兵庫県豊岡市 七品のかつら

FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 32-64mm F4 R LM WR

先日紹介した豊岡市の「万劫の大カツラ」のすぐ近く。やはりこちらにも立ち寄らねばなりません。
既に車を停めた神鍋渓谷公園駐車場から遊歩道を歩いて2、3分ほどの位置にそびえる「七品(ななしな)のかつら」です。

神鍋渓谷公園駐車場までは万劫の大カツラの記事で記載したので省略。
一ツ滝と観瀑台のちょうど間に七品のかつらの文字が。滝とカツラの巨樹の共演か…と否応なしに期待が高まります。

なおこのマップで見ると周辺一帯実に風光明媚な散策路に見えますが、実際は荒れ果てているため必ずクマ鈴を携行してください。
元々それなりに荒れていたところに数年前の巨大台風直撃。
以後2023年11月現在も駐車場から先の村岡町方面への道路が通行禁止になっており荒廃度が急速に加速しています。
(10年前、いえ、5年前に書かれたブログ記事を鵜吞みにして車で村岡町方面に突撃するとえらい目に遭います。ご注意を。)

到着!
したものの、対面した瞬間の率直な感想を述べるなら「どう眺めてよいやら分からない。」でした。
たしかに美しい。でも…と付け加えたくなる景色。

肝心のカツラの巨樹が単純なサイズだけで見ると先の「万劫の大カツラ」に大きく見劣りすることも影響しているかもしれません。
発見してからの2~30分ほどは目の前の景色をどう味わっていいか分からず、ただただ困惑していたような気がします。

しかし眺めるうちに気付きました。単幹でここまでの大きさにまで育ったカツラを余所で見たことがあったか?と。
急斜面にへばりつくようにどっしり構えた単幹の大カツラ。これは初めて見る景色ではないか。

幹の真下に潜り込んでみる。
おおお…これは物凄い迫力だ。もしこの瞬間幹が倒壊したら?と脳が警戒レベルを上げるのか、自然と全身が粟立つ感覚があります。

株立ちですらっと伸びる繊細で流麗、文化部所属の女子的な?イメージのものが多いカツラの巨樹。
しかしこの七品のカツラはもっとマッシヴな体育会系で、どちらかといえば山奥のトチノキとでも対峙しているかのような気分になります。

ああそうか。最初このカツラに対して戸惑ってしまったのは、対いつものカツラの巨樹を想定してやって来たからに違いない。
対トチノキの巨樹を想定していたらもっと自然に受け入れることができたような気がします。

多くの着生植物に寄生され野趣に満ちた立ち姿。私はこの巨樹に日本一マッシヴなカツラの称号を与えたい。
解説板が存在しないため名の由来は不明ではあるものの、「七品」は多くの種類の着生植物と一体化したその姿を現していると考えて間違いないでしょう。

我が京都府にも「七色の木」と呼ばれる同じようなカツラの巨樹が存在します。
(七色の木は何度も訪問しているけど、未だに満足できる写真が撮れず未掲載の状態…)

一見モミジなどの乗っ取られて樹勢があまり良くないように見えますが、心配ご無用。
空を見上げると周辺の領域は完全にこのカツラによって支配されていることが分かります。

三脚なし、手持ち1/5秒でも中判デジタルで容易に撮影できてしまう令和の科学力に感謝を…
写真に写り込まないので伝わりにくいかと思いますが、周囲一帯には大量の水飛沫が舞っています。
少しカツラの下に立っているだけで全身がしっとり湿っていく。

訪問したのが蒸し暑い7月の午後だったこともあって最高の心地よさでしたね。
何度もタオルを川の水に浸し、汗まみれの顔を拭ってふうっと一息つく。まさに生き返る心地です。

秋の黄葉も素晴らしいものだろうと想像できますが、やはりおすすめは夏場の避暑。
それも滝の水量が増す雨の日の翌日だとマイナスイオンの心地よさは最高潮となるでしょう。
ただし夏場はこの写真のように周辺が茂りすぎてしまい、カツラの樹形が分かりにくくなってしまうのが難ですね。

2023/7/3訪問
「七品のかつら」
樹齢 不明
樹高 目測15m前後
幹回り 斜めに突き出しているため計測箇所によって変わりそうですが5~6mほどでは?

兵庫県豊岡市日高町万劫

6件のコメント

  1. 滝との共演が素晴らしいカツラですね。
    一般の人は100%滝にしか目を向けないと思いますが、我々にとっては貴重な光景です。
    どちらも見てヨシ、撮ってヨシの存在ですから興奮せずにはいられないかと。

    確かに単幹のカツラとしての存在感は見事としか言いようがありません。
    真下に潜って見上げた時に、思わず『おおお』と内なる声が漏れてしまうあの感じはたまりませんね(笑)。
    巨樹を前にした時の人間のちっぽけさが瞬時に理解できてしまいます。
    緑一色の世界も生命力に溢れていてイイ、そして黄葉&紅葉している時も見応えありそうです。

    あと何気に滝自体もメチャクチャ良さそうです。

  2. こんばんは^^
    最初の滝を見て「もしや」と思ったらやっぱりそうでした。
    というのも、神鍋渓谷公園は令和元年6月に訪れた場所なのです。
    でもこんなところに名のある巨木があったとは、全く思いもよりませんでした(汗)

    早速その時の写真を確認しましたよ。
    最後のカットと同じような位置で撮った中に、
    右側のせり出した部分が太い幹と共に写っていました。
    偶然とはいえ、一部でも写っていてラッキーです (^^)

  3. > RYO-JIさん
    たぶん…いえ、きっとここを訪れる方のほとんどがカツラではなく滝目当てでしょうね 笑
    私ももしカツラの存在を知らずにやって来ていたら、滝を撮るのに夢中でカツラの木には気付かず帰ってしまいそうです。

    巨樹としてはまだまだの大きさですが、株立ちになって中心の主幹が朽ちるものが多いカツラの中で
    このようなドンと構えた立ち姿のものは希少な個体ではないかと思います。このまま100年、200年生きてくれたら
    巨樹ランキングとは別のベクトルで非常に見応えある巨樹に育ってくれるかもしれません。

    兵庫の山間部もいい滝が多いんですよねえ。
    全国各地で熊フィーバーな今年は遠慮しておきますが、また改めて滝ハイキングにも出かけてみたいです。

  4. > れもんさん
    本当にれもんさんの知見の深さと行動範囲の広さに驚きを禁じ得ません 笑
    まさか神鍋高原エリアにも行かれていたとは本当に驚きです!

    いえ、このカツラ気付きませんよねえ。私も事前調査なしに滝目当てで訪れていたら滝に夢中で気付かなかったと思います。
    以前近くの「天神社のトチノキ」に来たことがありまして、その際の下調べで知ったカツラの巨樹でした。

    そういえば来週早速、友人と例の湯浅を歩き回って来る予定です。
    和歌山市でお酒を飲む以外ノープランでしたが、おかげさまで充実した旅になりそうです。情報ありがとうございました。

  5. 滝の傍らに巨樹。浮世絵の名所絵みたいなバッチリ感。
    アクセスや周辺状況からして秘境感高いですが、ダイナミックな滝と四角く立体的な岩の造形もまたかっこいい。

    水が削った土地に多いはずのカツラですが、こうして宙に身を乗り出すようにして生きている個体はあまり見ませんね。
    しかも単幹。幹を太くしないとまるごと持っていかれるのかもしれませんが、単幹では十分太いと思いますね。
    多種多様な植物に着生されているから「七品」というのか? などとも思いましたが、確かにカツラ巨樹には珍しいごつごつした印象を受けるのも目に珍しいです。
    この先寒くなっていって、滝の飛沫やマイナスイオンとともにカツラの甘い香りがたちこめるんだろうな……と、視覚以外の味わいもイイ。と想像しました。

  6. > 狛さん
    滝+巨樹はありそうで意外と見かけない組み合わせですね。
    今回は最小限の撮影機材で臨みましたが撮り方を変えたら色々楽しみが広がりそうな気がします。

    水源に身を乗り出すように伸びるカツラさん。
    いやいや根を伸ばさないと、あんたが伸びたところであまり意味がないんだ…とツッコミを入れたくなります 笑
    荒々しい立ち姿。この方はどちらかといえば東北の山奥で育つカツラに系統が近いのかもしれません。
    今くらいの時期は黄葉の見頃かもしれませんね。もう少し周辺を整備してくれたらお弁当を持って眺めに行くと
    最高の時間が過ごせそうです。現状だとベンチに落ち葉と土砂が積もっていて、とても座る気にならなかったので…

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