- 2019-10-14 (Mon) 16:59
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | スギ | 巨木たち（地域別） | 巨木たち（樹種別） | 福井県
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
池田町の「稲荷の大杉」を訪問し、少し離れた農道でコーヒーを淹れて一服。思えば車中泊からの夜明け直後に石川県を出発して巨樹を回りっぱなしだったわけですから流石にそろそろ疲労も溜まってきました。そろそろ敦賀に確保したホテルに向かおうということで、途中に寄れそうな神社や観光スポットはないかなとGoogleMapを確認してみると、どうもすぐ近くにスギの巨樹があるという。よし、そこに寄って気持ちよく一日を締めよう。巨樹に始まり巨樹に終わる、やはりそれでこそ巨樹巡りと呼べる一日になるのではあるまいか。
「稲荷の大杉」の八幡神社から約1km。余裕の徒歩圏内に目的地である日野宮神社らしき鳥居を発見しました。あれ？巨樹はどこだろう。そこまで大きくもなさそうな神社ですから、もうとっくにズドンと突き抜ける巨大な姿が見えていてもおかしくないのですが。そう訝しく思いながらまずは参拝を済ませますが、やはりそれらしいスギは見当たりません。
まあ冒頭に写真を載せてしまったので、賢明な皆様におかれましてはとっくにソレ、そこに見えるソレが目的の巨樹だろうと分かっているのではないかと思います。でもこれ、いざ現地に立って背景の山々を背に大パノラマで眺めると全く目立たないんですね。正直なところこの時点で既にテンションは地に墜ちてしまった…と言ってしまって間違いありません。
実はスギを見てあれだ！と気付けたわけではないんですよ。根本に辛うじて案内板らしきものが見えたものですから、ん？案内板があるぞ………（3テンポくらい遅れて）まさかあれが「常安の逆杉」か！といった具合です。かつては幹周9.15m、樹高36mの立派なスギの合体樹だったそうです。しかし落雷のため双幹の片方が焼かれてしまい、止むを得ず伐採。残った幹が現在も常安の逆杉として存命しています。
こちらが現在の姿。2本のスギからなる合体樹だったことが窺えます。（一番左側、右手前のものも幹のように見えますが、こちらはあくまでも幹から生じる枝です。）メインの1本が既に伐採され、少し離れて眺めてしまうと、ちょっと背の高い大きめのスギが立っているな…としか思えないんですよね。
逆杉（さかすぎ）の名のとおり、枝が地面を目指すように本来とは逆向きに成長しています。これはまあウラスギと呼ばれる北陸ではそう珍しくもないスギの特徴ではあるのですが、周辺には植林されたいわゆる普通のオモテスギばかりが並んでいるものですからそれなりに目立つ姿ではあります。写真右下の枝はもう少しで地面に接しようかというところまで成長しているのがお分かりいただけるかと思います。
この巨樹に関して言えることは、とにかく失った幹の存在が大きすぎる…という一言に尽きます。全体の幹周が9.1m。これは実際にこの目で見て、まあそんなものだろうなという印象でした。双幹の幹周はそれぞれが4.5m前後。現在の姿に幹周4.5mクラスのスギが加わっていたら…少なくとも地域の代表格たる1本になっていたことは間違いないでしょう。
私のテンションがだだ下がりだった原因がもう一つありまして…個人的な感想ですが、この巨樹が地域の方々に大切にされているように全く感じられなかったことです。周辺は雑草が伸び放題、幹にはツタが茂り放題、案内板にもコケがびっしり…やはり地元でも終わってしまった巨樹という扱いなのでしょうか。これでもまだ町の天然記念物として指定されているのですから、もう少し何とかしてあげてもいいのではないか…余所者が偉そうに！と言われてしまうかもしれませんが、私はこの巨樹を見ていて酷く悲しい気持ちになりました。
この残存する根元を見る限りポテンシャルは相当なものなんですよね。ベストな状態で会ってみたかったけれど、こればかりは仕方ありません。
懸命に枝葉を伸ばす姿にはまだまだ強い生命力がみなぎっていました。
こうして見ると…うーん、やっぱりちょっと大きめの普通のスギにしか見えないかなあ。私も随分と酷いことばかり言ってるような気がしますが、これが素直な感想なので。
池田町は高速のICからも遠く少し不便な立地にあるのですが…もし急がずに西の国道8号線方面に抜けられるなら、県道203号線（池田南条線）がオススメです。ノーガードレール、落ちたら即死の狭路が続くので運転に自信のない方や雨天・夜間の走行は全くオススメしませんが、ここの展望がまた素晴らしいんです。疲れも吹っ飛びますよ。
この「常安の逆杉」ですが、個人的にはヒューマンスケール撮影で使った三脚のことをすっかり忘れたまま出発してしまい、回収のために約60km離れた敦賀のホテルから疲労困憊状態で往復した思い出が強烈すぎて…なのでまあ、巨樹のことはあまり印象に残ってないんです 笑 疲れてるときは無理せず撤退しろ、というのがこの地で得た教訓ですね。
2019/6/23訪問
「常安の逆杉」
樹齢 推定600年
樹高 約36m
幹周り 9.15m（半身を焼失）
福井県今立郡池田町常安1-2
コメント:4
- RYO-JI 19-10-14 (Mon) 21:18
-
あぁ、あの三脚を取りに戻った事件の現場となった巨樹でしたか！
その事件の記事はよく覚えています（笑）。
冒頭の写真でアレ？と思うくらい巨樹感がないと思ったんですが、なるほどそういうことでしたか。
この趣味を続けていると、悲しいながらこういう出会いもあるでしょうね。
いくら長命の巨樹とはいえ、当然相手は生き物ですし、天災にやられてしまうのは人間と一緒ですし。
逆杉にして双頭の姿でその幹周は相当見応えがあったと思いますが、いや、やはり残念としか言いようがありません。 - to-fu 19-10-16 (Wed) 16:37
-
> RYO-JIさん
そうなんです、あの三脚事件の現場なんですよ 笑
巨樹があまり私の琴線に触れなかったこともあって敦賀から戻るのは精神的にも結構やられました。
この巨樹についてはワタクシ、さっさと天然記念物指定をやめるべきだと思いますね。
いかに傷つこうとも所有者や地域の方々がそのモノを生かそうと懸命に努力されているのであれば安易に天然記念物指定を
解除すべきではないと考えていますが、常安の大杉は誰かの愛情を受けて生きているように感じられませんでした。
天然記念物と聞いて見に来る人がいるかもしれない。きっと見たらガッカリするでしょう。
訪問される方に対して、何よりもこのスギに対して失礼な話です。この荒れ具合はちょっとショックでした。 - 狛 19-10-17 (Thu) 9:08
-
三脚を！ よく覚えています！笑
でもほんとあのカーボン三脚は軽量で使い勝手が良く、今自分が同じ状況に陥ったとしたら、僕も取りに戻りますね。
いまさらですが、レビューを掲載してくださってありがとうございます。
巨樹に始まり巨樹に終わる……もいいですねえ。うずうずしてくるフレーズ。笑
一方で、この杉の現在の姿には、巨樹の終焉を見るような感がありますね。
終焉と言っても、天然記念物として尊敬されたまま落雷や台風などで派手に散るものもあれば、この杉のように徐々に忘れられていくものもあるのだなと……。
僕が撮った茨城の巨樹でいえば「入四間宿の五本杉」を思い出しました。
かつての個体としての記憶を霧散させつつ、風景の一部として朽ちていこうとしている。
もちろん管理の手をかけられないという実際はあるのかもしれませんが、そうですね、こうなってしまっては天然記念物は解除してあげるのが杉にとっても楽なように思えます。
文化「財」でありつつ生き物であるという、難しい立場にある巨樹という存在を考えさせられる光景ですね。 - to-fu 19-10-17 (Thu) 16:54
-
> 狛さん
当時は疲れていたので諦めようか真剣に悩みましたが、仰るように今はとにかく戻って良かった！としか思えません。
全く不満がありませんし、同じのを買い直すにしても随分愛着が湧いてしまったので、どうしようもないくらいに
ガタガタになるまでは使い続けてあげたいです。
「入四間宿の五本杉」を調べてみましたが「常安の大杉」と非常によく似ていますね。
あの三本杉のすぐ近くでしたか。あの常陸太田より先となるとかなり険しそうなイメージですが、うん。行ってみたいなあ…
高齢化が進む日本のイナカでは天然記念物なんて、余程の愛着がない限り邪魔なものでしかないのかもしれません。
指定するだけしておいて、手入れするにも許可を取らなきゃいけないわ費用は出してくれないわ、これでは無下に扱われて
仕方ないのかもしれない…と思う面もあります。天然記念物指定するなら管理にまつわる最低限の費用くらい自治体が
予算として計上してもいいのではないですかねえ。自宅が重文に指定された方の話を聞いても随分面倒くさいみたいですし、
文化財というものの扱いに関して国はもっと真剣に考える必要があると思います。
トラックバック:0
- このエントリーのトラックバックURL
- https://withphotograph.com/wp-trackback.php?p=11134
- Listed below are links to weblogs that reference
- 福井県今立郡池田町 常安の逆杉 from with photograph