京都府綾部市 君尾山のトチノキ (光明寺の「幻の大トチ」)

SONY α7RIII / SONY FE 24-105mm F4 G OSS SEL24105G

まだまだ若輩者ではありますが、それでも未掲載のものを合わせるとそれなりの樹種の巨樹を見てきたような気がします。実は今まで極力訪問するのを避けてきた樹種があるのですよ。ええ、そうです。それはトチノキ。なぜトチノキを避けてきたか?と言うともちろん、見応えのありそうなな巨樹が無い!とかそんな理由ではありませんよ。大物になればなるほどに立地がえげつない…それがトチノキなんですね。この京都府綾部市「君尾山のトチノキ」もその筆頭です。何しろ先輩方のログを拝見しても辿り着ける自信が一切湧いてこない。山道を歩いた先だ!くらいしか書かれてないと不安ではありませんか。しかし皆一様に口を揃えて言うわけです。「苦労してやって来た甲斐があった。」と。ほら、これはもう行くしかないでしょう。

早速拠点となる君尾山キャンプ場に到着。先人のログによるとそのキャンプ場に駐車して…ということですが、キャンプ場にはチェーンが貼られていて車を乗り入れることが出来ませんでした。ちなみにこの写真の手前がキャンプ場、左奥の車止めの先がトチノキです。ほんの数十メートル右手に進むと車10台は停められそうな広大なスペースがあったので、そちらに駐車すると良いかと思います。私はそこを利用しました。

さて、ここからは山道を散策することになります。結論から申し上げてしまうと実に素晴らしいトチノキでした!ここは絶対行くべき!実は昨年末に石川県で国内最大のトチノキ「太田の大トチノキ」を訪問しているのですが、そちらよりずっと良かったです。(季節外れで葉も落ちていたのでアンフェアではありますが。再訪しないとな。)

車止めのところからたった1km、と思われるかもしれませんが山道の1kmはなかなか堪えます。特に終盤は急勾配の下り道になるので足元には充分注意して下さい。私は復路の登りが特にキツかった…巨樹の周りを駆け回った後ですからね。

1kmの間に何本も真新しい案内板が立っていたので、まず目的地まで迷うことはないと思います。実は私も訪問前はこれが不安だったのです。だって巨樹の先輩方って百戦錬磨の猛者みたいな人ばかり(な印象)じゃありませんか。自分なんかが迷わず行けるのか?と不安に感じて仕方ありません。このトチノキは案内板が立って到達難易度が随分下がったはずです。これらが無かったらと思うと、登山慣れしていない私なんかゾッとしてしまいます。

このカツラの巨樹が見えたらあと少しです。何で分かるのか?手前にあるイラスト入り案内板に書かれていました。カツラの巨樹のちょっと奥にあるぞ、と。

で、ここでまず一発ぶったまげていただきたい。カツラの奥どころかカツラの本当に真裏に立っているわけです。ちょうど死角になって見えなかったんですが、「ふむふむ、なかなか立派なカツラだな…」なんて見上げながら歩いていると、この方が唐突に目の前に現れますからね。いやホント、ファッ!?とかわけ分かんない声を上げちゃいましたから。広角レンズではあの視界に飛び込んでくる感じを再現できなくて本当に残念です。だからこそ、現物を見て大いに驚いて下さい!

幹はとうに朽ち、大きく空洞化しています。近付いて見つめてみると、これがまた物凄い迫力。太古の地層でも眺めているようです。伝承によると樹齢は2,000年。流石に2,000年は眉唾ものですが1,300年と言われる「太田の大トチノキ」より老齢にも見えます。少なくとも1,000年は軽く超えているのではないでしょうか。

洞の中に入ってみました。ああ、24mmレンズでは全然写しきれない。私の機材が誇る最広角をもってしても、ほんの一部を切り取ることで精いっぱいでした。これがもう本当に断崖絶壁に囲まれているかのような迫力なんですよ。

木の表面というよりはむしろ岩の質感に近い。苔生した岩、です。この重圧な質感は。これだけの山奥ですから樹木医に診られることもない、人里の巨樹とは対極の存在と言ってもいいでしょう。野生の巨樹。ただただ悠久の時を生き続ける、自然を丸ごと背負った姿がそこにありました。

しかし洞に入ってみた感想としては、不思議と怖くはない。暖かいんです。きっとこれは大トチノキが岩のような無機物ではなく、あくまでも生きている樹木だからなんでしょうねえ。それこそ、もしこの山で遭難して一晩過ごすことになったなら、私はこのトチノキの洞で眠りたいですね。何か大きなものに抱かれているかのような安心感すら感じられました。

この枝なんてもう鳥肌モノの迫力ですよ。実際目の当たりにするともう恐竜のようで、今にもズシン…ズシン…と動きだしそうな臨場感でした。左向きの顔、角が二本生えてますね。今こうして写真で見てもやっぱり鳥肌が立っちゃいます。

物凄くないですか?でも実物はもっと凄いんですよ。このシダの生えた感じなんか本当に恐竜っぽい。今度は右側が顔、左側が首の付け根。ええ。鎧竜だよ、これ!と一人で騒いでました。アンキロサウルス!!

朽ちて弱っているのかと空を見上げると、若々しい新緑の葉が覆い茂る。全く問題ないぞとばかりの生命感溢れていました。まだまだご健在のようです。トチの葉っぱは良いですね。あの大きさが如何にもパワフルなトチらしい。

幹の質感なんてもう…
もうね、あまりに圧倒的過ぎて言葉なんて出てこない。ほぇ~…とか、はぁ~…とかアホみたいなため息ばかりついていたような気がします。

間近で見ると…ああ、本当に写真を見返しただけで鳥肌が立つ。

本当に文句なしの巨樹。え?トチノキってこんなに凄かったの?もっと優先順位上げなきゃダメじゃん!と思いませんか?私は思いましたからね。俄然他のトチノキの巨樹にも興味が湧いてきました。(気になるほとんどの巨樹の到達難易度が高そうなのが気がかりですが…)

山奥にそびえ立つ、野生の化身。会いに行く価値は十二分にあります。いえ、私は既に「次回はいつにしよう…」なんて考えてしまっているわけで。幻の大トチノキだなんて大層な名前付けやがって、なんて思われるかもしれませんが、これはもう文句無しに幻の大トチノキでした 笑

是非とも多くの方に見て頂きたい巨樹ですが、本当に写真で見るより遥かに急勾配&辺り一帯がツキノワグマの生息地なので充分にお気を付けください。怪我無く楽しみましょう。

2020/5/14 再訪しました。

2019/5/12訪問
「君尾山のトチノキ (光明寺の「幻の大トチ」)」

京都府指定天然記念物
樹齢 伝承2,000年
樹高 23m
幹周り 10.4m

6件のコメント

  1. 京都か……はあー、行ってみたい! と、ため息が出ました。
    もう全くおっしゃる通りで、全国的にも姿を消しつつある大トチは、もはや秘境にしか見られない幻の存在ですね。
    長野でスリルドライブの末、崖を掌握して立つ「赤岩のトチ」を見た記憶が鮮明によみがえりました。
    他に、険しさからRYO-JIさんと行くのをあきらめた勝山のトチも……先人の探訪を読むとビビりますよね。
    今度京都へお邪魔できた際には、ぜひご一緒……できるような土地でしたら……笑

    本当、恐竜ですね。to-fuさんの文章を読む前から、恐竜だこれ!とひとりごちていました。
    でかすぎて、単独の写真ではスケールが伝わらないところがある。まさに巨樹中の巨樹ですね。
    トチは「栃」のほかに「橡」とも書くわけで、僕はこの木へんに「象」と書く字がまさにぴったりだと思います。
    生ける岩山、生ける大地が立ち上がった姿だと思うのです。
    難度高い探訪をこなしたこともあるし、すごく満足感がありそう。
    それを想像すると、なんともドキドキそわそわして、いてもたってもいられなくなってきますね!

  2. > 狛さん
    凄いでしょう?これ。久々にガツン!と来た一本ですね。こういうのがあるから止められない。
    四国へ発つ前に書き上げてしまいたかったんですよ。凄いの見ちゃうと感動が薄れるかもしれませんしね。
    狛さんのログで見た「赤岩のトチ」に私が石川で見た「太田の大トチノキ」、そしてこれ。
    どれもこれもホント、一人じゃ行きたくねえなあ…車じゃなくてバイクで行くところだろ。みたいなのばかりです。
    福井にもやばいトチノキがいくつかありますよね。行きたいけど死んだら洒落になりませんし、ねえ…

    まさに「橡」の木ですね、こいつは。本当に象とかマンモスとか恐竜とか、その手の規格外な巨大生物です、これは。
    ケヤキやクスとはまた全然印象が違う。これはハマってしまいますねえ。あまりハマると危険な気がしますが。

    ここは狛さんも車中泊されたあの道の駅から、下道で1時間かからないくらいですよ。
    もしまたいらっしゃる機会があればぜひとも案内させてください!

  3. そういえば、私が見に行きながらも諦めて引き返した唯一の巨樹がトチノキでした。
    あと狛さんとの福井でも時間がかかりそうで行かなかったのもトチノキ。
    トチノキはそういう環境にある樹種なんですねぇ。

    で、この幻のトチですが、その佇まいがもう生きた化石そのものですね。
    恐竜に例えて見てしまうお気持ちもよーく理解できます。
    最後の一枚なんかもう鳥肌が立ちましたよ。
    自分が実際に対峙した時に何を思うか想像するだけで心拍数が上がります(笑)。
    噂には知っている巨樹でしたが、to-fuさんの仔細なレポートは読みごたえがあって参考になります。
    これは是非とも見てみたい!
    その願いを叶える数よりも、見たいと願う数の方がどんどん増えて困ってしまいますが(汗)。

  4. > RYO-JIさん
    そういえば以前車で山道を引き返したことを書かれていましたよね。あれがトチノキでしたか!
    トチノキは何なんでしょうね…行きたいなと思う巨樹は大体ヤバいところに生えています。
    ああいう巨樹こそ3人揃ったときのノリで行ってしまえたらベストなんですけどねえ 笑
    (でも大体山奥に単独であるからトチ1本で下手したら半日くらい潰れるんですよね…)

    恐竜ですよね、これは。もう本当にテンション上がりましたよ。
    先人たちは軽々と到達して「うん、疲れた。感動した。」みたいにサラッと書いてますが、逆に凄いと思います 笑
    攻める際にはぜひご一報ください。何の役にもたちませんが、いつでもガイドしますよ!

  5. ほぇ~…とか、はぁ~…とかアホみたいなため息ばかり
    吹いてモニターが唾だらけになりました笑
    どうかな~っと思っていたこちらの巨木。この記事を見て行こう!ってなりました。
    それにしても凄い写真ですね~ 樹皮のUPとかとんでもない。
    実際見たら迫力と美しさが両方感じれそうですね。

  6. > 小山さん
    幹の部分だけクローズアップして写されたサイトが多いので、私も正直ほとんど朽ちたトチなのではないかと
    疑っていましたが、実物はWebで見るよりずっと迫力のある巨樹でした。行ってよかったです。
    山奥のトチは落葉も早いため見頃の時期があまり長くありませんが、この辺りはヤマビルもいないので夏場でも
    そこまで不快感なく眺められると思います。近くに来られた際はぜひ立ち寄ってみてください。

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