- 2019-10-24 (Thu) 20:18
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | トチノキ | 巨木たち（地域別） | 巨木たち（樹種別） | 徳島県
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
「葛籠のヒノキ」を離れてさらに剣山方面へと南下する我々。とはいえ目的地はもうすぐそこです。話は変わりますが、今回の四国巨樹巡りにはメインとなる二大目的地がありました。まだ紹介できていませんが、一つは徳島県の「加茂の大クス」、もう一つが高知県の「杉の大杉」。どちらも天然記念物の最高位である国の特別天然記念物に指定された、まさに国の宝とでも言うべき巨樹です。
それらへ至るまでの道のりに別の巨樹を肉付けするような形でルートを策定し、この日もここつるぎ町へと至っているわけですが、結論から申し上げてしまうとこのトチノキが思わぬダークホースだったのです。歴史的遺物のような特天巨樹とはまた違ったベクトルで非常に見応え…そして我々写真を嗜む人間からすると撮り応えのある素晴らしい巨樹なのでした。
もうこのトチが視界に入った瞬間の興奮といったら…きっとその場に居合わせた三人が三人とも全く同じ気持ちだったのではないかと思います。え？ちょっと、このトチとんでもないんじゃないの？と。
徳島県指定天然記念物「桑平（くわだいら）のトチノキ」。幹周8.6mという県内最大のトチノキです。もっともトチノキとしては非常に立派な数値ではありますが、こと数値だけで語るなら私だってこの巨樹よりも大きなものをいくつか見た経験があります。
いやいや、しかしですね。このトチと相対すると巨樹の魅力は数値だけで計り知れるものではないんだということがよく分かるはずです。この巨大さにしてこの生命力はなんなんだろう。巨大なトチノキといえばまず避けがたいのが幹の空洞化。枝だって折損しているものが多く、とにかく傷みが激しいものが多いわけです。それがこのトチに関しては、まるで若木のような瑞々しいまでの生命感。この溢れんばかりの圧倒的な緑の前に立つと興奮が抑えきれません。
様々な植物に着生されながらもこの健康的な姿ですよ。
ここまで大きく健康的なトチノキはちょっと他では見たことがない。これには我々興奮を抑えきれず、各々がひたすらに向かい合って必死にシャッターを押し続けることになりました。まるでここがこの日の最終目的地だったかのように。
それにしても本当に物凄い樹冠です。この日は天候に恵まれ、まさに日本晴れ。雲一つ無いような青空が広がっているにもかかわらず、この巨樹の麓にいると薄暗くてシャッタースピードを稼ぐのにも苦労するような有様でした。
これだけ大きく健康的な巨樹ですから、そりゃあ撮影してる者としては堪らないわけですよ。ホントもう冥利に尽きる。で、さらには少し角度を変えてみるとまた全く違う一面を見せてくれるのだから、いくら撮っても飽きません。いやあ、我々あの斜面を一体何周したんでしょうね。どの角度から撮ってもそれなりに様になってくれるんだけど、逆にこれだ！という一枚がなかなか撮れない。そしてそれがまた楽しいんだ。いくら撮っても満足できない、終わらない。
広角24mmでは全然収まりきらない枝張り。巨大さで言えば自分が今までに見てきた限りでも日本一の「太田の大トチノキ」や京都の山奥で見た「君尾山のトチノキ」に圧倒的な分がある。でもこれだけ青空に映えるトチノキが果たして他に存在するのでしょうか。サイズ＝魅力ですか？確かに悠久の時を経て成長したものだけが放つ圧倒的な迫力は巨樹の持つ魅力の一番の要素ではありますが、決してそれだけではありませんよね。全国でもトップクラスの魅力を誇るトチノキであることは間違いないように思うのです。少なくともつるぎ町エリアの巨樹を回るなら絶対に外してほしくない、マストな一本だと断言します。
少し遠くから遠景を。麓に見えるのは「とちの木大師」の祠だそうです。古くから桑平の集落で神様として崇めて来られたであろう桑平のトチノキですが、実は四国一のトチノキとして脚光を浴びたのは平成10年に巨樹・巨木林の会が調査に訪れてからのことだというから驚きです。たった20年前までこれだけの巨樹が地元民だけにひっそりと愛でられて来たとは…それだけ余所者が立ち入ることがないくらいの秘境だったということでしょう。これらの巨樹の存在がなければ私だって死ぬまでに訪れることがあったかどうか。
ちょうど我々が訪問した5月中旬はトチノキの花が満開でした。そよ風に乗って良い香りが…というわけでもなくて、何だろう。どちらかと言えばちょっとくさい？いや自分、撮影しながら「あれ？もしかして俺のTシャツ汗臭い？人様の車に乗せてもらってるのにやばいなあ…」なんて思ってたくらいですから。うん、ちょっと汗のニオイ？饐えたニオイ？そんな感じかもしれません。
本当に思わぬ伏兵、ダークホース。決して忘れることの出来ない一本になってしまいました。実はこのすぐ真横に杉の巨樹があるんですが、そっちの撮影後に戻ってきてもう一度撮影を再開してしまったくらいですからね。そして、あれだけ撮ったはずなのに納得できる一枚がやっぱり無いという…生きているうちに絶対再訪して撮り直さなくてはいけません。次回はもう単焦点からズームレンズまで大量に引っさげて、これでもかというくらいにメチャクチャ撮ってやりたいものです。
2019/5/21訪問
「桑平のトチノキ」
徳島県指定天然記念物
樹齢 約500年
樹高 28m
幹周り 8.5m
※樹高・幹周は2000年に環境省が調査したものを引用。
特に樹高は現地解説板の16mよりこの28ｍの方が明らかに正確であるように感じます。
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コメント:4
- 狛 19-10-24 (Thu) 22:31
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いやあ、やっぱりいいですね！ 四国はいい！ という以上に、桑平のトチ、素晴らしい巨樹でした。
巨樹を見ることの喜びをぎゅっと凝縮したような巨樹だったと思います。
この樹がトチであることの意味はとても大きいですね。
この５枚きれいに広がった明るい色の葉。硬そうな幹の迫力。惚れ惚れします。
考えてみれば、地蔵森のカゴノキにまつわる大飢饉のように、この辺りにはたびたび食糧難があったのかもしれず、トチの実を頼って植えられた可能性もありそうですよね。
その恩から周囲の方々に大切にされ、この堂々としたスケールが維持できたように思います。
ほんと、撮り飽きない素晴らしい巨樹でした。
特天クラスは素晴らしくて当然という感じもありますが、だからこそこのトチの魅力は際立って感じられました。 - to-fu 19-10-25 (Fri) 21:45
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> 狛さん
今思い返しても四国は最高でしたね。通行料金のバカ高い橋さえなければ月イチで通いたいくらいです。
あの時期に限って言えば日本一のトチノキと呼んでしまっても差し支えないのではないでしょうか。
それくらいに素晴らしい、生命の息吹が炭酸みたいにシュワシュワと弾けているかのように明るい巨樹でした。
雪の時期のモミみたいなもので、これがベストだ！と断言できるシチュエーションだったと思います。
仰るように栃の実は貴重な食料源だったのかもしれませんね。
それにしてもセンダンの実同様有毒物質サポニンが豊富と言われる栃の実を、わざわざ丁寧にアク抜きしてまで食べた
大馬鹿野郎が全国にいるというのが恐ろしいです。コンニャクを初めて精製した人と同じくらいキチガイじみてます。
いえ、トチ餅は本当に美味しいんですけど。 - RYO-JI 19-10-25 (Fri) 23:54
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トチ餅、美味しいですよね。
丁度これを見たひと月前に人生で初めて食べたんでした。
それはそうと、このトチは今あらためて思い返しても素晴らしい存在でしたね。
見る角度によって様々な表情を見せてくれるんですよねぇ。
写真の腕を試されていたような気がするくらい撮りごたえありました。
訪れたタイミングも確かに良かったですけど、他の時期でもきっと大満足したに違いありません。
わざわざあんな秘境まで行く価値ありますよ。
ちょっと気が早いですが、今年見たベスト巨樹ランキングにおいても上位にくるのでは・・・そう思います。 - to-fu 19-10-26 (Sat) 9:28
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> RYO-JIさん
トチ餅はお土産についつい買ってしまいます。自転車の後に食べたりするともう格別ですね。
この巨樹は本当に衝撃的でしたね。心のどこかに全ては加茂の大クスまでの前座だろうという意識がありましたが、
この場に来て一瞬で裏切られました。ズームレンズ1本で来たことを悔やみましたし、もう時間無制限で撮っていたかったです。
この巨樹は間違いなく再訪するでしょうね。戻って加茂の大クスルートも捨てがたいし、439に抜けてまだ見ぬ鉾杉も見てみたい。
ああ実に悩ましいですが、439が怖いので鉾杉は出来たらまた3人で巡りたいものです 笑
今年の巨樹ランキングでは間違いなく上位ですね…なんて色々思い返してみてますが、今年も何だかんだとお互い結構な大物を
回ってますよねえ。ランキングを選定するとなると相当苦労しそうです。
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