうと思います。
トチの巨樹も、石川の他の巨樹も、ほんと通好みな魅力にあふれていると思います。
この子トチだけでも行く価値があると言えるのではないでしょうか。

埼玉の山中で会ったおっさんが、「こういうとこへは、棒を持っていくんだよ」って言ってましたが、まさに……
行く際には、防御力高めな服装と棒を所持して、ぜひ感動を勝ち取りたいですね。

to-fu 19-07-29 (Mon) 5:12

> 狛さん
このトチノキはきっと狛さん好みだと思いますよ。ええ、もちろんシチュエーション含めて。
やはり山奥にひっそりと立っていてこそのトチノキの巨樹ではないかと思います。

幹周8mで「子」トチノキだなんて贅沢な話ですよね。
石川は狛さんが以前訪問されている能登方面含めて私もまだまだ未開の地なので、少しずつ開拓を進めていくつもりです。

棒とかナタとか…要りますよねえ。ただでさえヘビーデューティな積荷なところにそんなものが加わると
これはもう職質が怖くて仕方ありませんね。これは何に使うんだ?藪漕ぎですよ、見たら分かるでしょ、みたいな。
ああ、あとはそう。汚れても気にならない作業ズボンが欲しいなと思いました。現場用の寅壱とかそういうの。

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