- 2021-06-16 (Wed) 16:32
- Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 ZM | タブノキ | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別) | 香川県
LEICA M10 / Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8 ZM
香川県の善通寺市を南下して徳島県三好市を目指す。そのちょうど中程の山中にタブノキの巨樹があるというではありませんか。前回巨樹を撮影してから数ヶ月が経過してしまいましたが、果たしてまともに撮影できるものか…今回はいつもの一眼機+ズームレンズではなく、MFのレンジファインダー機でスローに撮影することに。もちろん一眼機も持参していたんですけどね。なんとなく無我夢中にガシガシ撮りたい気分でもなく、今回はもっとのんびり巨樹と向き合いたかったのです。うーん、前日歩きまくったので疲れていたのかもしれませんねえ 笑
畏れ多くも申し上げますがこのタブノキ、実はあまり期待していなかったのです。香川県の名だたる巨樹なら結構な数を回ってしまったつもりになっていたし、今までの巨樹めぐりで後回しにしてきたくらいだからそこまでの巨樹ではないだろう…と。ええ。本当にすみませんでした。土下座させて下さい。めちゃくちゃ良い巨樹ではありませんか。真っ先に飛び込んでくるのがこの小さな駅舎を飲み込まんとする広大な樹冠なんですが、もうこの時点で絵力が半端ではない。雰囲気あるなあ。
「財田駅前のタブノキ」そのまんまなネーミングですが、なかなかのものではありませんか。天然記念物には指定されていないものの香川県の保存木に指定されています。この立派な案内板、なんと地元中学生が作ったのだそうで。うん、写真も内容も素晴らしいですよこれは。
樹齢700年といわれるこのタブノキですが、大正12年にこの地に駅舎が建設されることが決まり伐採されることになったそうです。村人は「このタブを切るなんてとんでもねえ、タタリが起こるぞ。」と反対しましたが、国の一大プロジェクトである鉄道事業が止まるはずもなく。しかし建設を強硬したところ工事事業者に不慮の事故が相次いだことから伐採を免れたのだとか。
また、2011年には腐朽した大枝が落下。この機会に切り倒しては…という意見が出ましたが瀬戸内オリーブ基金が巨樹の治療に協力、NPO法人である基金とJR四国、そして地元の方々が一丸となって処置を続けたところ、樹勢も随分と回復してきました。私が撮影した樹冠と約10年前の案内板の樹冠、撮影した時期も違うのかもしれませんが、葉の付きが全くの別物といっていいくらいに回復しているのがお分かりいただけるかと思います。
大枝が健在だった頃はさらに美しい、こんもりとした本当にまんまるな樹冠だったのでしょう。その立ち姿に思いを馳せるとともに、一歩間違えれば今ここでこのタブと出会うことはできなかったのかもしれない…そんなことを考えずにはいられませんでした。このタブをぼけーっと眺められるこの時間が、実に贅沢なものに思えてくるから不思議です。
迫力のある幹。濃密な樹冠の真下だけあってとても薄暗い。MFでじっくりピント合わせしていると、顔の周りに大量の蚊が…まあそうだよなとしか言いようがありませんが、真夏の巨樹撮影にMFレンズは不向きですねえ 笑
JR土讃線、讃岐材田駅は無人駅。今回の旅はとにかくスローにと心に決めていた私にとって、このタイミングでこの巨樹と出会えたことは本当に幸運なことだったなと。(まあJR四国の駅なんて高松や松山を抜かしたらどこに行っても似たような駅ばかりですが …)人の往来なんてほとんどありませんから、文字どおり巨樹と二人きりでのんびりと過ごすことが出来ました。
駅舎の眼下に広がる景色は如何にも四国の山間部といった趣で美しい。ここを自転車で駆け抜けたら最高だろうと思います。
瀬戸内といっても山間部ですから温暖な気候と言ってよいものか分かりませんが、その立ち姿はどことなく暖かく朗らかなクスのようでもあり、私が主に関東で見てきたタブたちとは随分違った印象を受けました。どことなく南国っぽく感じる。ただ暑い時期だからそう感じただけなのかもしれませんけど。
木漏れ日が、そしてサワサワと吹く小風が最高に気持ちいい。そうだ。これが巨樹めぐりだったな。この心地よさをすっかり忘れていました。動かない毎日にも慣れたし、巨樹と会わなくたって別に毎日苦もなく生きていける。そりゃそうなんですが、お前の人生本当にそれでいいのか?苦のない人生=豊かな人生なのか?と。この数カ月間、気付かぬうちに大切なものをポロポロ落とし続けてきたことに気付かせてもらったような気がします。ありがとうタブノキ。
今回車での旅でしたが、経験上四国は電車(汽車)で時間を気にせずのんびり旅する方が土地に馴染むというか魅力が伝わりやすいような気がしますね。沖縄なんかもそうですが、こんなところまで来て忙しなく動いて一体何がしたいんだ?という。巨樹めぐりに限ると公共交通機関だけで回るのは、どう考えたって無理があるのも事実ですが。コロナの流行以降未だに電車に一度も乗らず暮らしていますけど、感染の心配が無くなった暁にはローカル線とバスを乗り継いでスローな田舎旅でもしてみたいものです。
2021年6月8日訪問
「財田駅前のタブノキ」
樹齢 700年
樹高 13m
幹周り 5.5m
香川県三豊市財田町財田上7311
コメント:4
- RYO-JI 21-06-17 (Thu) 21:26
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幹周5.5mとは思えないくらいの見事な樹冠ですねぇ。
ぱっと見、クスかと見間違うくらいの健康的で明るい温もりを感じますもの。
一方で過去に数度の生命を脅かす危機を逃れて生き延びること700年、凄いことです。
地元中学生が作ったという案内板にも惹かれます。
きっとそれに関わった人々は、生涯このタブノキの存在は忘れないでしょうね。
駅前に佇む巨樹も珍しいですし、香川に立ち寄った際は必見の一本ですね。 - to-fu 21-06-18 (Fri) 11:07
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> RYO-JIさん
関西圏ではあまりタブの巨樹自体見かけないので尚更かもしれませんが、本当に遠目にはクスと見紛うような立ち姿でした。
恐らく観光資源としては貢献度の低いこの巨樹に対し、様々な人たちが関わって多額の資金を負担してまで環境を維持している。
なんだかこういうの、いいなあ…と思いますね。巨樹そのものの見ごたえもそうですが、何よりも地域の人たちから愛されている
ことが伝わってくると冥利に尽きます。久々の巨樹巡りの1本目がこのタブでよかった。本当にそう思います。 - 狛 21-06-23 (Wed) 11:46
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遅れてしまいましたが、なんてすばらしい大タブ!
2枚目の、駅と一緒の全体像の絵の良さったらないですね。これだけで、ここに帰りたい……とか、実家でもないのに郷愁が湧いてしまいます。ああ、あのデカい樹がある駅ね、と言いたい。
確かに、案内板の頃と比べても樹勢がとてもよくなってて、見てて幸せです。
クスとまた少し違って、タブの葉の緑ってより肉厚で濃い緑色の印象がありますが、それがよく出ていると思いますね。
中学生が作った案内板もすごく充実してて驚きました。うん、こういうのを授業で作らせればいいんですよねえ。オトナが作ったつまんない案内板の10倍は良いです。
巨樹は一歩も動かないで一生を終えますが、その一生にただただ全てを注いでいる。
その純粋さを見習いたい。余計なくだらないことばっかりする人間ってほんとアホですよ。 - to-fu 21-06-23 (Wed) 15:47
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> 狛さん
サイズだけで見るとタブの巨樹としては平凡ですけど、この長閑な駅舎の目の前というポジションが
何とも旅情を感じさせてくれます。こういう巨樹の魅力はリストの数字を眺めているだけでは絶対に
分かりませんよね。本当に素晴らしい巨樹でした。
案内板のフォントとか配置なんかを見ても、よくある学生が嫌々作らされた感が伝わってこなくて好感が持てます。
仰るように、自治体が作りがちな「予算を取ったことだし、とりあえず何か作って現地に送ってやれ!」みたいなタテカンより
ずっと良いですよね。もし巨樹に興味が無くてもちょっと読んでみようかなって気分になりそうですもん。
巨樹から、自然から学ぶことは実に多いですねえ。
効率だけ考えて生きていると失くしがちな大切なものを、彼らは全て持っているような気がします。
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