愛媛県四国中央市 玉取山の大カツラ

SONY α7RIII / SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN | Art

その存在だけは何年も前から知っていました。私が生きている間に立ち寄れることはないだろうと半ば諦めていた巨樹です。ええ、遠いんですよ。浜松市で言うところの天竜区的な?ここを四国中央市と呼ぶのは反則だろうというその立地。しかし今回は単独での四国旅、それも予定は一切未定の行き当たりばったりな旅ということで、今回こそ人生最大にして最後のチャンスなのでは?ということで行ってまいりました。

一気に省略してしまいますが、伊予三島からひたすら山間部を目指して突き進む。県道6号から早明浦ダムへと続く県道126号に逸れた辺りから急速に景色が一変します。あとはまっすぐ道なりに。まあそれなりによろしくない路面状況が続きますがGoogleMapにも大カツラの登録がありますので、事前に目的地登録しておけば迷うこともないかと思われます。

で、ここから右の未舗装路へと進むわけですが…まずは手前の中ボス、それから奥の大ボスを目指すのがセオリー。しかし先人によると相当な悪路らしいので、とにかくまず最奥目指して突き進むことに。結論としては普通車でも何とか登ることはできますが、車を傷つけたくない方はおとなしくここから歩いた方がベターかもしれません。私はゴール手前の段差で思いきりバンパーを擦りました 笑 しばらく登ると石碑の設置された三叉路に出るので、そこからは先人に倣い車を降りて徒歩で。

うおおおおお、これはデカい!もちろんデカいのは事前の情報で分かっていましたが、到達困難な山奥の大物というのはそれだけで感動5割増しになるような気がいたします。カツラの巨樹は大きさの定義がなかなか難しいですが、これなら四国代表格の一本、全国クラスといっても差し支えないサイズでしょう。

県指定天然記念物。正式な登録名称は「かつら」だけですが、その立地から「玉取山の大カツラ」と呼ばれています。四国では標高700m以上の高地に自生するとのこと。訪問したのはまだ日中なら汗ばむ陽気の10月半ばでしたが、とにかく真冬のようにひんやりした空気でした。ペラペラの上着一枚で死ぬかと思った。

惜しむらくは、カツラの黄葉が楽しめるだろうとウキウキ(死語)でやってきたものの、黄葉どころか随分と落葉が進んでしまっていたことですねえ。あのカツラ特有のメープルのような香りもしなくはありませんが、期待したほどの心地よさではなく。

一見半身だけ青々と茂っているように見えますけれど、こちらはカツラと一体化したトチノキの葉なのです。トチノキも落葉広葉樹ですが落葉の時期はカツラの方がずっと早いみたいですね。

足元にはおびただしい量のカツラの落ち葉が。あと2週間早ければ、きっとあの極上の香りが楽しめたのに。

しかしまあトチノキが飾り付けてくれているおかげで不思議と寂しさは感じませんでした。

空高く立ち上がるカツラの幹たち。幹が風に揺られてギシギシと軋む様はあまりにも壮大で、本当に何度眺めても飽きる気がしない。

根本にはたくさんのひこばえが。5月や6月に訪れていたら、どんな姿を見せてくれたのだろう。正直言うと訪問した直後はそのあまりの立地に「また来たいけど、もう生きているうちに来ることはないだろうな…」なんて思っていたんですが、今はもう新緑の時期に再訪したくて仕方ありません。

ほとんどの葉が落ちてしまいましたが、それでも僅かに葉を湛えています。ああ完全に落葉した後でなくてよかった…としみじみ感じましたね。

この辺りは四国といっても12月には早々に雪を被ってしまうこともある地域で、気候的には信州や東北の山中とあまり変わりません。幹には険しい自然の中で生きた証がしっかり刻み込まれているように見えます。力強く、美しい。

せっかく来たというのに離れるのはどこか名残惜しい。最後にまた一歩引いて、少し遠目に眺めてみる。

カツラはやはり一歩引いたところから見る全景が最も美しいように思う。この一本に出会えただけでも来た甲斐がありました。うん、いつかは新緑の時期に再訪してみたい。

2021/10/19訪問
「玉取山の大カツラ」
愛媛県指定天然記念物
樹齢 伝承800年以上
樹高 30m
幹周り 15m

愛媛県四国中央市富郷町寒川山

4件のコメント

  1. おおー、このカツラはチェック済みですよ、もちろん(笑)。
    一人で訪れるにはやや心細い感じの場所ですよねぇ、ましてや見知らぬ土地だし四国の山深さは身に染みていますし・・・。
    それでもこの雄姿を一目見た途端、ここまでやって来た苦労なんか吹き飛んでしまいそうです。
    一期一会という言葉が、対巨樹にも当てはまりそうだと感じます。
    自身の葉の大半が落葉しようとも、トチノキの葉っぱに覆われている(ように見える)のも面白いなぁと。
    黄葉を外したとは言え、これはこれで珍しいタイミングですよ。
    大袈裟でなく生きているうちに見たい巨樹のひとつだと思いました。

  2. > RYO-JIさん
    こんな辺境までチェック済みとは!流石RYO-JIさんですね。
    最終盤は今まででもワーストクラスの悪路でした。伊予三島の市街地から往復すると軽く半日コースになるので、せっかくの
    遠方まで来て予定に組み込むか、判断が難しいところです。まあ、それでも行ってしまうのが愛好家のサガですが 笑

    随分前に12月に訪問された方のログを参照していたら、トチもとっくに落葉していて「既に枯死」と判断されてたんですよね。
    トチが今も生きていて、これだけ元気な姿を見せてくれている。この立ち姿を見られただけでも行ってよかったと思います。
    冒険心も満たされますし巨樹もとてつもなく素晴らしい。半日潰して行くだけの価値は充分ありましたよ。

  3. おお、四国でカツラとは。しかもトチとの競合だなんて……実に荒っぽいですね。笑
    道路の写真からして心細さ満点だ……。
    東北と違って熊の心配はないんでしょうけど、四国ってなんだかワケわかんないモノノケが潜んでそうなとこありますよね……。歩いてて背筋がソワソワしそうです。
    薄暗い中にこれだけのカツラが出現すると、これまたビビりそう。
    先日すごく久しぶりにカツラの黄葉の香りを嗅ぎましたが、いいものですね。
    確かにこれはそう、新緑や黄葉の全盛に一度見てみたい。なんて、軽々しく言ってます。笑

  4. > 狛さん
    実は四国のカツラは数こそ少ないですが大物揃いなんですよ。
    (たしか久万高原の辺りにもすごいカツラが…って、ちょっと調べてみたら「初瀬の大桂」でした。これも行ってみたいけど超絶秘境です。)
    道はこれかなりマシなところで、本当にヤバいゾーンは一度停車してしまうとスタックして詰みそうなので写真すら撮れませんでした 笑
    ヨサク然り、本当に四国の山奥まで巡ろうと思ったらバイクで来るべきなんでしょうねえ…

    秋のカツラの香りは実に風流ですよね。
    あの香りをかぐと山奥にまで来た甲斐があったぜ!とそれだけで満足できてしまいます。

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