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京都市下京区 西本願寺のイチョウ


SONY α7II / Carl Zeiss Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA (APS-Cモードで使用)
FUJIFILM X-T20 / XF 10-24mm F4 R OIS / Film Simulation PROVIA

近場すぎて逆に足が遠のいていた西本願寺のイチョウを訪問しました。フルサイズ専用レンズのゾナー35mmを得た巨樹撮影初参戦のα7II君。ようやくこれで俺の活躍の時が!と思っていたかもしれませんが、「APS-Cモード」という撮影画像をクロップして無理やりAPS-Cの焦点距離にしてしまうという最早存在意義を失っているかのような使われ方をする羽目となりました。すまんね。(本来はAPS-C専用レンズで撮影するための荒業ですが、疑似的に望遠レンズ化するのに役立つね、これ。)

さて。遠目に見る限りではこれがイチョウだとは誰も思わないでしょう。もちろん自然現象ではなく種も仕掛けもあるわけですが。


剪定に剪定を繰り返し、本来空に向かって伸びるイチョウの木を人の手で無理やり横へ横へと伸びさせているわけです。うーん、賛否両論な巨樹だということは間違いなさそうです。ただこれはもう大掛かりな盆栽みたいなものだと思うんですよ。育成に数百年かけた大規模な盆栽。巨樹として見るのではなく、盆栽職人の作品としてその超絶テクニックを楽しんだ方がしっくり来るんじゃないでしょうか。


生命感あふれる主幹。根元にはひこばえが生い茂り、樹皮からもまるでキノコのようにイチョウの葉っぱが生えています。僅かながら乳柱が出来始めているのも確認できます。


紅葉の時期のイチョウの美しさは語るまでもありませんが、新緑の季節のイチョウも負けてないんじゃないかと思うのです。


苔むした枝。


当然ながら自身で枝の重みを支えることなんて出来ないので、ほぼ全方位の枝に台座が添えられています。健康なのに要介護だという歪な状態。


ヒューマンスケール。
たった1本のイチョウなのに遠目にはこんもりした丘みたいだ。


枝をよく見るとちょっとグロテスク。


このイチョウは「逆さイチョウ」と呼ばれていて、その昔名高い高僧が逆さに植えたことで枝が横に広がった…という逸話があるそうです。高僧がお箸を刺したら…とかその類の逸話ですね。木が大切にされている証拠でしょう。


お寺さんには建造物を火災から守るためにイチョウが植えてあることが多いですが、本願寺クラスの巨大な建造物ともなると守るのも一苦労でしょう。冗談だろ?俺には無理だよ。なんてぼやいているかもしれません。(しかしデカいな本願寺は。掃除が大変そうだなあ、なんて俗的なことを思う。)

正統派な巨樹とは言えませんが、十分に見る価値のある1本だと思います。京都駅からも徒歩圏内ですしね。

西本願寺のイチョウ
京都市指定天然記念物
樹齢 約400年
樹高 約7m
幹回り 訳6.5m

京都市左京区 貴船神社のカツラ 本宮・中宮・奥宮


本宮のカツラ FUJIFILM X100F / Film Simulation PROVIA
中宮・奥宮のカツラ FUJIFILM X-T20 / XF 10-24mm F4 R OIS / Film Simulation PROVIA / Grain Effect weak

以前も訪れたことのある貴船神社のカツラに会うため再訪。
前回(本宮のカツラ中宮のカツラ)はうっかりスルーしてしまった奥宮のカツラにもぜひ会っておきたいところです。


2月末は竹ぼうきのような姿でしたが、本当に別の木なんじゃないかと疑いたくなる変貌ぶり。


御神木というと何だか厳かに聞こえますが、この時期のカツラだけあってフレッシュで生き生きとした印象しか受けませんでした。


御神木たる神々しさこそ感じられないものの、この溌剌と枝を伸ばす様を見ていると元気を分けてもらっているような気分になりました。ああ、健康的で良い巨樹だ。


続いて中宮(結社)の御神木。
本宮のカツラより明らかに大きく、単にサイズだけで見ればこちらのカツラの方が見応えがあるでしょう。


緑の爆発だ。ひこばえがわっさわっさと茂っていて下からだと幹が見えないくらいです。


少しのぞき込んだだけでもかなりの数の支幹が伐採されていました。もし伐採せずに放置していたら藤坂の大カツラのようにヤマタノオロチの如く縦横無尽に伸びた幹が見られたのかな…ちょっと勿体ないですね。


カツラの葉っぱはハートの形になるということで有名。
縁結びの神社である貴船神社らしくて縁起が良さそうです。


お賽銭…なのか?カツラの木に5円玉を引っかけたところで絶対に良縁に巡り会えたりしないので止めていただきたいところです。


非常に立派なカツラなんですが、この中宮自体がこじんまりとした空間なのであまりゆっくり見られないんですよね。木の前に張り付いて写真撮ってると他の参拝客の方の迷惑ですし。ゆっくり眺めたい、向き合いたいなら本宮のカツラの方がオススメです。「単にサイズだけで見ればこちらの方が見応えが…」と書いたのには、そんな理由があります。

さて、前回発見できなかった奥宮のカツラを目指すことに。本宮の案内板によると本宮のカツラより立派だということなので期待が高まります。


うーん。これ…だよな。奥宮の境内ではなく奥宮の裏手にありました。


確かに主幹の太さ、樹高だけ見るとカツラとしてはなかなかのものかもしれません。しかしこれは…うーん。ひこばえも一切無いし。参拝客も一切訪れない裏手だからか、何とも鬱蒼とした雰囲気が広がっています。正直に言うとちょっと気味が悪い。


裏手に回るとナニカが木に打ち付けてあります。
枝を折るな!とかその手の注意書きかなと近付いてみると…


!?
あかんて…これヤバい奴やん…

敢えてピントを外しましたが3名の男性の名前が書かれたボール紙。実はこの貴船神社、かつては丑の刻参りのメッカだったのです。(実際今でもクギを打ち込んだ痕と思われるものが御神木から多数確認出来ます。)そして今でも丑の刻参りに来る人がいるとか、いないとか…なんて都市伝説がまことしやかに語られていますが、そっちのアレだとしか思えません。


何だろう。貴船の名木の中では一番人目につかないから、その手の愛好家たちにはやはり堪らないんでしょうか。この奥宮のカツラ、市の天然記念物指定されているんですが個人的にはあまり良い印象を受けませんでした。本当にこの周辺、何か変なんですよ。ちょっと淀んでるというか。後味悪いなあ。

奥宮のカツラ(本宮・中宮は以前記載したので割愛)
京都市天然記念物指定
樹齢 約400年
樹高 約37m
幹周り 約5.18m

京都市左京区鞍馬 由岐神社の大杉


FUJIFILM X-T20 / XC 16-50mm F3.5-5.6 OIS / Film Simulation PROVIA / Grain Effect weak
FUJIFILM X100F / Film Simulation PROVIA / Grain Effect Weak

鞍馬寺への参道の序盤に現れる由岐神社。
ロープウェイに乗るとスルーされてしまうポイントなので徒歩で参拝します。


明らかに他のものより樹高のあるスギが三本。その全てが御神木ですが中でも最大のものが記事最初の画像のスギ。
こちらが「由岐神社の大杉」として紹介される巨樹です。


正直なところスギの巨樹としては大した幹周ではありません。
ですが、ズドン!とそびえ立つその姿は遠目に見てもいかにも荘厳で、あぁこれまた凄いのがいたもんだなあと驚かされます。スギの巨樹はこれが良いんだよな。遠くから見て「ウソだろ?」と思いながら近付き、いざ近付いてみると言葉も出ない。そんな小細工無し、男の中の男…いや、スギの中のスギ。どこに出展しても恥ずかしくないスギでございました。


スギの巨樹の樹皮が好き。
ささくれ立った樹皮がまた良い味出しているのです。


どうしても同じような写真ばかりになってしまうのですが…
この空まで突き抜けるようなストレートさ。もうたまらんわー。

枝が随分細かく伐採されていますが、真下に本堂への参道がありますからね。このサイズの巨樹になると枝といっても丸太みたいなものですから、そんなものが頭に落ちて来ようものなら重傷不可避なわけで。伐採も止むなしだと思います。


京都市天然記念物。
古くから「大杉さん」と呼ばれているんだそうな。「様」ではなく「さん」というところに親しみが込められているようで心地良く感じました。「天神さん」とか「コープさん」といった風に京都人は結構モノや場所を「さん」付けで呼ぶことが多いのです。うん、神様…というよりもっと素朴な、一家の家長であるとか地域の守り神みたいな身近なイメージ。


いくら眺めていても飽きないから不思議。


周辺の木々と比べると高さが郡を抜いているので落雷が心配ですが、このまま更なる高みを目指してグングン伸びていって欲しいものです。それにしても平日早朝の鞍馬は人も少なくて本当に気持ちいい。オススメです。

由岐神社の大杉
京都市天然記念物
樹齢 約800年
樹高 約53m
幹周り 約6.5m

京都市左京区 大悲山峰定寺の三本杉


FUJIFILM X-T20 / XC 16-50mm F3.5-5.6 OIS / Film Simulation PROVIA / Grain Effect weak

峰定寺(ぶじょうじ)の三本杉を見るため遠路はるばる山奥まで。
この三本杉はつい最近まで樹高35m程度だと思われていたのですが「あれ?何かこれデカくね?」ということで昨年11月、林野庁から依頼を受けた専門家がドローンとレーザー測定器を用いた最新技術で測定し直したところ、なんと樹高60mオーバー。見事、樹高日本一のスギとして名を馳せることになりました。

まあ同じように全国の巨樹を再測定したら簡単に日本一の記録を塗り替えられると思いますので、暫定日本一といったところでしょうか。


さて。この峰定寺まで到達するのが本当にシンドイわけです。京都人が連想する北の最果てというと貴船や鞍馬辺りではないかと思いますが、その鞍馬から山一つ越えつつ30分強車を走らせてようやく到着します。

なぜこんな山奥に…という話ですね。この峰定寺はそこらの生臭坊主だらけの寺とは全く性質の異なる、ギリシャ正教の聖山アトスのように超ストイックな修行僧のためのお寺でして、拝観するにも当然カメラは持ち込み不可、団体客や子供の入山禁止、雨天時や冬季は入山禁止など今も厳しい制限が敷かれているのです。険しく、簡単には逃げ出せない環境だからこそここに建てる必要があったのでしょう。


三本杉は峰定寺の手前にある橋を渡り、しばらく林道を歩いた先に立っているという情報を仕入れてやってきました。が、この黄色と黒の看板はいつ見ても背筋が凍りますねえ…人っ子一人見当たらず、流石に鈴だけでは不安なのでモシモシから大音量の音楽を流しながら歩きます。あぁ…このジャンル、クマが好きだったら寄ってくるんじゃねーか?クマったなあ。なんて考えながら20〜30分。


天高くそびえ立つ三本杉に到達。
これだよこれ。スギの巨樹に求めてるのはこの一発なんだ。
いや、でもこれが35mってのは流石に無理があるぞ 笑


ところが早々に興醒めしてしまったのがこの囲い。
あれ?その筋のサイトで写真を見たときはこんなの無かった気がする。


この真新しいロープから察するに、日本一のスギ認定されてから設置されたものでしょう。分かるよ?いや、分かるんだ。でもねえ…やっぱり幹に触れたかったな。

もちろん根の保護ってのも分かるんです。でも以前から保護のために囲われてただとか木が弱ってきたから設置したというなら納得できますが、今まで放置しておいて日本一認定されたからと急遽待遇を変えたようで、ちょっと萎えるんですね。肩書きにヘコヘコする冴えないオッサンを見たような、そんなイヤな感じ。

巨樹を見て、そのものから何かを感じ取ることを期待してやってくるわけで、正直日本一だとか世界一だとかそんな肩書きは見る者にとってどうでもいいわけです。このスギが55mや50mだったとしても下から眺める僕には何も変わらないですよ。


三本杉自体は想像していた以上に立派なものでした。
正直、3本の合体樹だしどうせ1本1本は大したことないんでしょ?と思いながらやってきました。とりあえず市内の名だたる巨樹は制覇しておきたい。それくらいの気持ちです。しかしそれぞれの幹に予想を上回る凄みがあり、スギならではのズドンッ!と天に突き抜ける迫力は心を打つものがありました。


これぞ正当派!という出で立ち。
見るからに固そうな樹皮も良し。


でも…触りたかったなあ…という感想だけが残ってしまうのです 笑
いや。いつまでも女々しいこと考えてても仕方ないんですけどね。


樹齢1,000年オーバーだそうですが、非常に若々しく見えます。
老木の放つ威圧感ではなく、不思議とフレッシュな勢いを感じるんですよね。
落雷などの被害に遭わなければ軽く2,000年なんて突破しちゃうんじゃないでしょうか。

事前に囲いの存在を知った上で来ていたら評価が180度違ったような気がします。
そういう意味では訪れるタイミングが悪かった一本。

大悲山峰定寺の三本杉
「京都の自然二百選」「森の巨人たち百選」
樹齢 推定1,200年
樹高 各62.3m、60.7m、57.2m
幹周り 13.6m(三本合算値)

再訪・京都市右京区京北 片波川源流域の伏条台杉群生地 2


FUJIFILM X-Pro2 / XC 16-50mm F3.5-5.6 OIS / Film Simulation PROVIA / Grain Effect weak

再訪・京都市右京区京北 片波川源流域の伏条台杉群生地 1】の続き。
ここから一時下ります。遊歩道として整備されていますがかなりの急勾配なので足下の悪い雨天時はご注意下さい。転倒すると無事では済まないかもしれません。


この二の峰からの下りゾーン一帯はかなり見応えがあります。
もう大小の感覚が完全に狂ってしまうくらいたくさんの巨樹が群生していました。


こんなのもう杉じゃないよなあ…何か別の巨大生命体のように思えてくる。


個人的に気に入ったのがこのお方。


フォルムが良いんですよ。


案内図に記載されていた”三本杉”だと思われます。


カエデの谷を抜けて平安杉方面へ。
日差しと吹き抜ける風の気持ちいいポイントですが、うっかり滑落すると酷いことになりそうなので注意。


このお方も懐かしい。
雨の日のあのおどろおどろしさは薄れていますが、やはり人の顔にしか見えない。この森に迷い込み、不幸にも木に取り込まれてしまった人間の怨念が…なんて妄想が膨らみます。


そしてこの群生地最大の平安杉。
寿命2,500〜3,000年と言われる縄文杉に対してこの群生地に生える芦生杉(アシウスギ)の寿命は1,000年ほどだそうです。推定樹齢800年の平安杉はかなりの老木と言えるでしょう。


物凄い迫力。でもそこに雨の日に見たような威圧感は無く、優しく語りかけてくるような暖かさを感じました。


奈良県の国宝・七支刀のように枝分かれした幹と枝。この35mm換算24mmのレンズではとてもじゃないが収めきれない。ホント肉眼って優秀なレンズだよなあ…


朽ちて倒壊した幹。どれだけ歴史ある古木、名木であろうと死すれば他の名も無き木々と平等に土に還る。人間だって同じ。偉人も犯罪者も、未来ある子供だって死んでしまえばそこで平等に終了なわけです。無常ですねえ。しかし儚い人生だからこそ日々精進し、何より毎日を楽しまないといけないなあなんて思うのです。


枝から地面に根を張り、新たな幹となって増殖する伏条更新。
この群生地の杉たちはひょっとすると元々は1本の杉から派生していて、根は繋がっているのでは?なんて考えもあるそうですよ。ロマンがありますね。そしてこの保護林の北、原生林の立入禁止区域にはこの平安杉以上に巨大な芦生杉が確実に存在するだろうとも言われています。

この群生地も今はまだ立入禁止まではいかない”ガイド同行推奨区域”ですが、いつかは人間の立ち入れない禁足地になってしまうのかもしれません。この時代に生まれ、この異形の巨樹たちに会えて本当に良かった…そんな充足感を得つつ、ゆっくりと山を下るのでございました。

片波川源流域の伏条台杉群生地 “平安杉”
京都府天然記念物指定地区
樹齢 約800年
樹高 30m前後と思われる
幹周り 15.2m

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