大阪府泉南市 岡中鎮守社のくす

SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

先月和歌山県から大阪府へ抜けた際に寄ろうかどうか悩んだものの、ルートから少し離れていたため訪問を断念した巨樹。都市部の巨樹は地図上で見ると大した距離じゃなくても、いざ向かうと渋滞で簡単に1時間くらい要したりするので困ったものです。つい先日勝山市まで行ったばかりではありますが、ちょうどぽっかり仕事が空いたので今回訪問してみることにしました。道は…やはり混みますねえ。大阪の巨樹を回っていると車を乗り捨てて電車や自転車に乗り換えたくなります。

岡中鎮守社自体は幹線道路から少し離れた泉南市の郊外に位置します。ナビを頼りに近くまでやって来ましたが、案内されたルートはどう見ても普通車が侵入できそうもない感じ。仕方なくグルグル迂回路を探していたら随分と離れてしまいました。目的のクスはあれで間違いないでしょう。遠目にもよく目立ちますね。樹冠の美しい、非常に立派なクスノキです。

面倒くさくなったので開けたスペースに車を停めて現地まで歩きましたが、やはり迂回路があって神社の脇には駐車できそうなスペースも設けられていました。それにしても凄い。もう完全に神社の敷地から身を乗り出しています。大枝が隣接する道路はおろか、隣の児童公園や民家にまで余裕で達していました。天然記念物指定されているから簡単に伐採できないという理由もあるのでしょうが、地域に大切に扱われている証拠でしょう。人々の生活に寄り添う巨樹。この光景を見ただけで、雨の中はるばる遠方まで来た甲斐があったなあと満足出来てしまいます。

本殿の裏手に回って早速巨樹と対面。おお、これはなかなかのクスノキじゃあないか。一本の主幹がズドンと空に伸びるのではなく、クスにありがちな根本で大きく枝分かれするタイプ。100年ほど前の神社合祀令で伐採されてしまうまでは辺り一面鬱蒼とした森林だったそうですが、よくもまあこれだけ大胆に横へ横へと枝を伸ばせたものです。現在はこのクスと真横のイヌマキ(こちらも大阪府指定天然記念物)以外の木々が全て伐採されているので伸ばし放題かもしれませんけど。

先程の大きく付き出した枝を麓から眺める。真下に駐車して大丈夫なんだろうか…とちょっと心配になってしまいますが、その辺も地元の方とクスとの信頼関係の賜物なのかもしれません。(たぶん違う。)もしくはガレージの屋根的な?

反対側から根元部分を撮影。この地面からたった1m少し突き出しただけの幹があの森のようなクスノキを支えているわけですから驚くより他ありません。地中はこのクスノキの根で物凄いことになっていそうです。

地中と言えばこのクスノキの近くでは中世の寺院跡が見つかり、境内からも瓦や土器が多数出土しているそうです。鳥居の前に設置された「天然記念物 岡中鎮守社のくす」の石碑も最後の「す」の文字が地面に埋もれてしまっており、これは遺跡を発掘して埋め直した際に少し埋めすぎてしまったからなのでは?と想像します。それにしてもクスの根を傷つけないように発掘作業を行うのはさぞ大変だったことでしょう…

樹勢は旺盛。枝の欠損等も目立たず、葉の付きも良い。とても健康的です。推定樹齢800年ということですが、今後まだまだ大きくなるに違いありません。いずれこの辺りにも新興住宅が立ち並ぶのかもしれませんが、クスを邪険に扱わずこれまでどおり上手く付き合ってもらいたい、そう願います。

幹の股の部分からぴょこっと伸びた枝部分。なんというかもうアレな形状で、男根崇拝的なものがあったりするのかな?と調べてみましたが、そのような記述を見つけることは出来ませんでした。玉祖神社のクスの男根様にはお賽銭箱まで置かれていたのに。

そうこうしているうちに雨が上がりました。(またすぐに降り始めるわけですが。)最後に少し距離を取り、最初の位置から全景を一枚。どことなく巨樹との関わり方が門真の「薫蓋樟」っぽいというか、大阪のクスノキって基本的に人の営みと一体になって生きているようで好きですね。決して神様のように扱うのではなく、あくまでも隣人。自分が産まれるより前から生きている集落の長のような。身近なところに巨樹がある生活。自宅の敷地に巨樹を持って育った「安久山の大シイの木」の平山さんが仰っていた「巨樹は神様じゃない。人間と同じ、対等なひとつの生き物なんだよ。」という価値観に通ずるものがあるのかもしれません。いかにも大阪のクスノキらしい良い巨樹でした。次回は夏場など緑がもっと映える季節に訪問したいですね。

「岡中鎮守社のくす」
大阪府指定天然記念物
樹齢 推定800年以上
樹高 30m
幹周り 8.2m

大阪府泉南市信達岡中618

4件のコメント

  1. 大阪にはクスの巨樹が多いとRYO-JIさんも言っておられましたが、本当ですね。
    だいぶ前、スナップ旅行で大阪でto-fuさんとご一緒させてもらった時も、大阪はだいぶあったかいような気がするな……と感じた印象が残っています。
    やはりクスが大きく育つのに適した気候なんでしょうね。

    大胆に道路をまたいでいるこの姿が一番の見せ場ですねえ。こんなことは並の樹にはできないだろ、という。
    確かに、こんなに街中にありながら巨樹になるまで切られずにいるというのだけにしても、周囲の方々の特別な思いがあるからでしょう。
    そう、神様というより、でっかい隣人とか兄弟とかご先祖様みたいに、なあ、とか呼びかけながら誇らしく思っているに違いない。
    平山さんの言葉は、僕もよく覚えてます。神様じゃない、って言ってましたね。
    神社のくせに、切っちまったらもう元に戻らないものだって、わからんのか! 
    ……でも、切ったんなら、俺にくれ。なにィ、くれねえのか、けち! とかって。笑
    自分の原風景の中に偉大な巨樹があるという人は、根本的に感覚が違うんだなあと思いました。
    確かにもっとでかいのや神々しいのはあるだろうけど、一番はやっぱりうちらの樹だわ。みたいな。
    でも、考えてみると、神社やお寺、神様仏様にしても、そういう方々からしてみると、隣人であり身内と捉えているのかもしれませんね。
    でかくて親しい存在。頼もしさ最強ですよね。

  2. 大阪人の気質とクスノキが不思議とマッチするんですかねぇ。
    狛さんが言うように気候的な適正はもちろんあると思いますが、
    クスノキって温かい&元気なイメージがあって、それがより親しみやすいし、
    変に神様扱いせずにどんなものにも気軽に接するという大阪人に合うんでしょうね。
    だからこそ府内に沢山のクスノキの巨樹が残っているのではないかと・・・。
    いや、まぁ、いま勝手にそう思っただけですけど(笑)。

    そしてこのクスノキは凄いですね。
    公共の道路を越えて成長しているのが何だか不思議で。
    というか半分以上境内からはみ出てしまってるし(笑)。
    それでも支柱すら設置してもらって大事にされている様がいいですねぇ。

    後付けで男根崇拝的なアレをアピールすればもっと有難がられそうですけどね!

  3. > 狛さん
    そうなんですよ。
    ランカークラスまでは行かないものの幹周8~10mくらいのそれなりに見応えのあるクスが揃ってるんです。
    海が近くて安定した気候であることと、楠木正成の本拠地であるとか歴史的なこともあるのかもしれませんね。

    道路をまたぐこの姿は流石に圧巻ですよね。気付けばそこのカットだけアホみたいに撮ってしまってました。
    まさにご先祖様という感じで、離れにひいひいひいひいじいちゃんが住んでいるような感じでしょうか。
    身内なんだけど敬意を持って付き合っているかのような。我々の巨樹への接し方とはきっと距離感が違いますよね。

    先日愛知県のクスを訪問したときも地元の方が「愛知県で3番目のクスだよ。」と仰ってたんですが、その口ぶりがもう(ま、一番良いクスはうちのだけどな。)みたいな含みがあったことを思い出しました。何かいいですよねえ、そういう関係性。そういうのってその場で生まれ育って初めて感じられることなので、そういう関係と無縁に生きてきた自分としては憧れてしまいますね。

  4. > RYO-JIさん
    何となく情の深そうなクスノキと大阪人は相性良さそうですよね。
    訪問した大阪の巨樹を思い返してみても、あまり厳正に「へへーっ…」と頭を下げて拝むタイプの巨樹が思い浮かびません。
    何となく幹をよじ登って枝に腰掛けていたとしても巨樹がそれを受け入れてくれそうな懐の深さを感じます。

    神社の敷地外にまで支柱が設置してあるって凄いですよね。
    近隣の方に迷惑だからと無残にもバッサリ切られて主幹しか残っていないような巨樹を何本も目にしてきただけに、こういう光景を見ると本当に嬉しくなってしまいます。巨樹が人の社会で生きる理想形なのかもしれません。

    男根アピールはぜひお願いしたいですね。
    僕なんか心が穢れているからか巨樹を見て真っ先にうわあ…アレだ…と思ったので、帰ってそのような由来を探したら誰もシモ的な話題を出していなかったので切なくなりました 笑

にコメントする コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。