OM SYSTEM OM-3のファーストインプレッション

FUJIFILM X100VI + WIDE CONVERSION LENS WCL-X100 II

とりあえず一言で表すなら「見かけによらずめっちゃ高機能なカメラ」。そんな感じ。
痒いところに手が届くと言いますか、出来たらいいなと思うような機能は大抵内蔵しているのがすごい。

例えば詳細設定可能なセルフタイマー(シャッターを押して○○秒後に○○秒間隔で○○枚撮影する、何なら逐一AFターゲットを追尾させながら撮影することも可能)とか、星空撮影の際ズームレンズのピントを無限遠の星空に合わせるのって結構面倒なんですが、あらかじめMF時に任意のフォーカス位置(この場合は無限遠)を記憶しておいてそれをサッと呼び出す機能、え?MFは嫌?それなら星空撮影に特化した星空AFもあるよ、などなど。

反面、出来たらいいなを節操なく詰め込みすぎと言いましょうか、もっとシンプルに作れなかったのかなと思わなくもない。
初心者の方がスマホからのステップアップにOM-3を検討する場合おすすめできるか。私は「否!」と断言します。

めっちゃ高機能=38ページにもわたるメニュー構成がとにかく複雑すぎてユーザーフレンドリーとは言い難い。
いやこれカメラ慣れした私がよく使う機能をマイメニューに放り込むだけでも結構めんどくさいんですが。

とにかくフルオート撮影機能が無いのが痛いですね。
自称中級者以上の方はそんなもの要らんと言いがちですが、実はフルオートって有り難い機能なんですよ。
家族にカメラを貸すときや観光地で他人に渡して記念写真を撮ってもらうとき、サッとフルオートに切り替えておく。
普段動きモノを撮らない方が急遽目の前で遊び回る小さな子供を、といった場合にも便利ですね。
AFのターゲット範囲を変えてシャッター速度を上げて…などとちまちま操作するより遥かに合理的です。

この左上のダイヤル。どうせスカスカなんだからAUTOモードを入れてもよかったのでは?

OM SYSTEM OM-3 / OM SYSTEM M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO

私はこれを機にカメラを学ぶ!機能を使いこなすんだ!と熱意を持ってOM-3を購入する超アグレッシブな方には無用な機能かもしれませんが、はっきり言ってスマホからのステップアップを考える大多数の方は「簡単にスマホより綺麗な画質で家族写真、記念写真を残したい。」こそが一番の購入動機ではないでしょうか。目的はあくまでお子様の高画質な成長記録だったり楽しい旅の思い出写真であって、撮影技術の向上ではないと思うのです。

単にレトロっぽいお洒落なデザインのカメラが欲しい、が購入動機であれば個人的にはNikonのZ fかZ fcをおすすめします。
どちらもレバーを切り替えるだけでササッとフルオートモードに移行できるフレンドリーなカメラ。
ええ、後にカメラについて学びたいと考えることがあっても、その時にフルオートを封印すれば済む話ですから。

よく聞くネガが「OM-3はμ4/3機としてはデカい」。これは私が懸念していたほどのサイズ感ではありませんでした。
まあサイズ感に関しては人それぞれなので本当は購入前に実物を手にとって検討するのが一番なのでしょうけど。

肝心の画質は…今どきのハイエンドスマホと比べたら流石カメラ!と感動するほどの差は感じないのが正直な感想。
むしろ撮りっぱなしの無補正JPGで比較すると、10人中9人はスマホ写真の方をキレイだと言うのではないか。
RAW現像してみるとデータの持つ情報量の豊かさや拡大したときの破綻の無さはOM-3が圧倒的に優位なんですけどね。

しかしその「圧倒的優位」もフルサイズ機など大型センサー機と比較してしまうと今度は立場が逆転してしまう。
ええ、データの持つ余裕、懐の広さは物理的にセンサーサイズの大きなカメラにはどうしても敵いません。
こういうところも含めてμ4/3センサー機は色々割り切って扱える中級者以上向けのカメラ、という印象。

決して画質が悪いわけではないのですが「足るを知る」を理解した上で購入すべきカメラだと感じております。

付属の12-45mm PROレンズは想像以上に優秀ですね。
μ4/3の解放F4はフルサイズに換算するとF8相当の被写界深度になるためとろけるようなボケは味わえないものの、それ以外は本当に優秀。ズーム全域で恐ろしく寄れる、さらにコンパクトで防塵防滴と来たら、単焦点レンズ原理主義者でもないかぎり持ち歩かない理由がなくないですかこれ。12-45mm PROレンズキットは本当にお買い得だと思います。

何ならボディ単体で買うより12-45mm PROキットを買ってレンズをばらし売りする方が安上がりだったりしますし。

・操作系が明らかにスマホからのステップアップを考えている初心者向きではない
・金属外装で中身はほぼほぼフラッグシップのOM-1=気合が入っている故にμ4/3機としてはデカ重寄りである
・物理法則からは逃れられず、画質面ではフルサイズ機やAPS-C機とセンサーサイズ相応の差を感じる

あ、あとは昨日のエントリーにも書きましたがエルゴノミクス全否定な電源レバーの配置。
これはオリンパス時代から現在のOM機へと続く悪しき伝統だと感じております。
世間のマジョリティは右利き、その右手でグリップを握った際最も自由に動かせるのが人差し指。
ということで他社製カメラで多く採用されている右上部、更に言うとシャッターボタンの同軸上にあるのが望ましい…はずなんだけど。

これらを許容できるならOM-3は「買い」のカメラです。
やっぱりフルサイズだよね。なんてマウントを取られても、何も分かってない素人が…と心の中で流せる玄人におすすめ。
私はOM-5 IIと購入を迷っていたのですが、OM-3を触ってしまうともうOM-5 IIは選択肢に上がらないかなあ。
お気に入りだったPEN-Fを持ち出す頻度が確実に減るだろうと想像できるくらいには気に入っています、OM-3。

2件のコメント

  1. 詳細なレビューありがとうございます。
    購入予定は残念ながらありませんが、とても面白かったです。
    オリンパス時代から電源位置に疑問があったり、メニューがややこしいというイメージがありましたが今もそのままなんですねぇ。
    一番の驚きはフルオートが無いっていう・・・。
    何でもカメラ任せの時代にそんなカメラが最新機種で存在していたとは。
    OMシリーズは初心者さんではなく、完全玄人向けのカメラという感じなんでしょうね。
    私のようなOM素人は、こんぴゅてーしょなるふぉとぐらふぃを理解してから手を出さないとダメかもしれませんね(笑)。

  2. > RYO-JIさん
    OM-5 II、何なら旧OM-5でもいいくらいでしたがOM-3は予想以上によく出来ていました。
    役割が被るPEN-Fを手放そうか悩んでいるくらい気に入りましたよ。

    OMサンのカメラはいろんな意味で硬すぎる気がして、親しみやすさは致命的に欠けていますよねえ。
    OM SYSTEMというブランド名が硬いし、コンピュテーショナル~も、もう少し軽い言い回しはなかったのかなと。
    なんというか、カメラを知らない人が製品ページを見てもこれではワクワクしませんよね。
    いっそフルサイズ持ちのサブ機、2台目3台目ポジションを狙った方がいいと思うんですけど。
    良いカメラを作っているのにブランディングが噛み合ってなくて勿体ないなあと思います。

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