三重県尾鷲市 曽根飛鳥神社社叢の巨樹群 2 三重県第3位のクスノキ

LEICA Q

さて先日紹介した「三重県尾鷲市 曽根飛鳥神社社叢の巨樹群 1 拝殿前の大楠」の続き。同じく飛鳥神社の社叢にそびえる三重県第3位の巨大さを誇るクスノキについて書き進めたいと思います。ちなみにこの「県下第3位のクスノキ」という締まらない呼称も何とかならないかと考えてみたのですが、拝殿前や鳥居奥にも立派なクスが控える中で「飛鳥神社のクスノキ」と呼ぶのも違和感があるし、まあ分かりやすいし別にいいか…ということで現地案内板どおりの名称で進めていきましょう。

実はこちらのクスノキ、過去何度もこの飛鳥神社を訪れていながらも、マヌケな私はその存在に気付いていなかったのです。いえ、県下3位のクスがあるとは聞いていたのですが、拝殿前のクスノキがそれだとばかり思い込んでおりまして。うーん…確かに立派だけど3位は盛り過ぎでは?などとふざけた感想を抱いていたのでした。

それもそのはず。気付くわけがありません。何しろ拝殿への参拝経路にそんな巨樹は存在しないのですから。この撮影位置の後ろ側が賀田IC方面(つまり北)、この右奥に駐車スペースおよび鳥居があるのですが、実はこの手前左側に「くすの木」という小さな看板が立っていたんですね。いやーこれは気付きませんって。

ほら。え?何でこれに気付かなかったんだ、ですって?何でなんでしょうね…自分でも己の目の節穴っぷりにビックリしましたよ。

クスの側には解説板が。巨樹・巨木林データベースによると幹周11.5mということで県下第3位の見事なクスノキですが平成30年の再測定では13.2mにまで生長しているそうです。

三重県最大を誇る「引作の大クス(15.7m)」には負けるものの、この数値が本当なら第2位の「水屋の大楠(13.1m)」を抜いて単独第2位ということになりますが…まあ水屋の大楠もさらに生長していると思われますので、この辺はアバウトでいいのかなと。個人的な感覚で語るなら、今でも水屋の大楠の方が大きいように感じます。まあ、あちらは巨大な根回りで巨樹ランキングの「根回りを無視する」というレギュレーションで大きく損しているはずなので、さもありなんということで。

とはいえこちらもデカい!やはり幹周10mオーバーの巨樹はそれだけで迫力が違います。大量の着生植物を蓄えたその姿は普段見慣れた大阪エリアのクスノキとは全く別の樹種のようにも見え、久々に興奮のあまり駆け寄ってしまいました。もうこの立ち姿からして南国の樹、ですよねえ。

根本は大きく空洞化しているようですが、とても健康そうなクスです。

根本から伸びるひこばえは、まるでカツラのよう。
それにしても密林と一体化してるなこれは。

鬱蒼と茂った周囲の樹木に負けじと単幹でグングン背を伸ばし、そこから一斉に樹冠を広げた形状。絡みつく着生植物も相まって、生命と生命のぶつかり合いを見ているようで眺めていて飽きない。

飽きない、のだけど…とにかく蚊の猛攻がすさまじい。今まで巨樹めぐりをして来て、ここまで蚊に苦しめられたのは初めてかもしれません。本当にすごかった。私が手放した瞬間、三脚やカメラにもブンブンと何匹もの蚊が集ってましたからね。かなりの数を叩き落としたつもりでしたが、それでも全身何箇所も刺されてしまいました。のんびり過ごすなら夏場は避けるのが賢明かもしれません。(正直に申し上げると、私は今回最低限の撮影だけしてさっさと切り上げました。無理です。じっとしていられません。)

樹冠も青々と茂っており樹勢の心配もなさそう。今後の生長も楽しみな巨樹です。強いて言うなら今後数十年内に襲来するとされる南海トラフ地震…津波被害の出やすい湾奥の海岸線ということで、それだけが心配です。

目の前に立つハマセンダンも盆地に住む私からすると、なかなか珍しい樹種でした。三重県以南の海岸に自生するのだそうです。見る機会がないわけだ。

幹のコブがヒキガエルに似ているでしょう?と書かれていました。まあカエルだと言われたらカエルのようにも見える。

幹の質感を見ると一体どこがセンダンなのかと突っ込みたくなりますが、たしかに葉っぱは似ているのかもしれません。
しかし実も全くセンダンには似ていないそうな。うーん。

ということで、とにかく見どころたくさんな飛鳥神社。
三重県南部の巨樹をめぐるなら是非候補に加えていただきたいところです。
夏場の訪問は虫除けグッズをお忘れなく。

2021/9/13訪問
「曽根飛鳥神社社叢の巨樹群 三重県第3位のクスノキ」
和歌山県指定天然記念物(社叢全体が天然記念物指定)
樹齢 推定1,000年以上
樹高 30m
幹周り 13.2m

三重県尾鷲市曽根町610

4件のコメント

  1. 着生植物の多さや密林のような雰囲気、
    さすが、雨の多い尾鷲の面目躍如というところですね。
    根元のアップや下から見上げた写真の堂々たる姿に、県下第3位の貫禄を感じます。
    実は私、昔尾鷲に3年ほど住んでいたことがあるのですが、この神社は知りませんでした。
    こちらに出向いた折には立ち寄ってこようと思います。

  2. > れもんさん
    尾鷲にお住まいだったのですか!なんと羨ましい。
    色々あって最近は離れてしまいましたが、元々海釣りが大好きなのであの辺りは私にとっては楽園です。
    飛鳥神社は尾鷲の市街地から随分離れていますから、地元の方は逆に立ち寄る機会がないのかもしれませんね。
    既にご存知かもしれませんが尾鷲は「尾鷲神社の大楠」などクスの豊作エリアなので、機会があればぜひまた訪れてみて下さい。

  3. 大阪のクスとは全然雰囲気が違いますね!
    着生植物に覆われた姿が野性味を感じます。
    クス自体には悪影響がありそうですけど、このクスはそんな細かいことは気にしないくらい力強い存在なのでしょう。
    「引作の大クス」「水屋の大楠」はどちらも好きなクスなので、それらに次ぐサイズですから気になって仕方ありません。

    これまでの訪問時に気付かなかったのは・・・まぁある意味仕方ないのかもしれませんよ。
    だってこれだけ他にも見所がある巨樹が乱立している神社ですから。

    蚊の猛攻は絶対に避けたいので時期を選ぶことにします(笑)。

  4. > RYO-JIさん
    薫蓋樟なんかとは明らかに雰囲気が違いますよね。
    あの辺りは気候が亜熱帯に近いそうですが、植物を見るだけでもこちらとは生態系が違うのが伝わってきます。

    水屋の大楠も素晴らしい巨樹ですよね。ああ、また行きたい。
    え?ふる里の巨大からあげを食べたいだけだろう、ですって?それはまあ否定できませんが 笑
    尾鷲はRYO-JIさんのところからもなかなか行きにくい立地ではないかと思いますが、ぜひ飛鳥神社へ。
    冬場でもわりと暖かいので、常緑樹のクスということもあって時間を持て余し気味な冬の訪問もいいかもしれませんね。

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