京都府京都市北区 中川八幡神社の白杉(八幡宮大杉)

FUJIFILM X100VI

昔から何度も参拝している神社の御神木。
スギの巨樹として取り扱うには若干迫力不足な感が否めず掲載せずに来ましたが、実はなかなか由来が面白いのでまとめてみることにします。

京都市北区…とはいえ、中川集落は京都市のほとんど果て。京都駅から車で1時間かからないくらいでしょうか。
一応バスで来ることも出来ますが本数が大変少ないため自家用車やバイクでないと訪問は難しいかもしれません。
立地で言うと以前取り上げた「北山大台杉」のすぐ近くに中川八幡神社が鎮座しています。

神社専用の駐車スペースはありませんが目の前に地域の集会場があるので、私はいつもそちらに駐車させてもらっています。

拝殿を正面に見て左手、小さな社の裏手に御神木がそびえています。
一本だけ明らかに大きく、さらに樹皮の色が独特の白味を帯びているので迷うことなく見つかるはず。

うーん。幹周は目測で5.5m前後といったところしょうか。
写真では分かりにくいですが扁平と言いますか、わりと奥行きのある形状をしているので実際測定するともう少しあるかもしれません。
樹高は恐らく30mほど。大きさだけで見れば、スギ巨樹としては「まだまだこれから」が万人の感想でありましょう。

この大杉の面白いところはその品種、そしてストーリーにあります。
なんと先に紹介した「北山大台杉」の親木だというではありませんか。
世界広しと言えど、この京都中川地区でしか見られない北山林業はこの一本のスギから始まった。
何ともロマンを感じる話ではありませんか。

※北山大台杉の記事でも紹介しましたがご興味がありましたら、京都北山丸太生産協同組合のサイトをご一読下さい。この白杉のことも紹介されています。

解説板では「八幡宮大杉」なる呼称が付いていますが個人的には「中川八幡神社の白杉」とでも名付けたいところ。
八幡宮の大杉ってだけなら日本全国どこにでもありそうなので…ねえ。

花が咲かず実もならず、花粉も飛ばさない白杉。
花粉症大国となりつつあるこの国において理想的な品種のようにも思えますが、恐らく成長が恐ろしく遅いのでしょう。
品種のことを何も知らずに樹齢600年と聞いたら話半分に聞き流すかもしれません。
しかし実際その子孫たちを見ると600年がスッと納得できてしまうくらいに成長が遅い。
現代の林業に不向きであることは間違いなく、あまりにも気長な話です。

うーん…せっかくメジャーを持っているので幹周を実測してみたいのですが。
根回りがむき出しになっており一人で根を踏みつけずに測定することは不可能と判断。
今度友人と参拝した際に測定してみよう。

単体の巨樹としてみたら迫力はさほどでもない。
しかし歴史ある北山林業はこの一本から始まったというロマンを加味すると、北山大台杉と絡めて眺めるだけの価値は十分あるでしょう。
京都市中心部と比べると気温も何度か低いので暑い時期の散策にはもってこい。
ここ数年暑い時期はヤマビルが出るので雨の日、雨上がりなどはご注意を…

2024/9/6訪問
「中川八幡神社の白杉(八幡宮大杉)」
樹齢 推定600年
樹高 目測約30m
幹周り 目測約5.5m

京都府京都市北区中川北山町123

4件のコメント

  1. なるほど、これは実に興味深いスギですね。
    この一本から北山杉は始まっただなんて本当にロマンそのもの。
    特に京都在住のto-fuさんには誇らしい一本じゃないかと推測します。
    その歴史を知ってから改めて見返すと、そう言えば品があるように感じるから不思議なものですね。
    呼称は是非とも白杉というワードを入れて欲しいですよ。

  2. > RYO-JIさん
    巨樹をとっかかりに、その地域の歴史や民俗に手を伸ばすと色々楽しめますよね。
    無心にただ巨樹リストや地図とにらめっこして巨樹と巨樹を点移動するのではなく、一本の巨樹からその地域そのものに
    食指を伸ばして小さな円で俯瞰する方が、楽しめることは多い気がします。

    私は「白杉」という品種をここで初めて知りました。
    実際他のスギと比べて明らかに姿が違いますし、呼称には是非とも加えてほしいです。
    スダジイとツブラジイよりもずっと品種の違いが分かりやすいと思います 笑

  3. あの台杉の母樹とは。台杉は見た目のインパクトから記憶されてる方も多いでしょうが、この白杉まで知っている率は低そうに思います。自分は知りませんでした。笑
    しかし、伝統の林業の話だけに、白杉が今も立派に立っている意味というのは大きいはず。まさにここから始まったのだ、と辿って知ることができる喜びがあります。
    歴史深い京都にあり、資産としても注目されていたわけで、樹齢や性質はここに記されている通りなのでしょう。
    とすると、確かにずいぶんじっくり育っているスギ。寒暖差など気候もそうですが、この辺りの土壌特有のミネラルバランスなども関係あるんじゃないかと思えてきました。
    むろん台杉自体そうですが、それだけじっくり育つから木材として良質なのだという説得力、裏付けにもなりますね。
    まさにこういう巨樹同士のリンクが見えると、巨樹巡りの面白みが一段深まってロマンの度合いがぐんと高まってくるんですよね。

  4. > 狛さん
    あの台杉を紹介しているサイトは多いですが、この母樹まで紹介しているところは例の丸太組合サン(省略しすぎ)くらいではないでしょうか。
    この中川エリアの巨樹に限らず、解説板からルーツを辿ると意外なところの巨樹とつながっていたりして、地域の信仰や産業の歴史が垣間見れるのはこの趣味の醍醐味の一つですねえ。きっかけは一本の大物だったのが、その一本のルーツを辿るうちに数値だけ見たら大して立派でもない巨木にいやに惹かれていたりだとか。

    同じ樹種でもその土地の気候や土壌の質によって成長の度合い、性格みたいなものがガラッと変わってくるのが面白いです。
    人間も東北と関西で過ごすのではどこか違ってくるんですかねえ 笑

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