- 2019-05-23 (Thu) 23:42
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | クスノキ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 徳島県
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
5月19日徳島県上陸、鳴門ICを出たのが17時過ぎ。夕飯にもお風呂にもまだ少し早い時間帯です。最近は日も長くなってきたので巨樹を1箇所だけ回ってみようということでやって来たのがこちら。「別宮(べっく)八幡神社のクスノキ」でした。
逸る気持ちを抑え、まずは落ち着いて神社を参拝。写真中央やや右手に見えるのがクスの巨樹です。そう、クスノキは神社の境内ではなく鳥居の前に立っていました。ひょっとするとかつてはクスの辺りも神社の境内が広がっていて、道路整備の事情で神社と分断されてしまったのかもしれません。境内の一部は児童公園として整備されており、この日は悪天候と強風のため人影が見られませんが、普段はきっと近所の子供たちが駆け回っているのでしょう。変に格式張った感のない、温暖な四国らしくて気持ちの良い神社でした。
このような立地なのです。徳島県の平野部を運転していて感じたのですが、このクスのように田園風景や住宅街の中にピョコンと立つ遠目にも目立つ大木が本当に多い。車を走らせていると「おっ!!」なんてついつい遠くに見えるこんもりした塊が気になって脇道に入ってしまうことになります。まあ実際に近付いてみると巨樹・巨木クラスではなく標準サイズの数本のクスが綺麗にまとまって一つの塊に見えただけだったりもするわけですが、巨樹との偶然の出会いも楽しめたりして(実際にこの翌日、ノーマークだった巨樹を偶然発見しました。)運転するだけでも非常に楽しめる地域だと感じました。
周囲を囲いに覆われていてクスノキに近付くことが出来ないようにも見えます。しかし実は2箇所ほど人が入れるようにチェーンを外してあって、温かい幹に直接触れることが出来ました。やはり巨樹は見て触れて感じたい。本当にありがたいことです。幹周は8.9m。クスの大物揃いの徳島県下においては特別巨大だとは言えませんが、それでも9mクラスのクスノキというとこれは相当なもの。実際この場に立ってからは、四国上陸後の一発目からこれは良いクスが来たな…なんて興奮が収まりません。
それなりに交通量のある交差点に立っていることから道路に突き出した枝だけは剪定されていましたが、それでも非常に健康的で生命感が溢れています。交通事情を考えるときっと邪魔だろうと思うんですよ。このクスを迂回するために何だか変なカーブを描いた交差点になっているし、何より見通しだって悪くなる。場所が場所ならバッサリ切られてしまっていたかもしれません。それがこうして可能な限りあるがままの姿で残してもらっている。地域の方に大切に扱われていることが窺えて、こういう巨樹と出会うとやはり嬉しくなってしまいますね。
頭頂部から根本にかけて落雷の傷跡と思われる線傷が走っていましたが樹勢はまだまだ問題なさそうに見えます。写真右下に緑色のガレージのようなものが写っているのが分かりますか?その左側に立っている細い物体は恐らく避雷針。最近設置されたもののようで、これで今後の落雷は一安心、かもしれません。
筋肉の塊のような逞しい幹。強風?どこからでもかかってきなさい、とでも言いたそうな力強さを感じました。実際この日はかなりの強風で、撮影するにも葉がブレないようシャッタースピードを稼ぐのに苦労したほど。もちろんクスノキはびくともしません。この方にとってはきっとうちわや扇風機のそよ風程度のものなのでしょう。
放っておくと道路に突き出してしまうため止む無く切断された枝。苔生してクスの大枝特有のシダ植物(ノキシノブ?)に着生された様は貫禄があります。
全方位に枝葉を張る気持ちの良いクスノキ。ちょうど交通量の多い時間帯だったこともあって、眺めていると脇をビュンビュンと車が通り過ぎていくもので少し落ち着かなかったのだけが残念。前述のとおり交通の要所に立つこのクスを敢えて道路を迂回させてまで残してくれているわけで、感謝こそすれそれを責めるのは筋違いというものだということは重々承知しています。しかしそれが本当に勿体無い!と思ってしまうくらいに凄く良いクスノキだったんですよ。
ああ、もう一つ残念だったことと言えば、巨樹そのものが持つ魅力とは関係のないこととはいえ案内板の類が存在しなかったことですね。巨樹の由来であるとか、神社や地域との関わり。そういったストーリーが見えてくると一層愛着が湧くというもの。せっかく市の天然記念物に指定されたわけですから、石碑の脇に案内板でも立てればもう少し立ち止まる人も出てくるのではないかな、と残念に思えました。
今思い返してみても、四国上陸後の一発目がこのクスノキで良かった。巨樹そのものも立派で何より健康的。それは今回徳島県で見たクスの巨樹の総評でもあるわけですが、まさにそんな徳島県のポテンシャルを感じさせてくれる一本でした。私の中では徳島県の「始まりの巨樹」の定番になるかもしれません。次回こそは青空の下に立つ姿を眺めてみたいものです。
2019/5/19訪問
「別宮八幡神社のクスノキ」
徳島市指定天然記念物
樹齢 推定800年
樹高 20m
幹周り 8.9m
徳島県徳島市応神町中原字宮ノ東35
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コメント:4
- RYO-JI 19-05-24 (Fri) 23:12
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「始まりの巨樹」・・・いいフレーズですね。
いや実際にそういう巨樹に出会えたのは羨ましい限り。
加茂の大クスがあるような土地ですから、それと比較するのは可哀想だというものですね。
冷静になって考えてみると、充分過ぎるほどに見事なクスだと感じます。
いかにもクスらしい雰囲気がして心がほっこりします。
すぐそばに避雷針が設置してあるのは珍しいですね。
それだけ地域にとって大切なクスだと実感できますが、そうですね、解説版くらいは何とか設置して欲しいところです。
アノ巨樹王国のつるぎ町ほど力を入れるのは無理かもしれませんが、手作りでもいいのであればいいですねぇ。 - to-fu 19-05-25 (Sat) 21:07
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> RYO-JIさん
我々が合流して一発目に見たあのクスにも言えますが、スタートが良いとやっぱり気分がいいですね。
特に徳島平野部はクス天国でしたねえ…同じクス天国の大阪とはまた巨樹との付き合い方が違うようで
そんな風土の違いなんかも楽しめました。徳島はなんというか、大阪よりももっと身近で「ただそこにいる」
ような付き合いのクスが多かったように感じます。大阪は撮影してても結構な人が拝みにやって来ますからね。
そうなんです。我々の楽しみでもある、あの解説板が無いんですよ 笑
天然記念物に指定しました、ハイ終わり。ではなくて、なぜ指定に至ったのか…とかウソ半分でもいいので
書かれていると見ているものとしては一層興味が持てるんですけどね。立派なクスだけに勿体無いと思います。 - 狛 19-05-26 (Sun) 8:45
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ザ・クスノキという感じの格好のいい楠の巨樹ですね。
たしかにこれが一番目というのは幸先いいように感じます。
落雷で引き裂かれつつも大破炎上とならなかった、周囲の方々が巨樹に対してでっかい隣人のように愛着を感じていそうなのも幸運ですよね。
いろんなケースを見比べると、クスでもこういった点に恵まれないと、この樹のような美しい姿にはならないのだなと思います。
こういう樹がある土地って、おのずといい空気が流れていたりもするんですよね。
でも、解説がないのですね。笑
完全に「そこにあるべきもの」になりすぎてしまっていて、特別じゃないということか……。
大きなクス自体見かけることがまれな地域に住んでるので、やはり文化の違いを感じるところです。
徳島巨樹巡りのスタート地点「始まりの樹」として意識するというのは、身が引き締まっていいですね。
それこそお遍路みたいです。 - to-fu 19-05-26 (Sun) 15:08
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> 狛さん
徳島のクスはとにかく、単幹で樹冠まで美しいものが目立った印象ですね。
大阪なんかだと撮影中も本当にたくさんの人が足を止めてクスを拝みに来るんですが、
ここ徳島のクスはなんというか近所のおじいさん(おばあさん?)的な身近さを感じましたね。
近所のおじいを拝んだりしたらきっと怒られちゃいます 笑
案内板が見当たらなかったのは、やはりクスの巨樹が多いという地域性なんですかね。
いやあ確かにデカいけど別に珍しくもないべ?(どこの方言だよ)みたいな。
我々の旅はホント、お遍路に近かったかもしれません。残る札所も回ってしまいたいものですねえ。
あとの大物は439の「鉾杉」だったり、さらにヤバい道の奥だったりするので一人では行ける気がしませんが…
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