徳島県徳島市 五滝入口のカツラ

FUJIFILM GFX50S II / FUJIFILM GF 32-64mm F4 R LM WR

ずっと見に行きたいと思いながら、どうせ見るなら春か夏。緑が美しい時期がいいとタイミングを窺っていた(まま忘れつつあった)カツラの巨樹。
徳島市の南の端っこ「矢多の五滝」への遊歩道入口に位置することから「五滝入口のカツラ」と呼ばれているらしい。

今回久しぶりにこちらの近くの「速雨神社のクスノキ」を再訪しようと考えていたタイミングで、いつも徳島県の巨樹について貴重なコメントを下さる123さんから偶然にも「五滝のカツラは…」というコメントをいただき、そうだ!速雨神社のすぐ近くに五滝のカツラがあるじゃないか!と思い出した次第。毎度のことながら私の人生は他人様の親切のおかげで成り立っているなと…

再訪した速雨神社のクスノキ(これも後日記事にまとめよう)の麓で一息ついて矢多の五滝へと車を走らせます。

五滝入口へと続く林道。(こちらは帰り道に撮影した写真です)
GoogleMapsにも登録があるので迷うことはないかと思いますが、ぽつぽつ点在する民家が見えなくなると離合困難な狭路に突入します。
大した距離ではない上に交通量はほとんど皆無。土日であっても対向車とバッティングする確率は低いのではないかと。

とはいえ、油断しているときにかぎって不運は訪れるもの。
見通しの悪い狭路を100~200mくらいはバックすることも覚悟して通行した方がよいかもしれません。
まあこんなところにわざわざでっかい車で乗り付けてくる奇特な人もいないとは思いますが、焦らずゆっくり行きましょう。

「矢田五滝」の看板と橋。この手前の路肩に駐車スペースがあります。
一応車の轍がありますが恐らく林業従事者の軽トラ走行用の林道だと思われますので、素直に駐車スペースへ停めた方がよろしいでしょう。

橋から眺めた渓流。うおお…涼しい。なんという圧倒的マイナスイオン。
この日は35℃を超える猛暑日で私はもうここに到着した時点でグッタリしていたのですが、一気に生気を取り戻した気分です。

あ、それっぽくスローシャッターで撮影してみましたがもちろんこれは五滝でも何でもありません 笑
滝までは入口から往復1時間程度のコースになっているそうな。今回訪問時間が遅めだったため滝は諦めざるを得ませんでした。

橋からほんの少し歩くと早速、林道沿いに巨大なカツラが!!
これはイイ。カツラの右手には先程の渓流。
ここにいると気温が5℃くらいは低いのではないか。すうっと汗が引いていくのが分かります。

環境省の巨樹DBによると幹周9.6m、樹高は約22m。
国内ランカークラスにまでは至らないものの十分にデカい。
渓流の側に生えるカツラの巨樹は苔生した樹皮が太古から生き残った首長竜のようで格好いい。

こちらは裏側から。
敢えて苦言を呈すなら、私の基準からすると「一個体の巨樹」として認識するには今ひとつまとまりに欠ける感は否めません。
基本的に株立ちの姿をしたカツラの巨樹の幹周云々を細かく語るのも無粋ですが、どこをどう測定したら9.6mだったのかなと…
これはまあ、決してこのカツラにかぎった話ではないのですけど。

なんと言いますか、カツラの巨樹ってリストの数字を見て頭でっかちに考える類の樹種ではないような気がしますね。
考えるんじゃねえ感じるんだ、みたいな。ロジカルな思考ではなく感覚だけで向き合いたい。

幹周が5mだろうと20mだろうとどうでもいいではありませんか。(そこまで差があると流石にどうでもよくはない)
ただ巨大な首長竜の群れを眺めて、原始の森に還ったかのような緑のカーテンに包まれるだけでいい。

似たような写真を一体何枚撮ったのだろう。
でもそれでいいんです。ただ天を仰いで深呼吸し、無心にシャッターを押し続ける。
果たして日常生活の中にそんな時間がありますか?私にはないなあ…
こんな素敵な時間を過ごせるだけでも来る価値がある。と私は思うのです。

幹の栄養が分散しないようにひこばえは丁寧に手入れされていました。
ひこばえだらけで竹ぼうきみたいになった荒々しい野生のカツラもいいものですが、地域の人々に愛されるカツラだっていい。
これから一層大きく育ってもらって私みたいなひねくれ者に「まとまりが今ひとつ」なんて言われない、偉大な大カツラになってほしい。

気温も35℃を超えるといくら水を飲んでも体がどうも熱っぽい。
首に巻いたタオルがわりの手拭いをこのキリッと冷えた渓流に浸して顔を拭う。
あの気持ちよさを今でもはっきり思い出すことが出来ます。
あれは大自然の奇跡と言ってもいい心地よさだった…

カツラの巨樹のおすすめ時期はやはり緑の天蓋が楽しめる春~夏ですが、渓流沿いのカツラに関しては圧倒的に夏がおすすめかなと。
川の流れがあって蚊もそこまでいないことが多い(皆無ではない)ので季節感までじっくり味わうことができます。

次回はもう少し時間に余裕を持って、のんびり滝めぐりも楽しんでみたいものです。
四国の東側としては珍しいカツラの巨樹。山奥にあることの多いカツラとしてはアクセスもよい方で、なかなかオススメ度は高いです。

ぜひ近くの「速雨神社のクスノキ」と合わせて回ってみてください。
速雨神社はクスの巨樹もさることながら周辺の風景がまた最高なのです。

2023/9/13訪問
「五滝入口のカツラ」
樹齢 不明
樹高 22m
幹回り 9.6m

徳島県徳島市八多町鹿ノ首

6件のコメント

  1. この季節、どうしても冬季ウツみたいになってますが、豊富な潤いとカツラの旺盛さに生き返る感じがしますね。暑さも恋しいくらい……とはまあ、言い過ぎかもしれませんが。
    「ヤタ」「ハヤサメ」と、なんとも神道を感じさせる音に誘われますね。これは何かあるに違いない!と。
    林道が素人さんお断り感を発していますが、マニアはなおいっそう、何か絶対にあるぞ! と思ってしまう雰囲気です(かなり迷惑)。

    均整を無視し、でかい岩をぐいぐい押しのけて育ちまくっている。これぞまさに半野生のカツラ特有の良さですね。
    彼らの立ち姿がまた森の暗さや妖しさを増すところももちろんあるとは思いますが、ここでは生命感の方が上回っていそう。
    カツラの場合には秋の明るさもありますしね。
    にしても、どうしたらこんな細長く伸びてバランスを取れるのか、見るたび不思議に思う……to-fuさんが比喩している首長竜にしても、考えてみればヘンテコな生き物ですよねえ。笑
    しかし、そう書いてみると、それは所詮人間がこれまで知ったものの平均値に当てはめたものでしかないと気づく。
    野生のカツラや首長竜からすればそれが自然で理にかなってるわけで、人間の方がよっぽどヘンテコな存在のはずですね。

  2. > 狛さん
    私なんか年中真冬でもいいと思ってしまうくらいの冬フリークですが、それでもたまに暑さが恋しくなりますね。
    国生みの伝説によると四国は淡路島の次に造られたそうですし、あまり注目されませんが歴史マニア的に見ても楽しめる
    名所だらけだと思うのです。年末参拝した讃岐国二宮の大水上神社なんかも起源は弥生時代から、なんて言ってましたっけ。

    カツラは何故これで簡単にポキポキ折れてしまわないのか不思議で仕方ありませんね。
    (いや、たまに倒壊して横たわる幹も見かけるか 笑)
    自壊するために成長して、今度は新たなひこばえがまた自壊するために成長して。一個体の中で輪廻転生を繰り返しながら
    知識と知恵を蓄えたカツラって、我々が思うよりずっと賢い仙人のような存在なのかもしれません。
    彼らから見たら人間なんて回し車を必死にカラカラ回すハムスターと変わらないのかも…

  3. 原始の森というワードだけで行きたくなりますね。
    この緑のカーテンの下にいる心地良さは言葉では言い表せないと思ってます。
    しかもすぐそばを清流が流れているだなんて出来過ぎです。
    もちろん最大の目的、このカツラの存在があってこそだと思いますが。
    確かにカツラは評価が難しい樹種なのかもしれませんね。
    幹周自体がそれほど意味をなさないですし、『どう感じるか?』が大事という気もします。
    生存環境によって姿を大きく変える樹木の醍醐味が味わえそうなカツラだと思いましたよ。

  4. > RYO-JIさん
    真夏の渓流というだけで心地よさは異常ですからね。
    そこに大カツラまであるのですから、我々愛好家としてはたまらないです。

    カツラの場合幹周だけ見て訪問すると拍子抜けするパターンも多いので難しいですね。
    いや、たしかにまとめてぐるっと測定したら15mかもしれないけど、まあ。みたいな。
    難度の高い山奥の個体だとそこに至るまでの苦労もスパイスになったりするので、別に巨樹だけを見て
    評価しなくてもトータルの体験として感じるものがあれば十分価値があると思っています。

  5. いやはやまさかそこまで大きな特徴がある訳でも全周が凄い訳でも無いのに来て頂けるとは・・・
    確かに桂としてはアクセスはしやすいし雰囲気も良いんですが

    私的には密集感があれば一本の幹回りはそれなりでも結構好きなんですけどやはりここらは個人差が大分ありますよね
    この場の桂は最後の画像の手前の桂の方が纏まり感だったり、全周は5m超程度ですけど主幹自体は太いかも知れません
    ちなみにこの桂は奥の方でも全周7mを超える程度だったかと思います
    9.6mはもしかしたら当時4本全て個別に測って足した数値か、将又この周辺の方々の愛で増したのかも

  6. > 123さん
    いえいえ、あの恐ろしい暑さの中おかげさまで最高の避暑になりました。
    カツラもとても良かったですよ。手前の巨木も含めて今後が楽しみなカツラですね。

    カツラの巨樹は大物ほどとっくに主幹が朽ちて支幹だけになっているものが多いので、愛好家の中でも評価が
    分かれる樹種だと思っています。個人的には環境省の測定基準と照らし合わせてどうだろうが、
    実際に見たときの迫力があればそれで十分でないかと思います。

    9.6mは愛による「増し」が大いにありそうでしたが、地域の方々に愛されるのがよく分かるカツラでした。
    市街の中心部からそこそこの距離でこのようなカツラや「速雨神社のクスノキ」が眺められる環境が羨ましいです。

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