香川県さぬき市 富田神社の大楠

SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

いつもどおり朝早く起床し、独身時代何度も飲み…いえ、撮り歩いた懐かしい高松市街を車で抜けて国道11号線を東へ。津田の松原の交差点から内陸側へ少し入った先にある富田(とみだ)神社。こちらに大きなクスノキがあるという情報はチェック済みでしたが、四国を横断する場合はどうしてもあの「加茂の大クス」を擁する吉野川ルートを選択してしまうもので、なかなか立ち寄る機会がありませんでした。今回は瀬戸内海を眺めながらのんびりドライブすることが目的だったため、この機に「富田神社の大楠」を拝見しようと思い立ったのです。

到着後すぐに視界に飛び込むその姿は…おお、これは朝っぱらからなかなかテンションを上げてくれるな。デカい!四国にはクスの大物が数多く揃っているので埋もれがちですが、これは充分に凄いクスです。早朝のまだ少しひんやりした空気が心地良い。

「やはり巨樹という非日常はいいものだ。」
コロナ禍というこの状況。徐々に徐々にメンタルが削られ、公私全てにおいて少しずつ意欲が減退していくのを実感する毎日ですが、ファインダーを覗いてワンショット切った瞬間にそう強く感じたのを覚えています。オフを充実させるために日々頑張る。最近どうも忘れがちですが、これこそが最も人間らしい健全な暮らしではないでしょうかねえ。毎日近所を散歩して「そろそろ秋やね…」とか、そんなものは本来老後の楽しみに取っておくべきものですよ。そこまで呆けているのは自分だけかもしれませんが。

根本に何やら石碑が立っていました。奉納 玉祖の文字が。刻印された住所は大阪府八尾市の「玉祖神社のクス」の玉祖神社とは関係なさそうですが珍しい名称なだけに勝手に親近感が湧いてきます。玉祖神社か。懐かしいな。玉祖命(タマノオヤノミコト)はかの八尺瓊勾玉(ヤサカニノマガタマ)を作ったとされる神様ですね。

「富田神社の大楠」。案内板によると町指定天然記念物。しかし大川郡大川町は合併によりさぬき市になっているため、現在は市指定の天然記念物、ということになります。幹周は9.1m。2018年に実測された方の情報によると9.85mだったということなので、このまま成長を続ければ間もなく10mの大台を超えるものと思われます。ちなみにこちら香川県第三位のクスノキです。

単幹でこんもりした樹冠のブロッコリータイプではなく、ずんぐりむっくりした根本から炸裂したかのように小枝を広げるイソギンチャクのようなタイプ。この形状なんかも玉祖神社のクスっぽい。

眺めていてほっとする。どんな巨樹にも言えることですけど、特にクスは午前中の早い時間に眺めるのが一番気持ちいいような気がします。近所の散歩コースにクスの巨樹があったら最高でしょうね。

先程の案内板によると「昔は幹に巨大な空洞があって子供たちが出入りして遊んでいた。その空洞は成長とともに自然と塞がってしまった。」ということですが、うーん。そこまでの大空洞が塞がることなんてあるのだろうか…と、いつもの悪い癖が。やめておきましょう。

こうして見ると、鳥居側に突き出た大枝にはそろそろ支柱を立てた方がいいかもしれません。せっかくの樹勢旺盛な素晴らしいクスノキですから、健康なまま次世代に残していただきたいものです。

拝殿からクスを見下ろせるこの感じも玉祖神社そっくりだ。

この眼下に街並みを臨む感じにも既視感が… 笑
本当に何の接点も無いのでしょうか。

とても静かで居心地の良い空間だったため、ついつい長居してしまいました。とてつもないインパクトを与える巨樹ではないのだけど、ああ来てよかったなあと素直に思えるクスノキ。近くには津田の松原、引田の町並み等もあり、日々の喧騒を忘れてのんびりスローに過ごしたいときには悪くないエリアなのではないかな、と。そういえばホワイトタイガーで有名なしろとり動物園もあるし、地味に…と言ったら失礼ですが、結構色々あるんですよね、香川県東部は。いいところです。

2021/6/30訪問
「富田神社の大楠」
さぬき市指定天然記念物
樹齢 不明
樹高 22m
幹周り 9.1m(実測された方によると9.85m)

香川県さぬき市大川町富田中114

4件のコメント

  1. このクスは私も測りましたが9m台後半でした。
    元気が良く形状的にも成長が早そうなので10mにも間もなく届くでしょう。
    津田の松原は四国で一番良いサイズの松が多い松原なので時間がありましたら寄って損は無いと思います。
    一番大きい幹回り5,4mの松を筆頭に4m前後の松が複数ありますから。

    全国的に良いサイズの松がどんどん枯れて5m超の松は現在数えられる程度しか残ってないので
    このまま長生きしてほしい所です。

  2. > 123さん
    やはり9m台後半なんですね。あと10年も経てば10mの大台に達していそうです。
    香川のクスはどうしても志々島や善通寺のクスが目立ってしまいますが、こちらも立地含めて素晴らしいクスだと感じました。
    10mを超えるとリスト上でもひときわ目立ちますから、少しでも多くの方の目に留まるようになれば嬉しいです。

    もちろん私も津田の松原に立ち寄りました。松の防風林も全国的に貴重なものになってしまいましたね。
    私が子供の頃は防風林といえば松、くらいにありふれていた記憶がありますが。
    松の巨樹も全国的に壊滅状態ですが、何とかこのまま踏ん張ってもらいたいものです。

  3. 久しぶりに巨樹記事を拝見しましたが、やはりいいですねぇ。
    巨樹巡りが完全にストップしている状況なので、こうやってまだ見ぬ巨樹が見られるのは嬉しい限りです。

    八尾の玉祖神社ですらまだ見に行けないのですが、それと似たクスというだけで湧くワクワクしますよ。
    神社の参道にどっしりと構えるタイプの巨樹はクスに限りますね。
    おっしゃるように支柱が必要だと思わせるくらいに太く斜めに伸びた大枝が気掛かりです。
    かつてあった大きな空洞?
    今の状況からはちょっと想像できない姿ですがどうなんでしょう。
    真相はともかく、そんな逸話があるのも巨樹の魅力の一つですね!

  4. > RYO-JIさん
    同感です。やはりいいものです、巨樹は。
    真夏の間ずっと半ば自暴自棄に引きこもって過ごしてしまいましたが、そろそろ日常としっかり向かい合うことにします…
    楽しみを放棄する代わりに義務もぼちぼちで。そんな怠惰な毎日だったので、流石にこれに慣れてしまってはいけません。

    奈良県からですと、玉祖神社までは十三峠を越えて自転車で行ってみても気持ちよさそうです。
    (いえ、私がそちらの地理に疎いだけで、そもそも自宅から十三峠までが遠いわ!という話かもしれませんが 笑)
    富田神社のクスもなかなかのものだったので、RYO-JIさんにはぜひ立ち寄っていただきたいです。
    あのエリアはRYO-JIさんと偶然高松でお会いしたとき依頼ご無沙汰なので、私もまたゆっくり回ってみたいんですよねえ。

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