- 2018-12-10 (Mon) 22:05
- SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G | ビャクシン(イブキ) | 兵庫県 | 巨木たち(地域別) | 巨木たち(樹種別)
SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G
夜明け前に相生市の「道の駅 あいおい白龍城」を発って、夜明けとほぼ同時に着いたのがこの苔縄駅近くにある法雲寺。近畿圏の巨樹を巡る者にとっては非常に有名なビャクシンの巨樹が立つ名刹です。いつか来なければとは思っていたんですが、まさか日帰り(車中泊なので半1泊みたいなものですが)で訪れることになるとは思いませんでした。ほとんど岡山県との県境みたいなところですからね…
苔縄の集落をカーナビ頼りに辿ってきたところ、終着点はどう見てもお寺に住む方の私用の入口…当然早朝だけあって門戸は閉じられ、いかにも「寝てます。空気読んでね。」という体だったもので、ビャクシンを目の前にしてこれはどうしたものかとしばらく悩むことになります。しかし待て。他に入口があるのではないか?まあ無いにしても時間はいくらでもある。歩いて回ってみようじゃないか。ということで細い路地を一旦バックで戻り、地元の自治会館のようなところに駐車させていただいて徒歩で裏手に回ってみることにしました。予想通りというか何というか、やはりもう一つの入口を発見。こちらは扉が開いていましたので、遠慮なくお邪魔させてもらいます。
「法雲寺のビャクシン」
日本最大のビャクシンです。が、正直なところ頭上のあたりで4股に分かれているため幹周9.8mの数値ほど大きな印象は受けませんでした。初見の迫力だけで言えば以前愛媛県で見た「下柏の大柏」の方がずっと凄まじかったように思います。しかしこちらも当然なかなかのもの。ビャクシンの古木特有の樹皮のうねりも充分に楽しめます。
この法雲寺はかつての武将、赤松円心が菩提寺として開いた臨済宗の寺院。ビャクシンの巨樹も赤松円心お手植えだと言われています。推定樹齢700~800年。実際に巨樹を見る限りでもこの樹齢がそう大きく離れているとも思えず、このお手植え伝説は結構信憑性が高いのではないかという気がします。かつては多くの高僧が住持を務め、諸山・十刹という寺格の高さを誇る名刹でしたが、赤松氏の勢力が衰えると共に衰退していくことになります。江戸時代中期に円心の末裔らによって円心堂が建てられて以降は長い間荒廃しきっていたのだそうです。昭和58年に地元の有志によって再建されたもの、つまり歴史的に見ると最近になって再建されたものが現在の法雲寺だということです。きっとこの立派なビャクシンの巨樹も廃寺に放置されていたのでしょう。何ともったいない。
この樹皮の細やかなうねり。ビャクシンの一番の見どころは絶対にここでしょう。日が差すことで陰影が生まれ、幹が一層重厚で立体的なものに見えるのです。
苔生したうねるような幹は如何にもずっしりと中身が詰まっているように見えました。ビャクシンという樹種自体がスギやイチョウ、クスノキのように馬鹿でかくなるものではありません。ただこの密度というかズシッと詰まっている感は、逆にそれらの樹種には見られないものだと思います。イチイの巨樹が持つ凝縮感と少し似ているような気がします。
4股に分かれているため、それぞれの角度から眺めるとまた少し違った雰囲気にも思えます。先輩方のサイトを拝見した限りではかつて5股に分かれていたようですが、残念ながら1本は折損してしまったのかもしれません。
折損した幹の一部と思われるものが主幹に添えてありました。生命を失ってから結構な時間が経過しているように見えるものの、その密度や硬質さは未だ健在でした。水が抜けてスカスカになった感じや逆に水を吸いすぎて土くれのようにポロポロ崩れる感じが一切しない。なんて強靭な木なんだろう。このビャクシン、木材としてはやはり「年輪の幅が狭く、材質は強い。硬く、粘りもある」のだとか。うん、触れれば分かりますよこれは。
根回りもゴツゴツして格好良い。まるで竜のウロコのよう。4つ首の巨大なドラゴン、そんなイメージ。南天の実がいい差し色になっていて写真映えします。
一体何がどうなっているのか分かりませんが、とにかく凄い迫力です。きっと枝を切るのも大変なんだろうな…と想像したり。竜ですからね。そりゃあ硬いでしょう。
少し離れて眺めてみると意外に樹高がありました。多少の傷みは見られるものの樹勢は良く、こうして全体を眺めてみてもまだまだ健康そうに見えます。ビャクシンの巨樹はわりと希少なので、このままずっと健康な姿を保っていただきたいものです。
ビャクシンの巨樹の良さももちろんですが、時おり単行車両の電車が通り過ぎるのがとても絵になる集落でした。早朝の冷たいキリッとした空気と柔らかい朝日が非常に心地良かったのを覚えています。車で忙しなく回るよりも電車でのんびり巡る方が、空気に馴染んで落ち着いた時間を過ごせるような気がしますね。電車の時間まで30分散歩してみたり、車窓からぽけーっと景色を眺めたりだとか。そんな過ごし方が似合いそうな集落。次回はもっとのんびりしたい。
「法雲寺のビャクシン」
兵庫県指定天然記念物
樹齢 推定700~800年
樹高 33.5m
幹周り 9.8m
兵庫県赤穂郡上郡町苔縄637
コメント:4
- 狛 18-12-11 (Tue) 19:18
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自分の探訪の背景を振り返ると、アドリブで見に行ったみたいになってしまって、なんだか申し訳ない具合になってしまいました。
この樹が長年放置されていたらしいというのは知りませんでした。
現代の雰囲気しか知るすべがないですが、なんとなく、その間も周辺の集落の人たちがちょびちょび世話を焼いていたのではないかな……などと。
ほっとするような雰囲気のある集落だなあと思ったので、そうだったらいいなと。笑
ビャクシンにも色々あるもので、雲型にうねって育つところがらしいなと思っていると、こういう龍みたいなのが出てくるところがまたすごいですね。
まるで杉の巨樹みたいな存在感だと感じました。
to-fuさんの写真で再び見ても、この太くガサガサした幹なんか、大抵の杉巨樹を押しのける迫力に見えますね。
僕は九州からの巨大楠9連発で頭がおかしくなっていましたが、それでも大きな、かっこいい樹だなと感じました。
兵庫の南側ルートでは無視することのできない巨樹だなと思います。 - to-fu 18-12-12 (Wed) 22:14
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> 狛さん
僕も車で関東まで行ってみたから何となく分かるんですが、決して見方が雑になるわけではないんですけど、それでも余りに多くの巨樹に会いすぎるとやっぱり頭の中がフワフワになりますよね。頭の中にも疲労が蓄積されてて感性にうっすらモヤがかかったような状態になっちゃうんです。宿屋に泊まると多少は回復するんですけど、それでもやっぱり僕ももう一度しっかり見に行かないと、と思う巨樹が旅路の中にたくさんあります。
ビャクシンはいぶし銀というか、何本も見ていると結構奥の深いヤツだということが分かってきますよね。
この方なんかはわりと素直に伸びている印象です。何かもう捻くれてるのか、ウネウネ全身でうねってる奴もいますから。
シイさんやカシさんと一緒でなかなか主役になれない樹種だと思いますが、この辺の巨樹をスルーしちゃうと本当にもったいないぜ…と思いますね。 - RYO-JI 18-12-12 (Wed) 22:21
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4つ首の巨大なドラゴン・・・もうこのフレーズだけですべてを理解できました(そんなこたぁない)。
近辺にビャクシンの巨樹はなく、まだ目にしたことのない樹種です。
和歌山にいくつかあるようで狙ってはいるんですが、諸先輩方の写真を見る限りそれらはドラゴンのイメージはまったく無かったですね。
サイズがこれほど立派じゃないからかもしれませんが・・・。
そしてこのビャクシン、狛さんが記事にされた時から気にはなっていました。
ただ中には入れない(入りにくい)という疑念があって、仮に近くに行く機会があっても諦めるつもりでした。
しかし、なんですか、その裏口入学ルートは?(違う)
それを知って俄然行く気になってきますね(笑)。
樹皮の模様が他にはない感じがしていいですね! - to-fu 18-12-13 (Thu) 21:24
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> RYO-JIさん
ビャクシンの巨樹って結構少ないですよね。
一応近場だと京都と滋賀で見かけましたが、どちらも巨樹というにはちょっと迫力に欠ける代物でした。
和歌山の串本や田辺のものは結構立派そうですね。僕もいずれ行きたいなとチェックしてあります。
しかし和歌山は京都からだと高速を使ってもアクセスが悪いんですよねえ…大阪は通りたくないし。
入りにくいのは早朝だけだと思われるので大丈夫ですよ。
僕と狛さんの活動時間が異常なだけで、お寺は至って普通のお寺のはずです 笑
近くに「佐用の大イチョウ」や「三日月の大ムク」もあるので、暖かくなって葉が付いてからがオススメです!
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