福井県勝山市 岩屋の大杉

FUJIFILM X-Pro2 / XF 16-55mm F2.8 R LM WR / Film Simulation PROVIA
SONY α7II / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

永平寺の道の駅で仮眠を取り(1時には到着してたのに神経が繊細なto-fuさんは雨がうるさすぎて全然眠れなかった)5時起床。相変わらずの大雨に凹むも、まあ雨なら雨で巨樹が綺麗に見えるし別にいいかあ…なんて気楽に顔を洗ったりコンビニで朝飯を調達しつつ、大雨の影響で柴犬サイズの落石がゴロゴロ転がる山道に怯えながらも6時には無事現地に到着しました。

ここ「岩屋の大杉」は福井県が誇る巨樹群の中でもちょっと別格でして、何となくここに来ずして福井の巨樹語るべからず的な強迫観念すら感じる、福井巨樹帝国の皇帝と言えるでしょう。当然ずっと気になっていたんですが、ホント遠いんですよ。勝山って。京都市内からだと名古屋に行くよりも遠いですからね。ずっと先延ばしにしていたわけですが、あの高井の千本杉を有する奈良県のRYO-JIさんをして「to-fuさん、あれは行っといた方がいいですよ。」なんて言わしめる巨杉は一体どんなものなのか。気になるに決まってるじゃないですか。もう欲求を抑えることなんて出来ませんでした。約200kmって実際来てみると大した距離じゃないですね。

さてさて…どこにあるのかな。なんて境内を探し回っているときの高揚感。そして拝殿の影から突如その目に飛び込んでくる巨大な塊を発見してしまった瞬間の興奮。ああ、これが味わえるからやめられないんだよな。

それなりにウラスギを見てきたつもりではいましたが、やはりこの巨スギは別格でした。この押し潰されそうなまでの迫力。樹齢を考えるとスギの巨樹としてはまだまだ中年といったところかもしれませんが、樹皮にも古木特有のうねりが見られて見応えは充分です。

伝承によるとかつて幹は12本あり、不届きな輩が6本の幹を切ってしまったところ白龍が現れて残り6本の幹を守ったのだそうです。以来その麓には白竜が住んでいると言われていて、実際昭和42年に巨樹の修復を試みた際には白蛇が現れたのだとか。少し引いて眺めてみると、確かに数本の幹が欠損しているように窺えました。ただでさえ尋常ならざる迫力の岩屋の大杉。これで幹の欠損さえなければ国の天然記念物に指定されていたかもしれません。

福井県の中でも特に雪深い嶺北地域に位置する勝山市。その幹は雪の重みに耐えてググっと折れ曲がりながらも、しっかり天を目指しています。写真ではどうしてもスケールが分かりにくいかと思いますが、この左側にせり出した幹の太さは大人が雨宿りするのに充分なもの。大雨が降りしきる中、雨脚が弱まったタイミングを見てサッと撮影していたので、この幹には本当に助けられました。

雨宿りしながらそっと上を眺めてみる。こうして見ていると押し潰されてしまいそうで少し怖く感じますがその場にいると不思議と恐怖感は無く、スギに守られているような温かさを感じます。勘違いなのかもしれないけれど、こんな天気の日によく来たなあ。まあゆっくりしていけよ。なんて労ってくれているような気がするのです。

根元には3体の観音像が。元々は鎌倉時代末期に作られた5体の観音像が安置されており、なんとその5体全てが盗難にあってしまいました。現存する3体は再現されたレプリカなのだとか。人の願う気持ちさえ変わらなければ対象がホンモノであれレプリカであれ何ら支障は無いように思いますし、実際ここの温かさはこの観音像たちが放つものなのかもしれません。

本当に凄い迫力。この岩屋の大杉に会えただけでも遠路はるばる勝山までやってきた甲斐がある。

雨は本当に邪魔くさいけれど水滴したたる樹皮は巨大生物のウロコのようでもあり、ある種妖艶とも言えるこの姿を見てしまうと雨で良かったかもなあなんて納得してしまうわけで。

雨脚がさらに強まってきたので次に向かうことにします。心惜しいけれど仕方ない。

雨の日の巨樹は撮影する分には最高なのかもしれない。でも、ゆっくり向き合おうと思うと晴れているに越したことないですね。

いくら何でも雨が酷すぎたので今回は岩屋の大杉と飯盛杉を最短ルートで回るだけしか出来ず、不完全燃焼だった感が否めません。雨音でクマ鈴の音がかき消されるので、深入りするのはちょっと怖かったんですよね。まあ見尽くせなかったからこそ次の楽しみも出来たわけで、次回はもう少しまともな天気の日に訪れたいと思います。

それにしても今回の巨樹巡り…防塵防滴ズームを買った直後で良かった!防塵防滴じゃなかったら確実に浸水してぶっ壊れていたはず。危ない危ない。

岩屋の大杉
勝山市指定天然記念物
樹齢 約500年
樹高 33m
幹回り 17m

福井県勝山市北郷町岩屋11-12-2

6件のコメント

  1. ええっ!? 嘘、もう行ってきたの!? とびっくりでしたが、こちらの記憶が冷めないうちに感想が交換できるのはとても嬉しいことです!
    福井の巨樹皇帝。確かにその地位にいるのはこの大杉だと思いますね。実力(?)でもオリジナリティでもダントツだと感じました(各県の代表巨樹を考えてみるのは面白い……)。
    「高井の千本杉」VS「岩屋の大杉」では……って、何を比較すればいいのかわかりませんが。笑
    これだけののしかかり感と巨大さですが、そう、真下まで行ってもそこまでおっかない感じはしないんですよね。
    とって食われるような危機感も感じなかったし、背を向けたらやばいものが襲いかかってくるような気配もなかったし。
    単純にウワーッと圧倒されてその後がとても清々しいのは、この樹の徳だと思います。
    画面が濡れているようで苦労しながら撮られたのが伝わってきますが、雨宿りできたのはいい思い出になったのではないでしょうか(いい話)。
    あの岩山の上に登らなかったのは正解だと思います。雨にあそこはすごく危ないはず。
    ああ、岩屋の大杉、もう一度見に行きたいですね……ソースかつ……はまあ置くとしてもね。笑

  2. > 狛さん
    これ凄いっすねえ…もう凄いとしか言葉が出てきませんよ。
    ただデカいだけではなく個性もある。(初見は昨年ご一緒した京都の「平安杉」に似てるなあと思いましたが、平安杉から感じた野生の荒々しさよりも、もっと温かみを感じる巨樹ですね。威圧感はしっかりあるのに不思議です。)
    完全な主観だけで決める各都道府県のベスト巨樹、面白そうですねー。
    狛さんやRYO-JIさんのものも、諸先輩方のものも気になるなあ。結構ばらつきが出るんじゃないでしょうか。

    ここは絶対に再訪すると思います!
    無理に特攻して中途半端な印象を残さないよう敢えて回避したポイントが結構ありまして、もう一度行ってもまだまだ楽しめそうです。(巨樹以外にも酒蔵とか色々ありますしねえ…)

  3. 3体の観音像がレプリカですと!
    そんなこともあるんだと驚きつつも、その情報を仕入れたto-fuさんのリサーチ力にもっと驚きました(笑)。
    そっか、この観音像たちから発せられる何かがあって温かみを感じたのかもしれませんね。

    この岩屋の大杉は本当に素晴らしい巨樹でしたね。
    一回目は完全に浮足立ってしまい、その迫力や姿、インパクトなど見た目だけにしか目がいかなかったかもしれません。
    私もこれは絶対にまた見に行き、次は冷静に対峙したいです。
    でもなぁ、また興奮して「スゴイスゴイ」だけで終わってしまいそうです(笑)。

  4. > RYO-JIさん
    そうなんです。元々は5体あったものがゴッソリ盗まれたらしいですよ。
    仏像なんて罰当たりなものを、それもこんな山奥にまで盗みに来るような人間の気持ちは死ぬまで理解できそうにありません。そこまでしてお金欲しいですかね…

    僕もとにかく迫力に飲まれたまま終わってしまったような気がします。
    頭がポケーっとしてしまって、シャッターを押すことすらどうでもよくなるようなインパクトでした。
    この大杉とは何度向き合っても対等に対峙できる気がしませんねえ…

  5. 今、福井の記事を全て読破しました!
    一本一本の考察とても楽しく読ませていただきました。

    岩屋の大杉は秘境感があり、人は住んでいないのに手入れが行き届いている神社でとても好きです。
    そして思い入れの深い一本

    また改めて他の県の記事も読ませてもらいます。

    狛さん、RYO-JIさんのコメントも多くこんなに巨木を愛している人達がいたことに
    嬉しくて嬉しくて何だかグッとくるものがありました。

  6. > 小山さん
    読破!恐縮です…
    福井の巨樹は今見返すと写真も文章もイマイチなので、いつか改めて回りたいと思い続けています。
    近いだけに後回しにしてしまいがちで。

    私も初めて小山さんの存在を知ったときは同年代にこんな方がいたなんて!と感動を覚えました。
    小山さんが仰っていたように、我々の世代で少しでもWeb上の情報をアップデートしていきたいですね。

    実は私もあれ以降小山さんのサイト、インスタを改めて拝読しています。影響を受けて早速志々島にも宿泊してしまいましたよ。
    またどこかでお会いして巨樹について語り合えることを願っています!

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